小説本文



 浣腸に聖水、それに飲尿、それはまさにアブノーマルの世界だった。
 中村はこの劇場で何度と見たその行為に、興奮している自分を改めて変態だと確信した。
 いつしか中村の心を覆った黒い雲は、今まで眠っていた性癖を目覚めさせていた。


 舞台では褌の男が大きなバイブを持ち出していた。
 両端が男性器の形をした双頭バイブを男から受け取った夕月と夕華は、その端を赤ん坊が乳房を吸うように夢中で嘗め回している。
 バイブが2人の唾液でぐっしょり濡れてきた頃、示し合わせたように2人は四つんばいの姿勢になり、お互いが尻と尻で向き合い、2人はそれぞれ自分の股の下に手をやり器用にバイブを膣へと導いた。


 (あんな太い物が本当に入るのか)


 中村の心配をよそに2人の女穴はゆっくりバイブを飲み込んでいき、やがてバイブの姿が膣穴に消えると、女達は互いの尻をぶつけるように突き合い始めた。
 二つの尻がぶつかるたびに女達の乳房、下腹、尻が揺れ、徐々に突きあうスピードが速くなり、女肉の揺れるスピードも速くなっていく。


 女どもの口が開き、少しずつ呻き声が上がってきた。
 その喘ぎ声と尻がぶつかる音、乳房と下腹の揺れ、その全てが一定のリズムを奏でている。
 中村はいつしかそのリズムに合わせて客席で腰を振り始め、そしてそのリズムで自分の物を扱きたいと思っていた。


 喘ぎ声と突きあうスピードが更に上がり、女達は手で地面を噛み締めている。
 女達は逝きたがっていた。
 中村は心の中で叫んだ。
 (逝け 逝け 逝けーーー)
 中村の声が届いたのか、女達の声が絶叫に変わり、二人は雷に打たれたように背筋が反り上がるとガクっと崩れ落ちた。


 褌をした男が倒れている夕月と夕華の首に鎖を巻きつけ、それを引っ張った。
 女達は引きずられるように上半身を起こすと、犬のように四つんばいになり、男に引かれながら舞台から消えていった。


 人気NO1とNO2の奥様のアブノーマルのショーに、客席の空気は静かな興奮の頂点に達していた。
 誰も声を出さないが目は血走っている。
 そんな客席の前に再び司会の男が姿を見せ、男達の興奮を抑えるように静かに話し出した。


 「・・・・・・先日、夕霧(ゆうぎり)さんと言うごく普通の貞淑な奥様が初めてこの舞台に上がり、変態奥様の仲間入りを果たしました。この奥様には優しいご主人と可愛いお子様がいるのですが、実はそれ以外にも若い彼氏がいたのです」


 (えっ!)


 「我々には切っ掛けなどはわかりません・・奥様がこれからご主人との関係をどうしたいのか?若い男とどうなりたいのか?それもまたわかりません。それでは今から皆様と一緒にこの奥様の心の中を覗いてみましょう。・・続きましては夕霧さんのウエディングショーの始まりです」


 (・・・ウエディングショー?)


 司会の男の言葉が終わると、中2階の小窓から1本の光の道が舞台に下りてきた。
 その光が大きく広がった輪の中に女性のシルエットが現れ、やがてその影は客席の男達の前に形となって現れた。
 (こっ これは!)


 客席で驚きの声が上がったその姿は・・白い蝶の仮面を被(かぶ)った夕霧の見事なウエディングドレス姿だった。
 真っ白なドレスに白いベールを被り、両手で白いブーケを大事そうに持っている。
 舞台中央で俯きかげんで立っているその姿は、これから若い男にその身を捧げようとしているのだろうか。


 「皆様! 皆様は夕霧はこのウエディングドレスを着て若い男の元へと行こうとしている・・・と思ってはいませんか?」


 (・・・・・・)


 「違います・・・違うのです。この夕霧が着ているウエディングドレスは今のご主人との結婚式に着た物なのです」


 (うっ 嘘だ!!)


 「では何故、そんな物を今着ているのか・・・夕霧は今、これを脱ぎ捨て、新たなドレスを身に着けて若い男の元へと行こうとしているのです」


 (? ? ?)


 「・・・私も今から夕霧のために、新しいウエディングドレスのお手伝いをしたいと思います」


 (・・・何なんだこれは・・・一体 どうなって・・・)


 客席があっけにとられている中、司会の男がポケットから大きなハサミを取り出した。
 そしてドレスの裾を手に持つと、シューっとハサミを滑らせた。
 司会の男の片方の手には長い切れ端が出来、それを床へハラリと落とした。
 そして、続けてドレスを刻むように切り始めた。
 ドレスが切られるたびに夕霧の肌が見え隠れし・・ハサミは足首から太ももへ、太ももからヘソへ、ヘソから胸へ、そして最後は肩へといき、全てドレスは見事に切り落とされた。