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第22話
先日の月曜日、沙紀は仕事を休んで、あの百合子さんに会いに出掛けていたのだった。
その事を告げられた俺は、脇の下に冷たい汗が流れるのを感じていた。
俺は、沙紀に緊張を悟られないように「でも、百合子さんは忘れ物を渡すだけの為に沙紀を呼び出したんだろ。なのにどうして俺に内緒でって…」と口にしてみたが、頭の中はあの野天風呂での過ちが渦を巻いていた。百合子さんには魂胆があって、沙紀に何かを告げようと考えたのだろうか。
「あのね、忘れ物はアタシのショーツだったの」
「ショーツ?」
「そう。ほら、野天でアタシが気を失った時、裸のままだったでしょ。それを勝野さんと百合子さんが介抱してくれて、脱衣場まで運んでくれてたの」
「ああ、分かる」
「ブラもショーツも寝てるアタシには着せられないから、浴衣だけを羽織らせてくれたんだよね」
沙紀の説明に、その場面がイメージとして浮かんできた。確かに下着を着せるより、浴衣を羽織らせれば事が足りてしまう。と、考えてみたところで、別の事を思いついた。百合子さんは俺と分かれた後、脱衣場でご主人が沙紀を連れて来るのを待っていたのだ。いや、湯船の方に戻って、二人で沙紀を運んで来たのか。けど、どちらにせよ、あの時のショーツを部屋で渡すのを忘れて、持っていたという事か。それをこのタイミングで沙紀に連絡してきた、それでこの話はおしまい、で良いのか?いや、おそらくそんな事はないだろう。しかし、沙紀には余計な事は云えない。ますます脇の下が濡れてくる。
「でもね、ショーツの話だけじゃなかったの」
俺はその言葉に、ゴクっと息を飲んでしまった。
「あのね、百合子さんに責められたの」
「責められた!?そ、それはどうして…」
「うん、もうハッキリ云っちゃうね」と、沙紀の目が吊り上がった、ように観えた。
「百合子さんが云うには、あの野天風呂で聖也くんに迫られて関係を結んだって」
「えっ!そ、そんな事を…」
「嘘なの?百合子さんが嘘を云ったの?」
「いや、それは、だから…」
「向こうから聖也くんを誘惑してきたの?」
「そ、そう…」だよ、と続けようとしたが声が上手く出なかった。沙紀を見れば、疑わしそうな目を向けている。
「アタシね、逆上せて頭がボォっとしてたけど、目は少し開いてたの。裸を勝野さんに見られてるのも分かってたけど、身体が動かなかったの。でも、横目で向こう側を見たら、そこで聖也くんがね」と、沙紀の声が震えを帯びてきた。
「百合子さんに覆い被さっていくところだったの」
「あっ!」
「アタシ、夢かと思ってたんだけど、風が吹いてきて、勝野さんがタオルで扇いでくれてたのね。それで夢じゃないって分かって、そのまま目が離せなくなったの」
「そ、そんな状態だったのか…」
「そう、それでアタシ…聖也くんが最後まで行くところを見てたのよ」
「ご、ごめん!」俺は咄嗟に謝っていた。
その後には、沈黙がやって来た。結婚してから初めて感じる重い重い沈黙だ。
いつまで続くか分からない暗い時間だったが「でもね」沙紀が先に沈黙を破った。
「アタシもね、間違いを起こしてたの。勝野さんとね、セックスしたの」
「なにぃっ!」
「うん、聖也くんが百合子さんと分かれてから、アタシ起き上がろうとしたのね。勝野さんが直ぐに『大丈夫なの』って屈んで顔を覗き込んできたわ。その時、勝野さんのアレが直ぐそこに見えて」
「ああ…」アレだ、と頭の中で声がした。
「ソレを見た瞬間、なぜだか意識がすーっと吸い寄せられて、見るとビクンビクンて跳ね上がってて、それに呼応するようにアタシの心臓がドクンドクンて鳴り出したの」
「そんな事が…」
「でも本当なのよ」
「わ、分かったから…続けて」
「いつの間にかアタシ、ソレをじっと見てたわ。勝野さんが腰を突き出してきたら、導かれるようにソレに手を伸ばしたの。そうしたら『奥さん、触ってみますか、いいですよ』って」
「勝野さんがそんな事を…」
「うん『初めて見るでしょ、真珠を入れてるんですよ』って。それを聞いた瞬間、ゴクって喉が鳴っちゃったの。たぶん、一瞬にしてアレに魅入られたのね。アソコが濡れてくるのが分かって、挿れて欲しくなったの」
「ああ…」
「勝野さんはね、アタシの様子から察したのか、腕を取って引き上げたの、分かる?」
「い、いや…」
「アタシを股間の前で跪かせたの」
頭の中に、巨体の前で傅く沙紀の姿が浮かんできた。
「アタシ、恐々と握ってみたの。ゴツゴツした手触りが初めてで、硬さも太さも初めてだった。気が付いたら観察するみたいに弄ってたの」
「そ、それで…」
「ええ、勝野さんが『欲しいんだろ、んっ?』って諭すような声で云ったの。その声が頭の奥に染み渡って行く感じがして、アソコがジーンとしたの」
沙紀の表現には、何とも言えないリアルさを感じていた。なぜか俺のアソコが硬くなって来る。
「勝野さんが『奥さんはいつも、どんな格好でやってるのかな、好きな格好を云ってみなさい、ご主人は百合子と犬の格好でやってたみたいだね』って」
沙紀の言葉にガツンと頭を殴られた気になった。
「それで、沙紀は…云ったのか…」
俺の問い掛けに、沙紀の顔が申し訳なさそうにコクリと頷いて「前からとか、上からとかも好きなんですけど…」
「…けど?」
「けど、犬…犬の格好でして下さいって…云っちゃったの」
「うううっ、ほ、本当にか」
唸り声を上げた俺の前で、沙紀の顔が呆けた様になっていた。その顔は、魂が遠くを彷徨うような顔だった。