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第8話


 部屋の天井を見上げながら、野天風呂での出来事と沙紀の話しを回想をしていた俺は、チラリと沙紀の横顔を覗いた。沙紀もまだ、山の景色を眺めながら回想に耽ってる感じだ。
 沙紀の身体を頭の先から下へと舐めるように見廻す。浴衣の腰回りが張ってる気がする。そういえばあの奥さんの尻も、丸くプリッと突き上がってた印象だ。沙紀の尻と似てる気もするが、奥さんの方が丸味がある。熟女の色気か、ひょっとして経産婦か。
 そんな妄想が渦巻き始めた時だ。


 「アタシ、ちょっと散歩して来ようかな」
 「んっ」
 「聖也くんは、どうする」
 「ああ、俺は…なんだか湯当たりした感じだから、もう少し休んでるわ」
 「そう…じゃあ、一人で行って来るね」
 「うん、気をつけて」


 沙紀が部屋を出て行って直ぐに、緊張が切れたのか睡魔がやって来た。運転の疲れと湯当たりが原因だと思う。
 いつの間にやら、俺は夢を見ていたーー。
 禍々しい男の持物。女の丸味を帯びた尻。それらが色んな格好で交わっていた。
 男の物は歪な形だったが、女のアソコは、その歪な物を難なく飲み込むのだ。その女のアソコはパイパンで、その部分には薔薇の刺青が施されていた。それを見詰める俺の横には、いつの間にか沙紀が座って俺の手を握っていた。しかし沙紀は、俺の手を離すとふらっと立ち上がり、彼等が交わる直ぐ側へと寄って行ったのだ。
 彼等の傍らで屈んで、結合の部分に目をやる沙紀。やがて沙紀は、四つん這いになると、繋がるその部分に顔を近づけ…。
 と「聖也くん、聖也くん」どこかで俺を呼ぶ声がしていた。
 瞼がゆっくりと開いていく…。


 「やっと起きたね。凄い鼾だったから、心配しちゃったよ」
 「ああ、ごめん、寝てたわ」
 「うふふっ、可愛らしい寝顔だったよ」そう云うと沙紀が、俺のほっぺにチュッとした。
 「今何時頃だろう。お腹空いた?」俺は寝ぼけ眼で訊いた。
 「夕飯は6時からって云ってたわ。ロビーで女将さんに会ったの」
 「そうか…散歩に行ってたんだよな、どうだった?」
 「うん、良かったよ。それでね、あの人と会ったわ」
 「へ、だれ?」
 「ほら、野天の人」
 「えっ!!」
 その瞬間、眠気が一気に吹き飛んだ。
 それから又、俺達の話題はあの夫婦の話になってしまった。


 「庭の奥にね、小さいんだけど花壇があって、そこにベンチがあって腰掛けると、そこからの景色も素敵なのよ」
 「そこにあの夫婦もいたの?」
 「ううん、男の人だけ」
 「旦那の方だけ?」
 「うん、後ろから声を掛けられたの。野太い声だったわ。振り向いたらあの人がいて…。でもね、優しそうな感じの人だったの」
 「本当かよ」
 「うん、身体はゴツいし、髪型も短めでVシネマに出て来そうな感じ…」
 「ヤクザ系だな」
 「だけどね、笑うと目が少しタレ目になるのよ」
 「なんだそれは。そんな楽しそうな話になったのかよ」
 「ええ、最初はこんにちは、って声を掛けられて、アタシも驚いたんだけど『ここからの眺めは凄いでしょ』って、嬉しそうに話すのよ」
 「それで」
 「アタシがそうですね、って云ったら、その人もベンチに座って来て、と云っても端っこよ。アタシも端に座ってたから、ちゃんと距離はあったわよ」
 「分かった分かった、それで」
 「うん、それでね、暫く二人して景色を見てたんだけど、いきなり『さっきはすいませんね』って」
 「ああ、やっぱり」
 「『この宿は贔屓にしてて、慣れてるもんだから、ハメを外しちゃってね』って」
 「ハメを外すって、外しすぎだよな。奥さんの方だって困ったんじゃないかな」
 「そう、アタシも、奥さんは部屋ですかって聞いちゃったのね」
 「そうしたら?」
 「『うちのは、逆上(のぼ)せて部屋で横になってます』って」
 「ああ、そうなんだ。でも、思ったほど怖そうな人じゃないなら良かったよ」
 「そうそう、それでね『そっちの旦那さんはどうしたんですか』って聞かれたから、うちのもの逆上せて部屋で寝てますって云ったら、笑ってたわ。その顔も子供みたいだったの」
 「なんだそれりゃ」
 と、俺が苦笑いをした時、コンコン、部屋のドアがノックされたのだった。