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第56話
中村は約束の店の前に立っていた。
時間を確認すると一人頷き、店のドアを押していた。
店員に氏名を告げると2階の個室へと通された。
部屋に中村が姿を現すと、一斉に4つの顔が振り向いた。
田中一郎 真由美夫妻、山本浩一 裕子夫妻。
中村は2人の女性との視線の交換に思わず顔が火照(ほて)り、挨拶の言葉を飲み込んでしまっていた。
「中村さん、どうしたんですか、顔が赤いですよ。さあさあ、他人じゃないんだから」
田中の陽気な声に、中村の顔がいっそう赤くなった。
「うふ、そうよね私達は何とか兄弟なのよね・・いや何とか姉妹なのかな」
「もう 裕子ったら」
真由美が田中と裕子を軽く睨んだ。
その横で山本が裕子の様子を呆れ顔で眺めている。
「すいません、遅くなってしまって」
中村が挨拶を済ませてイスに座ると、ちょうど店員がやってきた。
店員がオーダーを聞き終わると、5人は改まって自己紹介をした。
やがて料理が並び、皆がそれに箸をつけるのを見て田中がゆっくり口を開いた。
元刑事の口からは昔の仲間から仕入れた情報を、“確かなもの”と前置きされ説明され始めた。
神崎が逮捕され、過去の余罪などからかなりの年数を刑務所で過ごすようになる事。
劇場の関係者で逮捕されたのは、神崎一人である事。
そしてあの劇場の舞台に上がっていた女性に関する資料は、全て田中たちが回収したので警察の手には何一つ無い事。
田中の言葉が一段楽するのを見て中村が箸を置いた。
「じゃあ、とりあえず女性のプライバシーなどが外に漏れる心配はもうしなくて良いんですね。間違いありませんよね?」
「うん、それはもう大丈夫です。安心してください」
「そうですか・・良かった・・そうなると・・」
「そうなんです。あとは、それをどうやってみゆきに伝えるか?・・と言う事ですよね」
中村が一旦頷くのを見て、横から真由美が声をかけた。
「中村さんは まだ みゆきさんに全てをカミングアウトする気は無いんですか?・・僕が裕子に告白したように」
山本が裕子の目を見てから聞いてきた。
「えっ ええ、私のところは・・・」
「ごめんなさいね、中村さん。私と真由美がこうなる前に告白しておけば良かったんだけど・・・何だかみゆきの秘密を握ってるみたいで楽しくなっちゃって・・」
(・・・・・)
「・・・それで私と真由美で“ある方法”を考えてみたんです。このままみゆきの辛い顔を見るのは嫌だし、それにみゆきがあの舞台に上がる切っ掛けを作ったのも私ですから・・」
「え ある方法? そんなのがあるんですか。それを聞かせて下さい」
「はい」
裕子は返事をすると隣の山本の顔を見て深く頷いた。
裕子は女達があの舞台に上がるようになった切っ掛けから話し始めた。
元々は自分の借金からあの劇場に上がるようになった事、それを田中夫婦に勧めた事、そしてみゆきにママのところでのバイトを紹介して、それが切っ掛けになった事などを拓也や田沢の名前を出し、また自分達の箱根での調教体験などを交えながら一通り話し終えた。
裕子が一息つくと中村の顔を見た。
「・・・それで 私と真由美で考えた “方法”を聞いてください・・」
中村は黙って頷いていた。
裕子の話に時折田中が質問をし、山本が頷き、中村が聞き返し・・真由美が補足しながら1時間ほどがたった。
「・・・じゃあ どうですか中村さん? 今の話を実行するかどうするかは、後は中村さんしだいですね」
田中が大きな眼を向けて聞いてきた。
「はい。みゆきに自分があの劇場に出ていた証拠は何も無いと言う事を教えるには、誰かが真実を伝えなければいけませんからね。それは私よりも裕子さんと真由美さんが1番いい気がします・・・それに、みゆきには多少のショック療法も必要だと思いますから」
中村の言葉に裕子と真由美が顔を合わせ嬉しそうに笑いあった。
「良かったわ。これが上手くいけば私たち本当の仲良しになれるわ」
「本当、私もみゆきに黙ってるのが辛かったわ・・ねえ 真由美」
「え~ 裕子は結構 楽しんでたじゃないの・・・山本さん、裕子って絶対 “S”ですよね」
2人のやり取りにその場の雰囲気が一気に明るくなり、3人の男達から笑みがこぼれた。
皆の笑い声が収まったところで田中が口を開いた。
「中村さんは これからもみゆきさんの事は“黙認”で通すんですね?」
「ええ そうですね・・私の性癖? 性格? ・・よくわかりませんが黙認が良いみたいです。・・でも」
「でも?」
「でも、黙認も何も神崎が逮捕されたから、もうあの劇場が開く事は無いでしょうし・・・・だからみゆきが舞台に上がる事はありませんよね・・・」
「・・・ふふ さあ どうでしょうかね・・・ところで今日の議題はもう一つありましたよね・・・」
田中の表情が何と言えない嬉しそうな顔になっていた。
「えっ 何でしたっけ?」
「ふふ 今後の事です・・・」
「 ? 」
「ヒントは、あそこのママは神崎がいなくなった今、抜け殻になったという事・・・そしてあそこのスタッフ、田沢や司会やあの若者、彼らは実は神崎に良い印象を持っていなかったという事・・・そして全ての女性の資料は、我々の手元にあるという事・・・」
「・・・・・・・・」
時間を確認すると一人頷き、店のドアを押していた。
店員に氏名を告げると2階の個室へと通された。
部屋に中村が姿を現すと、一斉に4つの顔が振り向いた。
田中一郎 真由美夫妻、山本浩一 裕子夫妻。
中村は2人の女性との視線の交換に思わず顔が火照(ほて)り、挨拶の言葉を飲み込んでしまっていた。
「中村さん、どうしたんですか、顔が赤いですよ。さあさあ、他人じゃないんだから」
田中の陽気な声に、中村の顔がいっそう赤くなった。
「うふ、そうよね私達は何とか兄弟なのよね・・いや何とか姉妹なのかな」
「もう 裕子ったら」
真由美が田中と裕子を軽く睨んだ。
その横で山本が裕子の様子を呆れ顔で眺めている。
「すいません、遅くなってしまって」
中村が挨拶を済ませてイスに座ると、ちょうど店員がやってきた。
店員がオーダーを聞き終わると、5人は改まって自己紹介をした。
やがて料理が並び、皆がそれに箸をつけるのを見て田中がゆっくり口を開いた。
元刑事の口からは昔の仲間から仕入れた情報を、“確かなもの”と前置きされ説明され始めた。
神崎が逮捕され、過去の余罪などからかなりの年数を刑務所で過ごすようになる事。
劇場の関係者で逮捕されたのは、神崎一人である事。
そしてあの劇場の舞台に上がっていた女性に関する資料は、全て田中たちが回収したので警察の手には何一つ無い事。
田中の言葉が一段楽するのを見て中村が箸を置いた。
「じゃあ、とりあえず女性のプライバシーなどが外に漏れる心配はもうしなくて良いんですね。間違いありませんよね?」
「うん、それはもう大丈夫です。安心してください」
「そうですか・・良かった・・そうなると・・」
「そうなんです。あとは、それをどうやってみゆきに伝えるか?・・と言う事ですよね」
中村が一旦頷くのを見て、横から真由美が声をかけた。
「中村さんは まだ みゆきさんに全てをカミングアウトする気は無いんですか?・・僕が裕子に告白したように」
山本が裕子の目を見てから聞いてきた。
「えっ ええ、私のところは・・・」
「ごめんなさいね、中村さん。私と真由美がこうなる前に告白しておけば良かったんだけど・・・何だかみゆきの秘密を握ってるみたいで楽しくなっちゃって・・」
(・・・・・)
「・・・それで私と真由美で“ある方法”を考えてみたんです。このままみゆきの辛い顔を見るのは嫌だし、それにみゆきがあの舞台に上がる切っ掛けを作ったのも私ですから・・」
「え ある方法? そんなのがあるんですか。それを聞かせて下さい」
「はい」
裕子は返事をすると隣の山本の顔を見て深く頷いた。
裕子は女達があの舞台に上がるようになった切っ掛けから話し始めた。
元々は自分の借金からあの劇場に上がるようになった事、それを田中夫婦に勧めた事、そしてみゆきにママのところでのバイトを紹介して、それが切っ掛けになった事などを拓也や田沢の名前を出し、また自分達の箱根での調教体験などを交えながら一通り話し終えた。
裕子が一息つくと中村の顔を見た。
「・・・それで 私と真由美で考えた “方法”を聞いてください・・」
中村は黙って頷いていた。
裕子の話に時折田中が質問をし、山本が頷き、中村が聞き返し・・真由美が補足しながら1時間ほどがたった。
「・・・じゃあ どうですか中村さん? 今の話を実行するかどうするかは、後は中村さんしだいですね」
田中が大きな眼を向けて聞いてきた。
「はい。みゆきに自分があの劇場に出ていた証拠は何も無いと言う事を教えるには、誰かが真実を伝えなければいけませんからね。それは私よりも裕子さんと真由美さんが1番いい気がします・・・それに、みゆきには多少のショック療法も必要だと思いますから」
中村の言葉に裕子と真由美が顔を合わせ嬉しそうに笑いあった。
「良かったわ。これが上手くいけば私たち本当の仲良しになれるわ」
「本当、私もみゆきに黙ってるのが辛かったわ・・ねえ 真由美」
「え~ 裕子は結構 楽しんでたじゃないの・・・山本さん、裕子って絶対 “S”ですよね」
2人のやり取りにその場の雰囲気が一気に明るくなり、3人の男達から笑みがこぼれた。
皆の笑い声が収まったところで田中が口を開いた。
「中村さんは これからもみゆきさんの事は“黙認”で通すんですね?」
「ええ そうですね・・私の性癖? 性格? ・・よくわかりませんが黙認が良いみたいです。・・でも」
「でも?」
「でも、黙認も何も神崎が逮捕されたから、もうあの劇場が開く事は無いでしょうし・・・・だからみゆきが舞台に上がる事はありませんよね・・・」
「・・・ふふ さあ どうでしょうかね・・・ところで今日の議題はもう一つありましたよね・・・」
田中の表情が何と言えない嬉しそうな顔になっていた。
「えっ 何でしたっけ?」
「ふふ 今後の事です・・・」
「 ? 」
「ヒントは、あそこのママは神崎がいなくなった今、抜け殻になったという事・・・そしてあそこのスタッフ、田沢や司会やあの若者、彼らは実は神崎に良い印象を持っていなかったという事・・・そして全ての女性の資料は、我々の手元にあるという事・・・」
「・・・・・・・・」