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第5話
宿に着いて15分、部屋に入ってからも5分たらずで、俺達二人は互いを求めてあっていた。気づいた時には、二人の服はその辺に散らばり、素っ裸でまさぐりあっていたのだ。
沙紀はこの環境に感情が高ぶったのか、いつもより早く絶頂を迎えていた。俺の方も明るい陽の元でやるセックスが久しぶりだったのか、野生の猿のように性急を求めて果ててしまった。
息の乱れが治まってきた頃、沙紀が仰向けのまま顔だけ俺に向けてきた。
「聖也くん、アタシの声、大きかったよね、聞こえちゃったかな」
「ああ…」
今更ながらと、俺は沙紀の顔を見て、それから開いたままの窓に視線を向けた。そして、起き上がると前も隠さず窓に近づき、そっと外を覗いた。
「4部屋だったよな。どんな造りなんだろう」
ひとり言のように呟き、端から端へと辺りを見廻した。
「ああ、なるほど」
建物全体が扇形で、ロビーを真ん中にその左右に2部屋ずつあって、部屋と部屋が回廊で繋がっているみたいだ。俺達の部屋は左奥の部屋だ。
「もう一組の人って、何処だろうね」俺が呟くと沙紀も裸のまま寄ってきた。
「ねぇ、何処?声、聞かれたかな」
「ここからじゃ分かんないなぁ。でも、沙紀の声はデカいから間違いなく聞こえてるよ」
俺が笑うと「いゃんッ」沙紀が抱きついて来た。そしてもう一度キスだ。
それから、俺達は宿自慢の露天風呂に行く事にした。温泉に来ると、直ぐに風呂に行くのはいつもの事だった。下着は着けず、素っ裸の上に浴衣だけを羽織って部屋を出た。
「聖也くん、野天の方で合流する?」
「そうだな、行ってみようか…」
俺達はそれなりに温泉巡りをしているが、実は露天はあっても、混浴に入った回数は少ないのだ。殆どが家族風呂と呼ばれる貸し切りのものだったのだ。
「アタシ達以外は一組しかいないって云ってたし、会う確率は低いよね」
「ん、どうかな…でも、沙紀には見られたい願望もあるんだよな」
「いゃん、まだそこまで変態じゃないわよ」
口を尖らせる沙紀を可愛いらしく思いながら、俺は足を進めた。
フロントの前を通った時には女将さんがいて、ニコリと微笑んでくれた。チェックインの時も会ったが、50くらいの朴訥とした、感じの良さそうな人だ。
宿の建物はさほど大きくないので、迷う事なく風呂の場所に来る事ができた。
『男湯』『女湯』の暖簾があり、俺達は確かめるように目を合わせた。
「混浴の方には、直ぐに行く?」
沙紀の言葉に「し、声がデカイぞ」と囁いて「俺は少しゆっくりしてから行こうかな」と続けた。
「うん、分かった。聖也くんはいつもそうだもんね、10分くらい?」
好奇心旺盛の沙紀は、直ぐにでも奥に行く気だろうか。
俺は沙紀の性急さに、やれやれ、と苦笑いを浮かべながら暖簾を潜ったのだった。