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第3話


 俺達がよく行く温泉は、伊豆方面に群馬方面が多かった。
 なるべく人の少ない隠れ家的な所を狙って行ってるつもりだったが、ネット社会においては口コミで直ぐに晒されてしまう。なので有名温泉地でも、小さな旅館を選ぶようにしていた。そう、年配の人達や御忍びのカップルが利用しそうな風情のある旅館だった。金額は結構する所が多くて、俺達のような若造夫婦にはちょっと贅沢かもしれなかったが、子供が出来るまではと、プチ贅沢を楽しんでいたのだ。
 それともう一つ、外せない条件は露天風呂がある事だった。
 二人のセックスには時折りアブノーマルを加えていたが、見る者が見れば、可愛い方だったと思う。沙紀の両手をタオルで縛ったり、軽いスパンキング等のソフトSMまでだった。たまに、その露天風呂でこっそり、沙紀の卑猥なポーズを写真に撮る事はあったが、それらをネットやSNSなどに載せる勇気は持っていなかった。


 沙紀は自分の身体に自信を持っていないようだったが、身長は160の体重は教えてくれないがスレンダーな体型に、胸は85あって、ヒップも80以上はあったのだ。服を着ている時は目立たなかったが、初めて裸体を目にした時は、上と下の二つの膨らみに目を惹かれたものだった。顔はチョッとキツい感じだったが、美人と言われる事の方が多かった。
 沙紀とのセックスでは、二つの膨らみを乱暴に揉み崩すのが一つのパターンになっていて、沙紀は責めが強ければ強い時ほど、甘い鳴き声を出す女だった。だが、急に痴女に変身するのは、相変わらずの事だったが。
 俺もエロビデオをそれなりに視てはきたので、SとMが同居してる女がいる事は想像出来ていた。そんなビデオの女と、沙紀の姿を重ね合わせていたのかもしれない。




 さて、季節は春、そして今日ーー。
 俺達は自家用のセダンを走らせて、二泊三日の予定で伊豆の修善寺方面に向かっていた。
 泊まるのは初めての旅館で、部屋数が4つしかない小さな宿だった。沙紀が見つけてきた宿だが、写真にあった露天風呂の雰囲気にビビッときたのだとか。


 運転は沙紀も免許を持っていたが、いつも俺の役目で、この日も順調に車を走らせた。適当に休憩を取りつつ、絶景ポイントでは車を停めて写真を撮ったりもした。
 目的近くまで来た所で、ナビが頼りなくなってしまった。それでも、それこそが隠れ家的な宿と呼ばれる証拠だと、俺達はワクワクしていた。道幅も急に狭くなったり、また広くなったりと、そんな状況が繰り返されながら、やっとそれらしい建物に辿り着く事が出来た。


 俺は車をゆっくりと駐車場らしきスペースへと進めた。フロントガラス越し、『旅の湯 和道楼』と趣のある文字で書かれた看板が見える。
 車から降りて、宿の入口に向かって歩きかけた時だ。
 「ねぇ聖也くん、あの奥の所…」
 沙紀の声に、俺はキャリーケースを引きながら奥側に目をやった。そこには隠れるように、黒いメルセデスが停まっていた。おまけに、シッカリとスモークまで貼られてある。
 「あ、アッチ系の人かな」俺は眉を歪めながら呟いた。


 不動産の仕事をしてると、学生時代の友人から『アブナイ事してるじゃないの』なんて云われた事が何度かあったが、今いる会社は普通に真面目にやっている所だと思っている。
 中には企業舎弟と呼ばれる反社の隠れ蓑になってる会社もあるかもしれないが、今のところ俺は遭遇した事はない。しかし、取り引きした会社の社長さん達が、視界に映るような黒塗りの車に乗ってる姿を見た事はある。


 「大丈夫だよ沙紀、心配ないって。仮にアッチ系だとしても、こんな所で何か仕出かす奴なんていないよ」
 眉を顰(ひそ)める沙紀を見ながら、俺は気丈に振る舞ってみせた。
 「そうだよね、大丈夫だよね」沙紀が俺の肘に腕を絡めてきた「何かあったら、得意のタックルでお願いね」
 「ああ、任せとけって」
 そう云って、俺達は足を進めたのだった。