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第4話


  チェックインを済ませて、2階の部屋に通されると「あーーやっと着いた」沙紀が両手を上げて、思い切り伸びをした。
 そんな沙紀と俺を見ながら、仲居さんが奥の大きめの窓を開けた。
 「どうですか、この景色」
 「わぁーー凄い眺め!山が綺麗だよ、聖也くん」
 窓から乗り出す後ろ姿に「おい、下に落っこちるなよ」俺は頬を緩めて声を掛ける。
 その沙紀に「奥さん、右手の奥の方に何か見えませんか」仲居さんが、続けて声を掛けた。
 「あ、お風呂?ひょっとして、あそこが露天風呂ですか」
 沙紀の嬉しそうな声に、俺も窓から顔を出して、右奥の方に目をやった。柵に囲まれた岩肌が見えて、その辺りから湯気が上がっている。


 「そうですよ。ところでお客さん、露天風呂と野天風呂の違いって知ってます?」仲居さんが訊いてきた。
 「えっと、聞いた事あったんだよね、聖也くん、何だっけ」
 沙紀の言葉に、俺は記憶を遡った。
 「え~っと、同じ屋外でも屋根や囲いがあるのが露天で、屋根も囲いもないのが野天じゃなかったかな」
 「旦那さん、正解です。特別な定義はないみたいですけど、うちではあれを野天風呂として紹介させて頂いてます」
 「へぇ~、でも、ここからじゃ野天か露天かなんて分かんないわよね」
 「はい、見えそうで見えない微妙な造りになってますから、うふふ」
 仲居さんが意味深な笑みで、俺達に頷いた。俺と沙紀は目を合わせると、どこか恥ずかしげに頷き合っていた。


 その後、仲居さんは避難経路や食事処の説明をして、最後に自慢の風呂の説明をしてくれた。
 1階に男湯女湯それぞれの大浴場があり、その続きに露天風呂がある事。その更に奥に野天風呂があって、そこは男湯からも女湯からも行き来が出来る造りになってるとの事だった。要は混浴スペースになっているのだ。


 仲居さんが一通りの説明を終えて、部屋を出ようとする時、俺は一つだけ気になっている事を聞く事にした。
 「あの、今夜の宿泊は俺達以外には何組位の人がいるんでしょうか」
 「ああ、今夜はですね、お客さん以外は一組だけですよ。勝野さんと仰って、一回りくらい歳が上の気さくな御夫婦ですよ」


 名前など客の個人情報を何気に話した様子には少し驚いたが、この気安さもこの宿の良いところだと、俺は思う事にしておいた。それに、あの黒塗りベンツの持主の名前を何の気なしに口にしたという事は、彼等はヤバい人ではないのだろう。俺はそう解釈しながら、部屋を後にする仲居さんを見送った。
 そんな俺に、沙紀がさっそく云ってきた「聖也くん、先にお風呂行こっか」
 「うん。でも、その前に」
 そう云って俺は、沙紀の手を取り抱き寄せた。そして布団も敷かれてない畳の上に誘い、覆い被さった。直ぐに沙紀にも、スイッチが入ったのが分かった。
 「聖也くん…窓…開いて…」
 俺は、沙紀の唇を塞ぎながら、胸の膨らみに手をやったのだった。