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第24話
“欲望の劇場”の次ぎの舞台が近づいてきていた。
何かを指折り数えて待つというのは、いつ以来だろうか。
その日が近づくにつれ、中村はあの日の湧き上がる快感を思い出していた。
前日、中村は久しぶりに早めに帰宅の途に向かう事が出来た。
中村は最寄り駅から自宅へと歩いていた。
いつもの交差点を曲がってしばらく行くと、前方にスーパーの袋を両手に持って歩いている女性が目に付いた。
速足の中村がその女性に近づいた・・年は妻のみゆきと同じ位だろうか・・重い荷物を持っているせいか歩くたびに尻が揺れるのがよくわかる。
中村はいつの間にか、その大きな尻から目が離せなくなっていた。
次ぎの角を曲がった時、その女性が突然振り向いた・・中村が慌ててその女性を見た・・顔は赤い蝶の仮面を被っている。
そして、その仮面は驚いた中村を気にする事なく喋り出した。
『私は中村さんちのご近所のあの主婦よ・・普段すましてるけど こんな所でこんな事してるのよ』
いつかのその声を聞いた中村は目を丸くし、頭を抑え2,3歩よろめいた。
「危ない!」
その女の声に踏ん張った中村が、頭を振りながら顔を上げた。
「あっ いや すいません 大丈夫ですから」
心配そうに覗き込んだのは素顔の女性だった。
「あら 中村さんちのご主人・・・ですよね?」
「えっ ええ はい そうですが・・・」
「あの、わたし田中です。奥様のみゆきさんとは仲良くさせてもらってます・・・でも・・・大丈夫ですか」
「はい、すいません。本当に大丈夫ですから」
中村は何度も何度も頭を下げ、心配する田中と名乗った女性を振り切るようにその場を離れて歩き出した。
家に着いた中村は直ぐに風呂に入り、湯船に浸(つ)かりながら先ほどの事を思い出していた。
(また あんな幻覚を見てしまうなんて・・・明日のショーの事ばっかり考えていたからか・・・)
風呂から出た中村に、妻のみゆきがビールを持ってくる。
「みゆき、そういえば帰り道で田中さんて言う人とあったぞ。みゆきと仲良くさせてもらってるって」
「田中? あー真由美ね、田中真由美。いつも名前で呼んでるから、一瞬誰かと思いましたわ」
「そうなんだ 仲良いんだ。」
「そうですね、よくお茶もするし。家に来た事もありますよ。私も行った事があるし・・・」
「ふ~ん 」
「真由美のご主人は結構年上なんですよ。確か一回りくらい違うって言ってた気がします」
中村は妻との何気ない会話をしながらも、自然とその素振りを観察していた。
目線、口の動き、頬の色、本当に明日、目の前のこの女が再びあのような事をするのだろうか。
ご近所や会社関係の人間の間でも、貞淑、良妻と呼ばれているこの妻が・・。
その日、中村は午後からのスケジュールを全てフリーにしていた。
何処にでもいる普通の奥様が舞台に上がるため、ショーは昼過ぎくらいから行われる事が多かった。
劇場の受付時間も厳密に決められていた。
早くてもダメ遅くてもダメ、会場の近くで女性とバッティングしない為の措置だと後から聞かされた。
客席はこの日も満員だった。
中村は1階の客席にいた。
客席の男達はみんな仮面を着けているが、その雰囲気で年齢が読めてくる。
70歳近い老人もいるようだし、30歳前の若者もいるようだ。
しかし1番多いのは中村と同じ中高年世代のようだ。
中村は初めて神崎とあった時の言葉を思い出した。
『自分の妻をあの舞台の上に上げて喜ぶ旦那もいるんですよ』
あの時はそれが夕華(ゆうか)夫婦だと教えてくれた・・世の中には変わった夫婦がいるものだと思ったが今では自分も完全にその仲間入りだった。
(あの時夕華の旦那は客席にいたんだ・・・夕華は夫が見ている事を知っていたのか? それともみゆきと同じで知らないのか?)
中村はそんな事を考えながら、もう一度客席をグルッと見渡してみた。
何かを指折り数えて待つというのは、いつ以来だろうか。
その日が近づくにつれ、中村はあの日の湧き上がる快感を思い出していた。
前日、中村は久しぶりに早めに帰宅の途に向かう事が出来た。
中村は最寄り駅から自宅へと歩いていた。
いつもの交差点を曲がってしばらく行くと、前方にスーパーの袋を両手に持って歩いている女性が目に付いた。
速足の中村がその女性に近づいた・・年は妻のみゆきと同じ位だろうか・・重い荷物を持っているせいか歩くたびに尻が揺れるのがよくわかる。
中村はいつの間にか、その大きな尻から目が離せなくなっていた。
次ぎの角を曲がった時、その女性が突然振り向いた・・中村が慌ててその女性を見た・・顔は赤い蝶の仮面を被っている。
そして、その仮面は驚いた中村を気にする事なく喋り出した。
『私は中村さんちのご近所のあの主婦よ・・普段すましてるけど こんな所でこんな事してるのよ』
いつかのその声を聞いた中村は目を丸くし、頭を抑え2,3歩よろめいた。
「危ない!」
その女の声に踏ん張った中村が、頭を振りながら顔を上げた。
「あっ いや すいません 大丈夫ですから」
心配そうに覗き込んだのは素顔の女性だった。
「あら 中村さんちのご主人・・・ですよね?」
「えっ ええ はい そうですが・・・」
「あの、わたし田中です。奥様のみゆきさんとは仲良くさせてもらってます・・・でも・・・大丈夫ですか」
「はい、すいません。本当に大丈夫ですから」
中村は何度も何度も頭を下げ、心配する田中と名乗った女性を振り切るようにその場を離れて歩き出した。
家に着いた中村は直ぐに風呂に入り、湯船に浸(つ)かりながら先ほどの事を思い出していた。
(また あんな幻覚を見てしまうなんて・・・明日のショーの事ばっかり考えていたからか・・・)
風呂から出た中村に、妻のみゆきがビールを持ってくる。
「みゆき、そういえば帰り道で田中さんて言う人とあったぞ。みゆきと仲良くさせてもらってるって」
「田中? あー真由美ね、田中真由美。いつも名前で呼んでるから、一瞬誰かと思いましたわ」
「そうなんだ 仲良いんだ。」
「そうですね、よくお茶もするし。家に来た事もありますよ。私も行った事があるし・・・」
「ふ~ん 」
「真由美のご主人は結構年上なんですよ。確か一回りくらい違うって言ってた気がします」
中村は妻との何気ない会話をしながらも、自然とその素振りを観察していた。
目線、口の動き、頬の色、本当に明日、目の前のこの女が再びあのような事をするのだろうか。
ご近所や会社関係の人間の間でも、貞淑、良妻と呼ばれているこの妻が・・。
その日、中村は午後からのスケジュールを全てフリーにしていた。
何処にでもいる普通の奥様が舞台に上がるため、ショーは昼過ぎくらいから行われる事が多かった。
劇場の受付時間も厳密に決められていた。
早くてもダメ遅くてもダメ、会場の近くで女性とバッティングしない為の措置だと後から聞かされた。
客席はこの日も満員だった。
中村は1階の客席にいた。
客席の男達はみんな仮面を着けているが、その雰囲気で年齢が読めてくる。
70歳近い老人もいるようだし、30歳前の若者もいるようだ。
しかし1番多いのは中村と同じ中高年世代のようだ。
中村は初めて神崎とあった時の言葉を思い出した。
『自分の妻をあの舞台の上に上げて喜ぶ旦那もいるんですよ』
あの時はそれが夕華(ゆうか)夫婦だと教えてくれた・・世の中には変わった夫婦がいるものだと思ったが今では自分も完全にその仲間入りだった。
(あの時夕華の旦那は客席にいたんだ・・・夕華は夫が見ている事を知っていたのか? それともみゆきと同じで知らないのか?)
中村はそんな事を考えながら、もう一度客席をグルッと見渡してみた。