小説本文



 
 舞台に田沢が登場した。
 トレードマークとなった長い舌を出し、己の唇を舐め回しながら腰を振る夕霧(ゆうぎり)の後ろへやってきた。
 醜い中年腹をポンと叩き、黒いビキニパンツをもったいぶる様に下ろし始めた。
 中からは何度とこの舞台の上で披露してきた、真珠入りのデカマラチンポが顔を出した。


 田沢はその歪(いびつ)な形の一物の根っこを握り締め、客席の男達に勝ち誇ったように見せつけた。
 夕霧は腰を上下に揺らしながら振り返り、田沢の巨根を確認すると右手で尻肉を掴み、アナルを晒して見せた。
 そして、その穴に田沢の真珠入りのデカマラをおねだりした。
 田沢は夕霧のその穴を勝手知ったの如く揉み解すと、一気に突き刺した。


 夕霧の口から歓喜の声が上がり始め、その瞬間中村の脳髄にその“声”が響き渡った。
 (ああああ こ これだ・・これなんだ・・)


 中村の全身に麻薬のような覚醒感が沸きあがり、急に身体が軽く浮き始めた。
 (ははは き・・きたぞ きたぞ きたぞ・・これなんだ・・)
 (へっ へへへ わかるか わかるか わかるか・・お前らにわかるか!! この背筋がぞくぞくする感触が・・)
 中村の目が釣りあがり、口が大きく引き裂かれ、その端から涎(よだれ)が止め処なく流れ落ちていった。
 (ああ ああ最高だ・・最高なんだよ・・てめえの女房が醜い男に犯(や)られてるんだぜ・・へへへ どうだ 最高だろう)


 中村の耳にいつかの“声”が繰り返し鳴り響き渡った。
 “舞台に上がるのは どこの誰の奥様ですか、 ひょっとしてあなたの奥様ですか?”
  “どこの誰の奥様ですか、 ひょっとしてあなたの奥様ですか?”
  “あなたの奥様ですか?・・・・”
  “あなたの奥様ですか?・・・・”
  “あなたの奥様ですか?・・・・”


 客席に座っている中村の口からは、ブツブツ小さい声が漏れていた。
 「へへ そうだ 俺の女房だ・・へへ あそこで男を咥えてるのは俺の女房なんだ・・へっ へへへ・・」


 果てる事無く湧き出る男と女の欲望・・・。
 頭の中に木霊(こだま)するその “声” に、中村は一人で答え続けていた。
 そしてその声に応えるかのように、夕霧の声も大きくなっていくのであった・・・・・・。


 ~ 完 ~


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 夕霧が姿を消した舞台に再び司会の男が現れた。
 男は夕霧の舞台の感想を述べると次に登場する奥様を紹介した。


 「・・・皆様、次に登場していただく奥様は、実は半年以上前に1度初舞台を踏んだ奥様です。・・その舞台ではほんのわずかな時間、ストリップショーとオナニーショーを披露してくれました。その頃から我々のモットーは “奥様には強制、脅迫はしない。奥様ご自身の気持ちを尊重する” ・・そんな姿勢でおりました。我々はこの奥様は直ぐに淫乱女の階段を上ってくれると信じていたのですが、その前にある事情でこの劇場自体が開催できない状態になってしまいました」
 「・・・・・・・・・」


 「そして時は経ちました。その間もこの奥様の欲望は消えていなかったのです・・ それどころか、いつか本当の自分の姿を皆様にお見せしたい・・そんな事を夢見ていたのです・・・そして劇場の再開が決まった時、この奥様は更なる変態女に近づく為、ある温泉地に調教を受けに行ったのです」
 「・・・・・・・・」


 「・・本日 この舞台の上で、この奥様は初めて皆様の前で男の物を受け入れます。・・それまでノーマルしか知らなかった奥様がまた1段アブノーマルへの階段を踏み出します」
 「・・・・・・・・・」
 「さあ、そろそろ登場いただきましょうか・・・・今日の衣装は可愛らしいワンピース・・ご自宅からのそのままの格好で登場していただきます・・・清楚  貞淑  良妻 そんな言葉がピッタリのこの奥様がどのように変るか?・・さあ “どこの誰の奥様でしょうか、ひょっとしてあなたの奥様ですか?・・それではお待たせしました。夕凪(ゆうなぎ)さんの登場です」


 客席の男達の背筋がピンと伸び、山田はゴクリと唾を飲み込んだ。
 舞台には紫色の蝶を模(かたど)った怪しげな仮面を着けた女が、司会の男が言ったとおりワンピース姿で現れた。


 (! ! ! こっ このワンピース・・・・・)
 (・・・まっ ま さ か・・・)
 その瞬間、山田の身体中に電流が走り、頭の中にその “声” が響き渡った。


 “どこの誰の奥様でしょうか ひょっとしてあなたの奥様ですか?”
 “あなたの奥様ですか?・・・・”
 “あなたの奥様ですか?・・・・”
 “あなたの奥様ですか?・・・・”


 その声は呪文のように、呪縛のように、いつまでも いつまでも回り続けるのであった。


 ~おしまい~

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