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第2話


  カミングアウトの場所は、当時借りてた俺のアパートの部屋だった。
 内容といえば、初恋から初体験の話へと進んだが、互いの経験人数も3人と特だん驚くほどのものではなかった。
 ただし俺は、3人以外に風俗経験がある事も正直に話しておいた。仕事上の取引先を接待でソープランド等に連れて行く事があって、俺一人が良い子でいる訳にはいかない、などと言い訳がましく説明を加えてはいたが。
 沙紀は一瞬、睨んで来たが『男の人って、そういうところ、あるのよね』と、取り敢えずの納得はしたようだったが『結婚したら、どんな理由でも他の女の人とはダメだからね』と、釘を刺すのも忘れていなかった。


 そんな俺の話よりもだーー。
 沙紀の告白の中で驚いたのは、職場の上司との不倫だった。沙紀は看護師だったわけだが、相手は同じ病院に勤める一回り以上歳上の外科医で、付き合う切っ掛けは魔が差したからだと云ったが、続いた期間は1年以上で、最後は相手の奥さんにバレて終わったとの事だった。
 関係が終わった事にホッとしたと口にした沙紀からは、深みに嵌まっていた状態が想像できた。そして俺は、その外科医との不倫話に引き込まれていったのだ。


 どうやら二人の密会の場所は、互いが夜勤の時の空いた病室や人のいない廊下、それに、誰もいない手術室なんかでも事に及んだ事があったらしい。
 沙紀にとって初めてのアブノーマルの体験でも、相手の医師は慣れたものか、次から次へと沙紀の心と身体に刺激を与え続けたのだった。
 そんな医師との体験を聞いて、一つの疑問が浮かんでいた。沙紀は温泉巡りは一人で行ってたと俺には告ったが、その医師とは行かなかったのか?
 答えは変わらなかった。不倫は悪い事だと分かっていたが止めれなかったと。その自己嫌悪を紛らわす為に、一人旅で地方の温泉に行ったのだと。
 俺は沙紀を受けとめる事にした。それに、結婚してから聞かされるより、今聞いておいて良かったと思うようにしたのだ。


 それでもーー。
 気になる事が残ったのも事実だった。
 それまでの俺達のセックスは、結構激しくやってるつもりだったが、それはあくまでもノーマルなプレイだったと思う。だから沙紀のその告白を聞いてからは、少し背伸びをしてみる気になった。例えば軽い縛りやスパンキング等のソフトSM、それにカーセックスがそれだった。とはいえ、いつも沙紀がM役かといえば、そうではなくて痴女に変身する事もあったのだ。俺は沙紀のその変貌にも興奮を覚えていた。
 そんな新たな刺激も加わるようになりつつ、式の日がやって来た。


 式は二人だけで、海外でやる事にした。最初は互いの親族や友人を呼ぶつもりだっが、俺側の田舎者丸出しの顔ぶれと、沙紀の身内を比較した時に、コンプレックスというか正直気後れを感じていたのだ。
 向こうの母親に挨拶に行った時も、貿易会社の社長をやってる伯父さんもいて、上流階級の匂いに良い印象を感じなかったのだ。 式を海外で、しかも二人で行うと告げた時も、義母は良い顔をしなかったが、そこは沙紀がフォローしてくれていた。
 義母は沙紀が一人っ子なので、盛大な式をやりたかったのだと思う。それも分かっていて披露宴はそれなりにと思ったが、今もって開いていない。


 南の国での二人だけの式を終えた俺達は、同じ市内のマンションに住む事になっていた。横浜の山手地区の一角だ。
 結婚生活はスムーズに進み、温泉巡りも平日休みを利用して、これまで通り行くようにしていた。
 そしてーー。
 とある温泉地で、俺達夫婦は黒い闇の世界に迷い込む事になってしまったのだった…。