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第36話
パーティー会場の片隅、壁にもたれて俺は、冬子から沙紀の方に目を移した。
ここから沙紀がいるテーブルまでは結構距離がある。が、俺はお団子頭に紫色のチャイナドレスをシッカリと追い掛けた。
沙紀はここから見ても、そつなく仕事をこなしているように思えた。中国語が喋れない沙紀にも、周りの中国人の客達は楽しそうに接しているようなのだ。それだけ沙紀が愛想良くしているのか。それとも沙紀の容姿に、周りの客達はセックスアピールを感じているのか。
俺は沙紀の仕事っぷりとは別に、心配の種が増えた気がしてきた。先ほども見たように、酔客にドレスのスリットから手を突っ込まれるのではないかと。
それからも暫く、沙紀を目で追っていたが、冬子がこちらにやって来るのが見えた。
「あのぉ、コレを」
冬子はグラスを二つ持っていた。
「ありがとう。アルコールは入ってないよね」
「お車な、んですよね。安心、して下さい。お酒じゃないと、言ってましたから」
さっきも感じたが、冬子の日本語は大したものだと思ってしまう。この若さだが、日本に来て結構な時間が経つのではないか。
俺はグラスを受け取り「スペシャルドリンクねぇ」と呟いた。
「アタシも、頂いていいですか」と訊く冬子に、俺は軽くどうぞと返した。
そして「せっかくだからね」と冬子と乾杯してから、グラスを口に付けた。
一口飲んだだけで旨味を感じて、直ぐにゴクゴクと喉を鳴らした。
飲みきったところで、冬子が悪戯っ子のような笑みを向けてきた。
「へへ、そのドリンク、バイアグラ入りなんです、よ」
んぐッ、俺は一瞬に噎(む)せ返ってしまった。
「あ、すいません。今のは冗談、です」云って冬子が笑っている。
「あのねぇ」俺は口元を拭って苦笑いを返した。勿論、怒る気など毛頭ない。
しかし…。
暫くすると、何だか胸の辺りがドキドキして来た。
これまでバイアグラなど飲んだ事はなかったが、この症状がソレの予兆なのか、下腹部までジンジンしてきた。そして次第に、目がチカチカして足元がふらついて来た。
「砺波さん…どうしましたか」
冬子の顔が覗き込んでいた。その顔が揺れながらボヤケていく。
まるで酔っ払いだ。そんな意識が働いた時には、両脇が誰かに抱えられていた。
金田さん…?
冬子…?
すいません…声になったかどうかは分からなかったが、ただ引きづられて行くツマ先の感触だけを感じた…。
いつの間にか、朦朧とする意識は部屋のドアを潜った気がした。ここはシングルルーム?
背中がベッドの膨らみを感じた。
天井が廻っている。
誰かの声がする。中国語と日本語が入り混じってる。
「水があるだろ」
「×××××」
「仰いであげなさい」
朦朧とする意識は、胸元で指の動きを感じた。
ボタンが外されていく?
細い指?
香水の匂いだ。
身体中がザワザワして来る。
下半身が疼く。
ズボンのベルトがカチャカチャ鳴っている。
ファスナーが下りていく。
誰だ?
薄く開いた視線の先に、ボヤけた女の顔。
「沙紀…」唇が無意識に動いた。
それと同時に、俺は目の前の身体を抱き寄せたのだった。