小説本文


第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話 第9話 第10話 第11話 第12話 第13話 第14話 第15話 第16話 第17話 第18話 第19話 第20話 第21話 第22話 第23話 第24話 第25話 第26話 第27話 第28話 第29話 第30話 第31話 第32話 第33話 第34話 第35話 第36話 第37話 第38話 第39話 第40話 第41話 第42話 第43話 第44話 第45話 第46話 第47話 第48話 第49話 第50話 第51話 第52話 第53話 第54話 第55話 第56話 第57話 第58話 第59話 第60話 第61話 第62話 第63話 第64話 第65話 第66話 第67話 第68話 第69話 第70話 第71話 第72話 第73話 第74話 第75話 第76話 第77話 第78話 第79話 
第61話


 勝野夫婦のマンションの一室。
 俺は百合子さんの股間のTATTOOに気が付き、あッと声を上げた。そんな俺の様子など気にする素振りをもなく、二人は口づけを続けている。
 それから二人はベッドに上がると、あの修善寺の野天風呂での行為を再現し始めたのだった。


 野天風呂の洗い場で見た絡み合う二つの肉体。その姿を先に目にしたのは沙紀だった。
 最初は男が上になり、正常位で交尾した。互いの股座は沙紀に向き、結合の部分が露わになっていたとか。
 沙紀は男の物が異様に巨(おおき)かったと云った。その通りに、今目の前でも真珠入りのソレが百合子さんを貫いている。
 沙紀は次はバックだったと云った。
 獣の形も、尻は沙紀の方に向いていたらしい。湯気の向こうで、巨棒がズボズボと女穴を犯していたのだ。
 それと同じようにか、俺の視線は目の前の二つの身体が犬の格好に変わる様子を追っている。
 時おり、チラリと俺を覗き見る鋭い視線。勝野さんの目は、どうだ!と自慢げに見せびらかすかのようだ。
 腰を振る勝野さんの背中から尻に掛けて、大量の汗が流れていく。先程まで感じていたこの部屋の空調など、既に効いてはいない。それほどベッドの上から、熱が放射されているのだ。
 部屋中に響き渡る腰と腰が打つかる打突音。百合子さんは声を我慢しているのか。
 それでもやがて、美しい肢体をブルルと震わせ、百合子さんが遂に絶叫を上げた。同時に突っ伏すように崩れ落ちた。
 そのグッタリした女体を強引に、勝野さんは抱きかかえると自ら仰向けになった。次は騎乗位か。
 朦朧としている筈の百合子さんだが、手は無意識にだろうか股から硬度を保つ男根を掴んで自らの膣(アナ)に充てがった。
 巨棒をヌルリと飲み込む神秘の穴。そして直ぐに、出し入れが始った。
 今度の百合子さんには我慢がなかった。いきなり遠慮のない咆哮を上げた。思わず俺の身体が前のめりになる。そんな俺を煽るように激しさが増して行く。


 勝野さんが百合子さんの横尻をペチペチと叩いた。
 心得たように、百合子さんが膣穴で繋がったまま身体を廻す。顔を俺に向けての騎乗位だ。
 乳房が激しく揺れている。
 歪んだ唇から、甘い声が吹きこぼれていく。
 百合子さんの瞳は虚ろだが、薄っすら俺を見ている、気がする。その百合子さんの横尻を、もう一度大きな掌が叩いた。
 それは何かの合図だったのか。


 「あぁ、見てぇぇ…アタシ達ねぇ見られて興奮する変態夫婦なのぉ」
 百合子さんの宣言だった。いや、これは夫婦揃っての宣言だ。
 「それでねぇ、これまで大勢のお客様の前でこんな姿を披露して来たのよっ」
 一度喋り出した百合子さんは止まらなかった。
 「砺波さんがあの野天風呂で見たアタシ達の姿なんて、可愛いものなのよぉ」
 その時、強烈な一撃が百合子さんを突き上げた。
 「アウゥッ!そうッ、そうなのアタシねっ、色んなお客に見られるものだから、自分でアソコを鍛えたのよッ!」
 口元から涎の液を垂らしながら、百合子さんが続ける。
 「沙紀さんにも教えたのよ。アソコの締まりを良くするトレーニングをっ」
 あッ!突然に記憶が甦ってきた。風鈴が結ばれた紐の先を、下の口に咥えてスクワットする沙紀の姿だ。


 「アーーッいいッ、あなたいいわっ!」
 語る事で自ら絶頂を近づけてしまったのか、百合子さんが一気に逝ってしまったのだった。
 俺は崩れ落ちた肢体を見詰めた。女体は小刻みに震えを続け、荒い声が止めどなく零れ落ちいている。
 勝野さんの方は…。
 俺の視線を感じたわけではないだろうが、大柄な身体を起こして、勝野さんがニヤリと笑い掛けてきた。そしてソレの根元を握ると今度はニヒルに笑った。
 大きな手に握られたソレは、硬度を失ってはいなかった。勝野さんの目は、この程度で逝ってるようじゃ男が廃るよ、とでも云ってるような気がした。


 勝野さんがのっそりと立ち上がる。ベッドから降りると裸のまま俺の横を素通りして部屋を出て行ってしまう。
 暫くすると缶を二つ持って戻って来て「車なんでしょ」と、一つを手渡した。
 俺が受け取ったのは冷えた烏龍茶だった。
 もう一つあった一人掛けのソファーを引いて、勝野さんが素っ裸のまま隣に座る。ベッドの上には、荒い息が止む事のない百合子さんだ。その姿からは目が離せない。
 「砺波さん、どうでしたか私等の絡みは」
 視線を返せば、勝野さんが缶ビールを口に当てていた。
 どうと聞かれても、こっちはただただ圧倒されていただけだった。そんな俺だが、正直な気持ちを吐露しておく事にする。
 「凄いなんてもんじゃありませんでした。最初から最後まで、ずっと引き釣り込まれていましたよ」
 「そうですか。でも、砺波さんは最後と云ったけど、私のコレはまだ逝ってないんだよね」
 その瞬間、俺の目は勝野さんの下腹部に向いていた。そこにあるのは、未だ天を向く肉の巨棒だ。
 こちらの視線を浴びても、勝野さんは気にする事なく、真珠が埋め込まれている肉棒を握った。そして云う。
 「この真珠、修善寺の温泉でも気づいてたのかな。まあ、若気の至りなんだよね」と、目の前で唇がニタリと歪む。
 「あの…」硬度を保ったままのソレを見ながら、俺は改まって聞く。「本当に射精してないんですか」
 「勿論だよ、コレを見たら分かるでしょ」と、勝野さんがもう一度ソレを握って見せる。
 「私等も場数を踏んでるうちに、色々と身に着けたものがあってね。その一つが射精のコントロールですよ」


 射精のコントロール、その言葉を聞いたとたんに、又も沙紀の話を思い出した。
 上海で客達にセックスを披露した際のキムさんの事だ。沙紀も『射精をコントロールしてたみたいなの』と、云っていたのだ。それに『客達を焦らしに焦らして』と、確かそんな事も云っていた。


 「どうしたの砺波さん、今日はよく意識が飛ぶね」
 「いや、あの…沙紀とキムさんの二人も…」と云いかけたが、躊躇した。
 それでも何かを察したか、勝野さんは暫く俺を見詰めた後、又も口元を歪めた。 「なるほどね。沙紀さんはもう、キムさんに馴染んでしまったのかな」
 「そ、そんなぁ…それは」
 「そうだよね。それは困るよね。でも、女ってのは頭で分かってても身体が勝手に、なあ百合子」
 その名前にベッドを向き直れば、百合子さんが上体を半分起こしてこちらを見ていた。髪型は少し乱れているが、表情は落ち着きを取り戻しているようだ。
 俺を見る百合子さんの瞳は、濡れ羽色で、黒っぽい雰囲気を纏っていて神秘的な感じがする。


 「あのねぇ砺波さん」百合子さんが落ち着いた声で話し掛けて来る。「夫婦が揃って恥を曝すとね、それはそれは絆が強く深くなるのよね」
 云って百合子さんが、視線を勝野さんにやって微笑む。
 「私達もね、初めてお客様の前に裸を曝した時は、とても恥ずかしかったわ。勿論、抵抗もあったし。でも仕事の為、お金や生活の為と割り切ってやってみたら直ぐに馴染んで、病みつきになってしまったの」
 俺の視線の端で、勝野さんが「そうだったな」と苦笑いを浮かべたのが分かった。そして続ける。
 「まあ、私も百合子も筋が良かったと言えるだけかもしれないけどね」と、強面のはずの勝野さんの顔が、何かを思い出してか苦笑いを浮かべる。


 「沙紀さんとキムさんは夫婦じゃないけど、共に恥を曝したんなら、二人にも絆が生まれてるかもしれないわね」
 百合子さんが云うと、その姿のままベッドを降りて勝野さんに垂れ掛かった。そしてソレに指を這わした。
 白い指がしなやかな動きで、勝野さんのソレを擦り始めている。
 俺はその様子を見ながら、百合子さんの身体をシゲシゲと目で追った。股間の薔薇のTATTOOは間違いなく、踝の辺りにも痣のようなマークがある。温泉で見た記憶が正しければ、それも薔薇のTATTOOだ。


 やがて百合子さんが、真珠入りのソレをヌバリと口に含んだ。そして紅い唇がジュルジュルと上下に動き始めた。その規則正しい動きに引き寄せられていると、目の前の二人が沙紀とキムさんにダブって見えてきた。
 あの二人も上海で痴態を曝した後は、部屋に戻り、キムさんは沙紀の疵痕を癒し、沙紀は百合子さんのように牡の象徴に感謝の奉仕をしたのだろうか。
 沙紀とキムさんは間違いなく夫婦ではない。当たり前だ。しかし勝野さん達の指摘通り、互いの間に信頼関係が生まれているとしたら。
 そうなるとだ。二人は明日からの接待旅行でも、抵抗なく愛しあう姿を客達に見せるのではないか。
 もし、その役を俺が変わって出るとしたら…。俺にキムさんの代わりが務まるだろうか。
 そんな覚悟を問いただす俺の耳に、一層激しい濁音が聞こえて来た。見れば百合子さんの唇の動きが激しさを増しているのだ。
 身を任す勝野さんの顔も呆けの表情だ。強面の顔が、今は快感と射精の寸前の所で何とも情けない顔に観える。こんな普段は見せない感情を他人に晒せるのも夫婦の力なのか。
 頭の芯が痺れてきた 。俺の中にも、舞い上がるような快感がある。
 百合子さんの…いや、沙紀の唇の動きが、とてつもなく卑猥だ。
 勝野さん…いや、キムさんは逝く寸前だ。
 あぁ、沙紀!
 その瞬間、ウウウっと上がった短い呻き声は、勝野さんのものだった。