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第1話


  結婚4年目になる俺、砺波聖也(トナミ セイヤ)は、先日誕生日を迎えたばかりの34歳。北陸の田舎からスポーツ推薦で東京の大学に入り、4年間ラグビーを続けた。身長は170で体重は70位。特別ゴツクはないが、NO8でそれなりに活躍したつもりだ。顔の方はどうだろうか、美男子系ではないが周りに不快感を与えるタイプと言われた事はない…まあ、今のところは。
 妻の沙紀(サキ)は、俺より4つ下の今年30になる横浜生まれの横浜育ち。よく耳にした『浜っこ』の意味が未だに分からないが、沙紀はちょっと違う感じで、わがままでファザコン気味といったところだ。


 そんな俺達夫婦は、子供がいない事もあってか、隠れ家的な温泉によく旅行に行くのだ。そして、これが唯一、夫婦共通の趣味といえる。というのも二人の出会いが、俺が勤務先の先輩に誘われって行った看護師との合コン、その時隣に座った沙紀と盛り上がったのが温泉の話題で、偶然にも二人は温泉巡りが趣味だったのだ。
 俺は当時も不動産会社に勤めていたが、休みの日には一人でよく温泉に行っていた。沙紀は看護師をしていたが、やはり長い休みの時には、一人で温泉地を巡っていたらしい。
 沙紀が『一人で』と口したところではツッコミを入れたが、こっちも『一人で』と言った事を、沙紀が疑ったかどうかは分からない。それでも結局、共通の趣味が切っ掛けで二人の付き合いが生まれて、結婚に至ったわけだ。


 付き合う前から沙紀は、シフトの関係からか平日休みが多かった。俺の方も、基本的な休みが火曜と水曜で、それもあってか平日の休みに合わせてデートをしていた。
 最初の頃のデートは、ドライブと食事だけで終わる事が多かった。会話に温泉の話題が出る事はあったが、実際に誘ったのは5回目のデートの時だった。その日は初めてキスをした日で、ある温泉地への一泊旅行を提案をしていた。そして、その初めての温泉地で俺達は結ばれる事になるわけだが、何故か俺は『この子と結婚する』と予感めいたものを感じたのだ。後に沙紀に云うと『アタシは合コンの時にピピッと来たわよ』と返されたが、本当かどうかは分からない。とはいえ、その言葉に喜んだのは間違いなかった。


 沙紀は処女ではなかったが、そんな事は気にならなかったし、俺もそれなりの経験があったが、沙紀がそれに対して何かを言う事はなかった。
 初めて結ばれてからは、自然とセックスの回数も増えていき、次第に互いが精魂果てるまで、やりまくるようになっていった。二人が好き者だった、だけかもしれないが。


 それからも小さな喧嘩をする事はあったが、付き合いは概ね順調に進み、いよいよ具体的に結婚を意識する時期が来た。二人が出会って約2年後の、俺が29、沙紀が26の時だった。
 仕事は横浜の不動産会社を続けていて、成績も良かったので給料はかなり貰っている方だったと思う。
 沙紀の方は、結婚を機に看護師を辞める事になっていたが、結婚後は叔父さんが経営する貿易会社で契約社員として働く事が決まっていた。沙紀は幼い頃に父親を亡くしていた事もあって、叔父には昔から可愛がられていたらしく、就職後の定休や給与も優遇されるとかで、俺は正直ホッとしていた。


 そしていよいよ、式を上げる時が来たのだが、その少し前に、俺達二人は改めて一つの約束をする事にした。
 それは、互いに嘘は絶対につかないというものだった。その約束をする時には、二人の過去に付いても話しておく事になった。いわゆるカミングアウトを、互いにしておこうとなったわけだった。