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第56話
「じゃあ、旦那様、続きを話しますね」
芝居がかった声で告げて、沙紀がソファーで尻の位置を整えた。沙紀はアソコを濡らしているかもしれない。
沙紀が床に落ちてたバスタオルを拾って、肩に掛ける。そして「では」と、畏まった。
「アタシが10回負けて、ココを剃られたところまで告(い)ったよね。その次はね、セクシーゲームだったの」
「セクシーゲーム?何だそれって」
「ヘヘっ、聖也くんもエッチなビデオで視た事あるんじゃないかな」
こちらを見る沙紀の目が妖しく光って観えた。早くも酔いが廻って来たのか。
「あのね、ボードを使うの」
「ボード?」
「そう、背丈位の高さのボードが何故かあってね。そこの胸の高さとお尻の位置に穴が空いてるのよ」
その説明だけで、俺は何とかイメージしようと試みた。
「そうね、もう少し詳しくいうとボードが2枚あって、1枚は胸の所が空いたやつで、もう1枚は腰の位置に穴が空いたやつなの、お尻がスッポリ収まる具合に」
沙紀のその説明で、一気にイメージが形付いてしまった。
「ふふっ分かるでしょ。その空いた穴からオッパイとかお毛々、それにお尻を嵌め込んだところを見られちゃうのよ」
「うん…分かる、そうだよな」
「そのボードって横にも広くて3人並んで立てるのね。そう、3人並んで胸をその穴にこういう風にね…」沙紀が胸を張って突き出した。
俺の頭にはシッカリその場面が形造られていた。ボードから胸だけが三つ突き出た卑猥な絵だ。しかし。
「でも沙紀、それじゃあ、並んで胸を出しても女は沙紀一人だから、直ぐに分かっちゃうよな」
「ああゴメン。その時は他のコンパニオンの女の子達も来てたのよ」
「そうか、パーティーもお開きになってたのか」
「そう言う事。それでね、女の子3人がオッパイを見せて、それで誰かを当てるゲームなの」
いつの間にか沙紀の口調が滑らかになってる気がした。それはアルコールのせいか、それとも沙紀の箍(たが)が外れたからか。
「それでね、お客様達が当てるわけだけど、当てられるとまた罰ゲームがあるから、皆んなキャーキャー言いながら楽しんでたわ」
「楽しむって…それで沙紀は」
「アタシは、オッパイの時は外れたり当てられたりだったわ」
「ちょっと待って、女の子は全部で何人位いたの?」
「えっと、途中から来た子もいたから6、7人位かな」
その数を聞いただけで、その部屋の温度が上がったのが窺える。男連中にしたって、ツイスターゲームで裸のままの奴もいただろうし、酒が入ってる奴だっていた筈なのだ。
「それで、オッパイの次が…」
「うん、次はお尻当て」
頭の中には、ボードから3つの生尻が突き出た絵が浮かんでくる。
「沙紀はそんな格好して、その時はどんな気持ちだったんだよ」
「結構お酒を飲んでたからよく覚えてないんだけど、たぶん大胆にやってたかも知れない」
「それは…」破れかぶれかよ、と云おうとしたが口が上手く回らなかった。
「でもね、穴から出してる時ってアタシ達の目の前は板とか誰も見えないでしょ。でも見られてる気配は感じてて、あぁ観察されて品評されてるんだって変な気持ちになってたのよ」
沙紀の心情は何となく分かる気がした。それに、俺自身も羞恥の気分に襲われた気になっている。
「お尻の時はね、お客様も大胆になっててね、顔を近づけてるのがよく分かったの。鼻息なんかが掛かったから」
「あぁ…」又も口から呻きが漏れてしまった。頭の中に、沙紀の尻を視姦する男の歪んだ顔が浮かぶ。
「お客様の数もいつしか増えてててね、全員の人達がアタシ達の身体を見ていくのね」
沙紀は『身体』と云ったが、それは秘密の局部だ。そして『見ていく』と云ったが、それこそ品評なのだ。生贄を探す猛禽類のような目が沙紀の秘所を抉るのだ。
「それで最後はアソコ、股間なの」
「でも、沙紀は」
「うん、アタシのアソコだけパイパンでしょ、だから」
「そ、そういう事だよな」
「そう、穴からソコを見せると直ぐに分かっちゃうわけ。おかけでアタシの負けがね」
「そっか」
「うん、負けが続いて…」
「それで、その疵か…」
その時、沙紀の顔が沈み、翳りに覆われたのが分かった。やはり沙紀にも、文字通りの痛い記憶なのだ。
「あのさ、やっぱり痛かったよな」
「…うん、でも痛みより惨めだったの」
「あ!」
「皆んなが…ほら他の女の子もいたし。その子達もお客様達と一緒になって、アタシがネクタイで縛られてムチで打たれる様子を見て笑うのね」
ウウウッと、呻き声と一緒に怒りが湧いて来た。
「キムさんはどうしてたんだよ。その時もスマホで撮ってたのかよ」
「キムさんはね、最初はお客様達に気を使って大人しくしてたんだけど、周さん…さっき云ったアタシがお酒を零しちゃった人ね。その周さんのムチ打ちが余りにも酷くなって来たから止めに入ってくれたわ」
「そうか、そうだよな。それで止まったんだな」
「うん、色々と中国語で云ってくれたみたい。アタシも途中から意識が朦朧としてたけど」
「そんなになるまでかよ」
「そうなの。でも、ムチ打ちが止んだと思ったら、キムさんがアタシにね『痛いのはもう終わりだけど、代わりに別の事をやらないといけない』って」
「別の事?」そう呟いた時、頭の中にその事に思い至ってしまった。
「それって!」
うん、っと沙紀が申し訳なさそうに頭を垂れた。
「じゃあ…」
「そうなのよ。キムさんがね『皆様の前でセックスしてるところを見せないといけない』って」
項垂れながら、沙紀がチラチラと俺を覗き込んできた。
沙紀の心中は如何なるものか。ここまで語った話は既に済んでしまっているのだから、ここから先は無理に聞かなくてもいいかもしれない。
しかし俺の中には、燻り続ける熱い何かがあるのだ。
「沙紀…あのさ、差し支えなければだけど…」
俺の声に顔を上げて、沙紀が見詰めて来た。その瞳は潤んで来たように見えなくもない。
やがて沙紀がニコリと無理に笑った気がして。「わかったわ。お客様達の前で、キムさんとどんな風にセックスしたか話すね。それと、その時どんな気持ちだったかも、聖也くんは聞きたいのよね」
沙紀のその指摘、まさに俺は、気持ちを言い当てられた想いだった。