小説本文



 みゆきと拓也は、スタジオのあったあのビルのエレベータの前で並んで立っていた。
この日、2人はママに“仕事”の話を聞きに来ていた。
「みゆき、約束覚えてるよね。どんな事があっても俺の心はみゆきのもの、みゆきの心は俺のもの・・・」

「うん・・・」
拓也が不安げなみゆきの手を握ると、みゆきはその手を握り返し、2人はエレベーターに乗り込んだ。

みゆきと拓也が並んで座っているソファーの前にママが腰を降ろした。
「ふふ、みゆきさんしばらくね。きっと又会えると信じていたわ」

みゆきが黙って会釈する様子を確認すると、ママは最初に女性の“仕事”から説明を始めた。
それは今までの下着やヌードモデルの仕事、男優養成の仕事、そのどれよりも過激でハードな内容だった。
ストリップ、オナニーショー、白黒ショー、3P、輪姦ショー、SM・・・。

また、そのショーは強制されるものではなく、段階を踏んでのものである事が説明され、続いてギャラについても説明された。
その額は今までの仕事とは比べものにならない程の金額だった。
ママが説明している間、拓也がずっとみゆきの手を握っていた。

「どう、みゆきさん、びっくりした?でもね、さっきも言ったけど一気に全部やる必要はないのよ。自分が出来るものからで良いの。それとね、後でビデオを見せてあげるけど、これらのショーをやってるのは皆みゆきさんと同じ普通の奥様、人妻さんなのよ。年も同じくらいよ。それで皆さん何百万、何千万て稼いでいるのよ」

「ほ、本当ですか?・・・何千万・・・私と同じ・・・普通の奥様・・・」

「ええそうよ。じゃあスタジオのほうでビデオを見ましょうか。新人さんのために作ったもので、ショーをダイジェストに編集したビデオがあるの。さあ、あっちへ行きましょう」

慣れ親しんだスタジオの中にある、テレビの前にイスが置かれ、みゆきと拓也が腰を降ろした。
ママがスイッチを押してビデオが始まった。
ビデオに出てくる女性は、みんな蝶を模(かたど)った妖しい仮面を着けている。
確かに女性の身体は、決して張りがあるとは言えない熟女のものだ。

(すっ 凄い・・・あんな事してる。あの人、ものすごく感じているのね・・・。この人、2本同時に・・あんな大きな物が入るんだ・・・)

 みゆきの目が怪しい光を放ち始め、それと同時に女の部分が蜜で潤(うるお)い始めた。
その時スタジオのドアが開き、一人の男が入ってきた。
男は拓也の教官を勤めた田沢だった。
少し禿げ上がった頭、脂ぎった肌、分厚い唇に汚い歯、そして醜い中年の身体、みゆきが初めて見た時に鳥肌がたったと言ったあの男だ。

 しかし、みゆきは田沢の姿を気にする事無く画面に引きずりこまれている。
近づいて来た田沢が、拓也の耳元で何か囁いた。
それを聞いた拓也はみゆきに顔を向けると、目を見つめ黙って頷くと立ち上がり、部屋を出て行った。
残ったみゆきは、椅子に座ったまま画面の映像に飲み込まれていた。

そんなみゆきの後ろに立っていたママが、田沢に目配せをした。
それが合図だったのか、田沢はみゆきの後ろに回ると両手をみゆきの肩にそっと置いた。
一瞬みゆきの身体がビクンと反応したが、田沢は気にする事無くゆっくりその手をみゆきの胸の辺りへ降ろしていき、そして2つの乳房をゆっくり揉み始めた。

2人の様子を見ながらママが、優しそうな声でみゆきに語りかけた。
「みゆきさん、どうビデオは? みんな気持ち良さそうでしょ。みゆきさんと同じ人妻さんよ、この人も、さっきのあの人も。この人達に出来るんだからみゆきさんにも絶対出来るわよ」

 ビデオがみゆきの脳の感覚を麻痺させてしまったのだろうか、目を瞑(つむ)ったみゆきは田沢の愛撫に身を任せ始めていた。

「みゆきさん、みんな気持ちいい事してお金持ちになってるのよ。さあ、みゆきさんもあの奥様達の仲間に入ろうか? ねっ、目を開けて田沢さんの顔を見て・・・そう、田沢さんのキスを受け止めたらあとは天国へ行けるわよ・・・さあ」

ママの優しそうなその口調は、極上のワインが胃に染み込むように、みゆきの頭の中に溶け込んで入った。
田沢がみゆきの顎をそっと引いて、顔を自分の方に向けるとゆっくり唇が近づいてきた。
みゆきはそれを一旦は躊躇した素振りを見せたが、やがて自分から唇を重ねていった。
 田沢はみゆきをキスしたまま立ち上がらせ、そして唇を重ねたままみゆきの股間に手をやり、器用に服を脱がせ始めた。

最後のショーツを脱がしみゆきを全裸にすると、田沢は自分の服を脱ぎだした。
2人が全裸になったのを確認したママは、笑みを浮かべながらその部屋を後にした。

田沢は全裸になった虚(うつ)ろなみゆきを抱え上げると、ベットへと連れて行った。
ここでもベットの廻りに隠されている盗撮用ビデオが2人を捉えていた。