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第39話
“かおりは 今どこにいるんだ”。
目の前の男 森川に対して何とか吐き出した言葉には、涙声が混ざっていた。
頬(ほお)を引き攣(つ)らせる私の前で、森川が憎たらしいほどの落ち着きを見せている。
「か かおりは あんたと一緒にいるのか・・」
「・・・・・・・」
「しゅっ 出張と言って、まさか一緒に暮らし始めてるんじゃ・・・」
「・・・・・・・・」
目の前で森川は私を見つめていた。
氷のような冷たい目は、私が後どの位で息が止まるのかを観察しているかのようだった。
そのまま しばらく沈黙が続いた後 森川がようやく口を開いた。
「いや 一緒には暮らしてはいない、ただ俺の会社の事務所で缶詰状態にはなってるけどな」
「な 何だってそんな所で・・」
「ふふ 決まってるだろ。そろそろ俺の為に色々働いてもらう為さ。だからかおりからあんたとの仲を終わらせるようにする為にわざわざこっちに呼び戻すように仕向けさせたのさ」
「な 何だと・・・」
「かおりは、あんたが気づかなかっただけでかなり前から立派な俺の奴隷さ。いいかい かおりは俺の言う事なら何でも聞く女になってるんだぜ。俺が犬や浮浪者とオマンコして来いって言ったら喜んでするんだぜ、へっ へへへ」
「うっ うそだ・・・」
「嘘じゃない。かおりは俺の命令で何だってするんだぜ。・・・一ついい事を教えてやるよ」
(・・・・・・・・)
「あんたに届いた写真やビデオをよく見ただろ。あの中でかおりの左手の薬指に指輪があっただろ、あれは俺の奴隷の証なんだよ」
(! !)
「あの指輪の裏にはな番号が打ってあるんだよ。・・かおりは何番目の奴隷だったかな・・・。昔はな、股の所に刺青を彫ったりした時代もあったんだが、今はそんなのは流行らないんだよ。そんな物をしていたら素人相手の商売に支障が出るからな・・・でも“女”が望めば入れてやるんだがな・・」
(う う 嘘だ・・嘘だ・・嘘に決まってる・・)
「ふふ さあ かおりには何の仕事をしてもらおうかな・・・AV、・・デリヘル、・・SMクラブ、・・宴会コンパニオン、・・どれがいいと思う?」
(・・・・・・・・)
しばらく黙り込んでいた森川は、私の顔を見つめながらゆっくりと口を開いた。
「ふふ いいかい・・俺が考えてるのはな・・・高級コールガールだよ。」
「なっ!」
「今は結構な熟女ブームだ。俺の言う通り化粧を変え、髪型を変え、俺の選んだ洋服で着飾って、あと立ち振る舞い方を覚えさせて最高級売春婦に仕上げてやる」
(・・・・・・)
「へへへ あんたがいくら金を積んだって犯(や)れない“女”だよ・・・どうだい」
「・・・・・・うっ うそだ・・そんな・・・そんな事・・信じない、・・・信じてたまるか・・・」
「・・・・・そうだよな。そう言うと思ってたよ」
(・・・・・・・・)
再び森川が黙り込み、私の顔を哀れみの目で見ると再び口を開いた。
「かおりはあんたの家にいる」
「えっ?」
私は予期せぬ森川の言葉に一瞬目を見開いた。
そしてそんな私の顔を見ながら話し続けた。
「本当はこのホテルの部屋でかおりからあんたへ、最後の決別の言葉を言わせようと思ったんだが・・・。それよりかやっぱり思い出の詰まったあの家での方がいいだろうと思い直してな・・」
「くっ・・・・くくく・・」
「かおりもその方が踏ん切りがつくだろう・・・」
「き ・・き 貴様・・・」
「かおりはあんたに電話を入れた後 すぐここを出てな・・・。今頃あんた達の家“だった”場所であんたが来るのを待ってるだろ・・」
「・・・・・・・」
「さあ 行ってやりな、そして自分のその目と耳で確かめてきな。・・俺の言った事が本当かどうか・・」
(・・・・・・・・)
私は森川の言葉を聞いてゆっくり立ち上がっていた。
そしてよろめく様に廊下に出るとふら付きながらドアの方角へと歩いていった。
エレベーターに乗り、それが下がり始めると私は自分が今“闇”の奥へ沈んでいくような気分になった。
そう “淫欲の闇”の奥へ・・・・。
ホテルのロビーを抜け私は駅へと歩いていた。
ボサボサの髪の毛にやつれた顔・・・街行く人は私を“ゾンビ”と思ったかも知れない。
私は人込みを掻き分けて歩き続けた。
私を見る人々の顔はいつしか花岡であり、小酒井であり、そして奥村の顔であった。
私はそいつらを掻き分けて駅へとたどり着いた。
(かおり、かおり、かおり・・・)
私は妻の名前を呼びながら電車に揺られていた。
そして気づいた時 私は家の前に立ってその佇まいを見上げていた。
目の前の男 森川に対して何とか吐き出した言葉には、涙声が混ざっていた。
頬(ほお)を引き攣(つ)らせる私の前で、森川が憎たらしいほどの落ち着きを見せている。
「か かおりは あんたと一緒にいるのか・・」
「・・・・・・・」
「しゅっ 出張と言って、まさか一緒に暮らし始めてるんじゃ・・・」
「・・・・・・・・」
目の前で森川は私を見つめていた。
氷のような冷たい目は、私が後どの位で息が止まるのかを観察しているかのようだった。
そのまま しばらく沈黙が続いた後 森川がようやく口を開いた。
「いや 一緒には暮らしてはいない、ただ俺の会社の事務所で缶詰状態にはなってるけどな」
「な 何だってそんな所で・・」
「ふふ 決まってるだろ。そろそろ俺の為に色々働いてもらう為さ。だからかおりからあんたとの仲を終わらせるようにする為にわざわざこっちに呼び戻すように仕向けさせたのさ」
「な 何だと・・・」
「かおりは、あんたが気づかなかっただけでかなり前から立派な俺の奴隷さ。いいかい かおりは俺の言う事なら何でも聞く女になってるんだぜ。俺が犬や浮浪者とオマンコして来いって言ったら喜んでするんだぜ、へっ へへへ」
「うっ うそだ・・・」
「嘘じゃない。かおりは俺の命令で何だってするんだぜ。・・・一ついい事を教えてやるよ」
(・・・・・・・・)
「あんたに届いた写真やビデオをよく見ただろ。あの中でかおりの左手の薬指に指輪があっただろ、あれは俺の奴隷の証なんだよ」
(! !)
「あの指輪の裏にはな番号が打ってあるんだよ。・・かおりは何番目の奴隷だったかな・・・。昔はな、股の所に刺青を彫ったりした時代もあったんだが、今はそんなのは流行らないんだよ。そんな物をしていたら素人相手の商売に支障が出るからな・・・でも“女”が望めば入れてやるんだがな・・」
(う う 嘘だ・・嘘だ・・嘘に決まってる・・)
「ふふ さあ かおりには何の仕事をしてもらおうかな・・・AV、・・デリヘル、・・SMクラブ、・・宴会コンパニオン、・・どれがいいと思う?」
(・・・・・・・・)
しばらく黙り込んでいた森川は、私の顔を見つめながらゆっくりと口を開いた。
「ふふ いいかい・・俺が考えてるのはな・・・高級コールガールだよ。」
「なっ!」
「今は結構な熟女ブームだ。俺の言う通り化粧を変え、髪型を変え、俺の選んだ洋服で着飾って、あと立ち振る舞い方を覚えさせて最高級売春婦に仕上げてやる」
(・・・・・・)
「へへへ あんたがいくら金を積んだって犯(や)れない“女”だよ・・・どうだい」
「・・・・・・うっ うそだ・・そんな・・・そんな事・・信じない、・・・信じてたまるか・・・」
「・・・・・そうだよな。そう言うと思ってたよ」
(・・・・・・・・)
再び森川が黙り込み、私の顔を哀れみの目で見ると再び口を開いた。
「かおりはあんたの家にいる」
「えっ?」
私は予期せぬ森川の言葉に一瞬目を見開いた。
そしてそんな私の顔を見ながら話し続けた。
「本当はこのホテルの部屋でかおりからあんたへ、最後の決別の言葉を言わせようと思ったんだが・・・。それよりかやっぱり思い出の詰まったあの家での方がいいだろうと思い直してな・・」
「くっ・・・・くくく・・」
「かおりもその方が踏ん切りがつくだろう・・・」
「き ・・き 貴様・・・」
「かおりはあんたに電話を入れた後 すぐここを出てな・・・。今頃あんた達の家“だった”場所であんたが来るのを待ってるだろ・・」
「・・・・・・・」
「さあ 行ってやりな、そして自分のその目と耳で確かめてきな。・・俺の言った事が本当かどうか・・」
(・・・・・・・・)
私は森川の言葉を聞いてゆっくり立ち上がっていた。
そしてよろめく様に廊下に出るとふら付きながらドアの方角へと歩いていった。
エレベーターに乗り、それが下がり始めると私は自分が今“闇”の奥へ沈んでいくような気分になった。
そう “淫欲の闇”の奥へ・・・・。
ホテルのロビーを抜け私は駅へと歩いていた。
ボサボサの髪の毛にやつれた顔・・・街行く人は私を“ゾンビ”と思ったかも知れない。
私は人込みを掻き分けて歩き続けた。
私を見る人々の顔はいつしか花岡であり、小酒井であり、そして奥村の顔であった。
私はそいつらを掻き分けて駅へとたどり着いた。
(かおり、かおり、かおり・・・)
私は妻の名前を呼びながら電車に揺られていた。
そして気づいた時 私は家の前に立ってその佇まいを見上げていた。