小説本文



 中村の視線のわずか数メートル先では、すでに夕霧(ゆうぎり)事・・みゆきの輪姦ショーが始まっていた。
 田沢に選ばれた客席の男が代わる代わる下半身を丸出しにして、己の肉棒を先程から夕霧の淫穴にぶち込み、腰を激しく振り続けていた。
 溜まった欲望をただ吐き出す為だけに使われる穴、まさにそれは“便所”であった。


 「お客様、まだまだ時間はありますよ。そんなにあせらないで、じっくり夕霧さんの“穴”を味わって下さいね。ただし、アナルはまだダメですからね。マンコか口だけにしておいて下さいね」
 「あぁぁ 良いよ・・凄く締まるよこの奥さんのあそこ。・・・あああ もっ もうだめだ、あっ でっ 出ちゃうよ・・・」
 田沢の問いかけも虚(むな)しく、又一人 男が欲望を吐き出した。


 男が吐き出し立ち上がると、すぐ様次の男が夕霧を四つんばいの姿勢にして、己の一物を突き刺した。
 夕霧の口からは再び歓喜の声が上がった。
 「はあぁぁ~ん こっ この人のも良いわ~ あああ あてて もっと奥まで・・ああ~ん 遠慮なさらないでぇ・・突いてぇ・・突いて下さいぃぃ・・もっと激しくぅ~」


 「ふふふ 夕霧の奥さんよお、良い声してるね、どうなんだい今の気分は?」
 「ああ~最高~ サイコ~なのお~・・田沢さん あたし 今幸せなのよぉ~ 。・・ああん 使ってぇ~使ってください、皆さんで使ってください私のオマンコ。私のオマンコを道具みたいに使ってえ~、便所なのよお~私のオマンコ 便所と一緒なのよお~、出したくなったら誰でも使って下さいぃ~・・良いの~し あ わ せー」


 被(かぶ)り付く様に立ち上がっている観客の中で、中村もまたその光景に釘付けになっていた。
 (ああ ああ おっ 俺も・・へっ へへ つ 次は お 俺の番だ・・・お 俺も上がってやる・・あ あの舞台の上に・・)
 犬の格好で突いていた男が欲汁を吐き出したところで、再び田沢が客席に声をかけた。
 「さあ では次の番です。また3人上がってもらいましょうか」


 客席で立ち上がっていた男たちが一斉に手を上げた。
 「はい。じゃあ、そこのあなた・・それと、その後ろのあなた」


 熱気の中、中村も手で股間を握ったまま片手を高く上げていた。
 「はい。じゃあ、もう一人は誰にしようかな・・」
田沢が客席を見渡しながら、中村の方を向くとその視線がピタッと止まった。
 「じゃあ、3人目はそこのあなた」


 (・・・・・・・・・)
 中村の表情が強張る中、隣に座っていた男が興奮気味に舞台へ上って行った。


 「ふふ 中村さん、又上がれなかったのね」
 「いや、田沢には中村は選ぶなと言っておいたんだ」
 VIPルームで先程から神崎とママが舞台を覗き続けている。


 「まあ そうだったの。田沢には誰が中村さんか教えておいたのね」
 「ああ そういう事だ」


 「うふ、それにしても貴方はサディスティックね・・・犯(や)らせてあげればいいのに」
 「ふふ ママ 俺は優しいんだぜ、中村に“脳みそ”で逝く事を教えてやろうとしてるんだから。脳で逝くのは最高だぜ、最高の射精なんだぜ。さあ 中村はどうかな・・脳で逝く前に自分のチンポを掴(つか)み出して扱(しご)き始めるか・・」


舞台では四つんばいの夕霧の口に、男が己の誇張した一物を咥えさせていた。
 (ああ みゆき・・・なんて 厭らしいフェラチオなんだ・・ああ はやく 俺も・・)


 “ジュバ ジュバ グチュ グチュ”卑猥な音を立てながらしゃぶっている夕霧の横で、下半身を丸出しにして順番を待っている男が声をかけた。
 「ア アナルはまだダメなのかい? 俺はアナルが好きなんだよな」
 「ふふ お客さん、アナルはまだまだ先のお楽しみですよ。この奥さんにも 少し“お預け”をしとかないとね」
 田沢が夕霧の横顔を覗き込みながら答えていた。


次の男が正常位で放出すると、その次の男は夕霧を騎乗位で迎え入れた。
 夕霧が激しく腰を上下に揺する中で、中村の目には下腹の文字がはっきりと映っていた。
 “公衆便所”・・・・。
 (ああ はっ 早く出したい・・俺も あの舞台の上で・・だっ 出したい あの公衆便所の穴の中に・・溜まりに溜まった精液を・・)


 「凄いわね みゆき・・ねえ そう思わない 真由美」
 「うん 確かに凄いわ。私も負けちゃうかも・・・でも夕月(ゆうづき)さん、ここじゃ夕華(ゆうか)って呼んでくれないと」
 控え室では夕月と夕華がモニターに映る夕霧の姿にクギ付けになっていた。


 「あっ ごめん ごめん・・」
 夕月が首をすくめてぺロっと舌を出した。


 舞台ではやがて騎乗位で突いていた男が逝くと、それと同時に夕霧の身体が弓なりのまま痙攣し、ガクンと突んのめる様に倒れこんだ。
 男が立ち上がった後も夕霧は、うつ伏せで倒れたまま荒い息遣いだけが聞こえていた。
 客席の男たちは立ち上がったまま田沢の口元を見ていた・・次の号令に誰よりも早く手を上げようと。


 「皆様、残念ながら時間が来てしまいました。ただ今のお客様をもちまして本日の夕霧さんの舞台は終了です。ありがとうございました。次回の夕霧さんは一体どんな舞台を見せてくれますでしょうか?・・・ひょっとして皆様にアナルを?・・ふふふ、この後も厭(いや)らしい変態奥様が登場しますよ・・最後までゆっくりお楽しみくださいませ」


 田沢の言葉が終わると舞台にスタッフが現れ、倒れている夕霧を抱え上げようとしている。
 やがて田沢が姿を消すと、入れ替わるように司会の男がニコニコと笑みを浮かべ現れた。


 中村はストンと自分の席に落ちるように座ると、しばらく舞台を傍観していた。
 そして自分の名前を呼ぶ小さい声に後ろを振り向いた。
 「奥様、凄かったですね」
 小声で囁(ささや)いた仮面を被った大柄な男、夕華こと田中真由美の夫、田中一郎だった。
 中村は黙ったまま頷(うなず)いていた。


 舞台はその後、夕華、夕月たちのショーが続き、やがてこの日の幕を下ろした。
 中村と田中は出口でスタッフの男達に仮面を返すと、ビルの向側にあるいつかの公園へと向かっていた。