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第15話


 男湯の暖簾を潜った俺。
 脱衣場の籠には、浴衣が一式収められていた。間違いなく勝野さんが着ていたものだろう。
 俺も一瞬、着ている浴衣を脱ぎかけたが、裾だけを捲って中へと入って行った。


 大浴場は奥の一面ガラスの向こうの庭が、見事にライトアップされていた。しかしここには、勝野さんの気配は窺えなかった。俺は、奥の露天風呂に続く扉に向かう事にした。


 扉を抜けると、一瞬風の通りを感じた。それを心地よく感じながら露天に近づいた。そこはライトに照らされ、水面が輝いて見えた。しかし、肝心の勝野さんの姿はここにもない。倒れている人影もない。
 「となると、野天の方だな」呟きを漏らして、奥へと進む事にした。


 昼間も感じた事だったが、露天風呂から野天風呂に向かう道は狭くて頼りないものなのだ。灯りはあるが、それもまた頼りない。
 秘境の奥深さを感じながらも足を進めて、やがて湯気の立つ場所に出た。
 足元に気をつけながら、もう少し進む。
 湯船の端、岩場の辺りに来た所で、一旦俺は屈んだ。視線を巡らせれば、あの辺りだったかと、昼間に沙紀と腰を着けてた所に検討をおいた。
 そこから前に3、4メートル向こうの辺りが、勝野夫妻が男女の交わりを披露していた所だ。
 そんな意識が働いた瞬間、目に映った光景に身体の体温が急激に上がった。そこに二人の裸体があったのだ。一つは巨体、間違いなく勝野さんだ。そして、仰向けに横たわっている白い肢体は沙紀だ。そう、死体のような肢体だ。


 俺の身体が、フラフラと立ち上がろうとした。
 と「聖也さん」小さな声が聞こえた。
 瞬間、俺は声を上げそうになってしまった。反対側から、浴衣の裾を捲って百合子さんがやって来るのだ。


 「ど、どうしたんですか」近づいて来た百合子さんに小声で訊いた。
 「やっぱり心配なんで、来ちゃいました」と云って、百合子さんが俺の横で屈む。
 「酔いはもう、大丈夫なんですか」
 「はい…」


 俺は隣に屈んだ百合子さんの顔を、シゲシゲと見詰めた。確かにアルコールが抜けた感じはする。
 そこで直ぐに、視線を前へ向け直して「あっち…」と呟き掛けた。
 「ええ、私も気づきました」
 「まずいですよ、声を…」と云いかけた途中で「少し見てましょうよ」と、百合子さんが岩場の影に俺を引っ張った。
 俺は驚いて百合子さんの目を見詰めた。その目が鈍い光を放ってる、ように観える。


 「うふふ」百合子さんが屈んだまま、唇を歪めている。俺は物の怪の気配を感じてか、背筋がゾクリと震えた。
 その震えを振り払うように頭を振って、岩場の影から半身を出して前を向いた。見れば勝野さんが、沙紀の頬をペチペチと叩いている。一体何をしているのだ。


 「沙紀さん、逆上(のぼ)せちゃったのね」
 その声に俺は隣を向いた。
 「ふふふ、想像してるでしょ、聖也さん」
 又も百合子さんが名前で呼んで、俺に身体を寄せて来た。そしてなんと、白い手で俺の浴衣の胸元を割って侵入して来たのだ。


 乳首に触れられると、心臓の音が鳴り始めた。
 更に白い指先は下に、股間に向かい始めた。
 「あら、パンツ穿いてたのね。アタシは…」
 俺は百合子さんの視線から逃げる事が出来なかった。百合子さんが自分の浴衣の帯びを解き始めているのだ。


 風の音も木々の揺れる音も止んでいた。その静寂の中で百合子さんが立ち上がると、同時に浴衣が足元に滑るように落ちていった。
 露(あらわ)になった裸体に、俺の喉がゴクリと鳴った。屈む俺のちょうど目の前、百合子さんの恥毛の剃り跡に薔薇の刺青を見たのだ。
 これは現実なのか、幻夜の中ではないのか。
 そんな思考の中、直ぐそこで百合子さんが、自分の身体を自分の手指で、擦るように動かし、撫で始めた。
 手指は決して大胆ではなく、繊細なものにでも触れるように動き続けた。百合子さんの表情も、羞恥に堪えている顔だ。


 「ねぇ、聖也さん、あなたも脱いでくれないとアタシだけじゃ…」
 俺の身体は硬直していたが、顎だけがコクコクと上下した。
 百合子さんが屈む俺の手を取った。身体が浮かぶように立ち上がる。その俺の浴衣の帯を、白い手が解き始めた。


 「お願い、女に恥を掻かせないで下さいね」
 気が付いた時には、俺達二人は裸のままで抱き合っていた。腕の中で、百合子さんが甘えるように俺の胸に顔を埋めている。
 しかし直ぐに、百合子さんの手が俺の背中から尻、そして下腹部へと動き始めた。
 俺の愚息が正直な反応を始めた。百合子さんはソレを、翫(もてあそ)ぶように弄くり回していった。その手管は今まで感じた事の無かったものだ。そう、沙紀には無かったものだった。そんな俺は、何とか視線を前に向けた。
 目に映るのは、あい変わらず横たわったままの沙紀と、それを介抱する巨漢の男だ。いや、見下ろしているだけかもしれない。そこまで意識が働いたところで、愚息に新たな刺激が伝わってきた。
 百合子さんがしゃがんで、俺のソレに唾液を塗(まぶ)し、喉の奥へと咥え込んだのだった。