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第13話
庭から部屋に戻った俺達。
部屋には既に、二組の布団が敷かれていた。
「沙紀、大丈夫?」
沙紀の顔はまだ、いくぶん紅いようだ。
その沙紀は「大丈夫よ」と云うなり布団の上にダイブした。
「本当に大丈夫かよ」と、俺はもう一度声を掛けて、隣の布団に胡座をかいて座った。
「ねぇ聖也くぅん、さっきのあれ、やっぱりおかしいよね、飲んでる時さ」沙紀が仰向けに寝たまま訊いてきた。
「ん?」
「野天風呂でセックスしてる姿をアタシ達に見せてた人が、本人達の前で普通にお酒飲んで、仕事の話とかをしてるんだよ。それってどう考えてもおかしいよね」
「そうだな。でも1点違うところは、セックスを見せたんじゃなくて、俺達が偶然に覗いたんだよ」
「ん~そうかな…見せ付けてた気がするなぁ」
「まあ、沙紀の方が最初から見てたから正しいかもしれないけど…」
「そうよ、聖也くんが来た時もやってたんだから。普通は覗かれてるの分かったら止めるでしょ」
「確かに、云われればその通りだ。あの夫婦にはそういう性癖があるんだな」
「それとね、やっぱりゴツかった」
「又その話か」
「大丈夫、聖也くんのも大きいから」
「アホ!」
「ふふっ。でね、勝野さんのアレって禍々(まがまが)しいっていうのかな、歪な感じだったわ」
「ソレを百合子さんが難なく飲み込んだんだよな」
「そう、何だか夢に出て来そう…」
「ん、眠い?」俺は沙紀の顔を上から覗き込んだ。
その俺の顔を見上げながら「ねぇ聖也くぅん、アタシ眠っちゃったらさぁ…犯してぇ」沙紀が呟いた。
沙紀は時々、変わった事を口にする。以前『仕事から帰って、アタシが寝てたら後ろから犯してぇ。うつ伏せにして、ショーツ下ろしたら口を押さえて犯(や)って』などと云った事があったのだ。
そういえば逆もあった。俺が寝てる時に、俺のパンツを脱がせてシャブって来たのだ。そして、俺のソレが硬くなったところで自分で挿入したのだ。俺は激しい揺れに眼を覚ましたが、沙紀は絶頂を迎える寸前に『変態、変態、変態ーーッ!』と、叫びを上げていた。あれはおそらく、自分に向かって云ったのだ。
と、沙紀がもう、落ちる寸前だ。
沙紀はさっき『犯して』と云ったが、俺は一旦立ち上がると、こっちの掛け布団を沙紀の腹の上に掛けてやった。
俺の方も酒が入っていたが、昼寝をしたからか睡魔はそれほど感じていない。沙紀は旅の疲れと、アルコールが効いているのだ。夜中に起き出すかもしれないが、そのまま寝かせてやる事にした。
ソファーに腰を降ろして、俺は暫くボォっとしていたが、本でも読もうとキャリーケースに向かった。
意外な事に、俺も沙紀もスマホゲームは殆どやらず、もっぱら読書なのだ。これまでの温泉旅行でも、やる事といえば、観光、温泉、セックス、読書、セックス、温泉、そして又セックス、こんな感じだった。
因みに俺がよく読むのは、時代小説と呼ばれるものだが、沙紀はミステリーが好きで、たまに何と自己啓発ものなんかも読んだりしている。
『自己啓発もの』と沙紀のイメージは結び付かなかったが、外科医との不倫で自己嫌悪に陥っている時に、読むようになったらしい。それらの本を読んでる時の沙紀の横顔は、どこか心理学者を思わせる事があった。
本を読み始めてはみたが、直ぐに俺は欠伸をするとソファーの背もたれに体重を預けて伸びをした。
沙紀からは微かな寝息が続いている。
俺はもう一度目を瞑った。瞼の裏に、昼間の出来事を反芻してか百合子さんの裸体が浮かんできた。身長は沙紀と同じ160ぐらいだろう。年齢は勝野さんよりは少し下だろうし、40前後か。歳の割には、胸の膨らみも尻の張り具合も素晴らしかったと記憶している。
それと刺青だ。沙紀が見たと云った股間の刺青とは、ヘソの下辺りか、それともモロにその部分に施されていたのか。そして、ソレを入れる事になった経緯、それは何か…。そんな事を妄想してしまうと、フツフツと得体の知れない高鳴りが湧いて来る。
ひょっとして、百合子さんは高級料亭の女将、あるいは銀座辺りの高級クラブのママをしていて、勝野さんに見初められたとか。その勝野さんには変態チックな性癖があって、アソコに刺青を施した…そして、踝の刺青は何かの番号だったりして…と、夢想しているうちに眠りに落ちていったのだった。