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第14話
アパートに戻った私は、郵便物とメールに“K”からの物がないのを確認すると水を一杯飲み、ベットに腰を降ろした。
疲れの溜まっているはずの頭が、なぜだか回り始めていた。
(花岡がなぜ あのヤクザと・・)
私の脳裏には先ほどの光景が浮かんでいた。
親しげに顔をつき合わせながら笑みを浮かべる二人の顔・・・。
あの同じような卑下(ひげ)た笑みは、まるで二人が同じ趣味、同じ趣向の元、盛り上がっている姿だったのではないか・・・。
そんな事を考えていると、店で言った花岡のあの言葉にも意味があったのではないかと思えてきた。
『・・主婦の浮気は多いらしいぜ、女は女優だからな・・』
『・・かおりさんが風俗ででも働いてくれればな・・』
(あいつ・・・変ったな・・)
(昔から下ネタ好きだったけど・・・・あんな表情を見たのは初めてだ・・)
しばらく私の頭の中からは、花岡がヤクザと喋る姿が消えなかった。
(それに あのヤクザ・・・・一体なぜ 花岡と・・・・)
この夜 私が眠りにつけたのは何時頃だったのだろうか・・・。
次の日 眠い目を擦りながら出社すると、私は花岡の姿を捜していた。
アパートを出るとき、ヤクザの姿を見る事がなかった事が私の気持ちを少しだけ楽にしてくれていた。
業務の始まった私が花岡の姿を見つける事ができたのは昼頃だった。
「おい 近藤、夕べは楽しかったな・・・・」
喫煙室でタバコを吸っていた私の所に花岡がやって来た。
「・・・・・・・・」
「ん? どうしたんだよ近藤、・・難しい顔をして」
私はタバコの火を消すと、小柄な近藤の手を取り部屋の隅へと連れて行った。
「おい 花岡、・・あのヤクザみたいな男は誰だ・・まさか知り合いじゃないだろうな」
私の言葉に花岡の瞳が大きく見開かれていくのがわかった。
「なっ 何だよ・・・見てたのか・・」
「ああ・・・・」
「んん・・いや・・・おっ お前が店を出ると あっ あの男が寄ってきたんだよ・・・それで 俺に女を買わないかって・・・」
「・・・本当か」
「ああ 本当だ・・・俺は断ったけどな・・・」
私は花岡の言葉にも疑惑の目を向けていた。
花岡が先ほどから視線を下に向けながら話していたからだ。
気まずい時にするこいつの癖・・・。
しばらく沈黙が続くと、花岡は本社に戻る電車の時間があるからとその場を逃げるように立ち去った。
私はその後姿を黙って見送っていた。
その姿を見ていると、頭の中に別の疑惑が湧いてきた。
(花岡弘治・・・花岡コウジ・・・コウジ・・・コウジの“K”)
(! まさか)
いつの間にか私の身体を妄想の黒い雲が包んでいた。
この日の仕事を終えた私は、黒い妄想を抱えながら帰宅の途についた。
歩きながら妻のかおりに電話を入れてみた。
Kからコラ画像が届いてから毎日決まった時間に電話を入れようと思っていたのだ。
「もしもし かおり」
『あ あなた、・・・・今 ど どちらから?』
「うん 今はアパートに帰る途中」
電話口のかおりの声はどことなく強張っていて、それから続く会話も落ち着かない様子だった。
『・・・じゃあ あなた今度戻れるのは当分先なのね・・・』
「うん ごめん・・・仕事が忙しくて・・・」
『・・そうなんだ・・・それとね・・・いや 何でもないわ・・・』
「・・・どうしたんだよ、・・・はは~ ひょっとして俺の浮気が心配なのか~」
私はあえて明るく聞いてみた。
『・・・・・・・』
「・・・お おい・・どうしたんだよ かおり・・」
『・・・う ううん 何でもないわ・・・あなた これからも身体気をつけてね・・・』
「・・ああ・・うん・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
『じゃあ そろそろ切ります・・・』
「・・う・・うん・・・じゃあ・・」
私は切れた携帯をしばらく見つめていた。
(・・・これからも・・って)
(まるで 2度と会えないみたいな言い方じゃないか・・)
そんな事を考えている私の目にアパートが見えてきた。
疲れの溜まっているはずの頭が、なぜだか回り始めていた。
(花岡がなぜ あのヤクザと・・)
私の脳裏には先ほどの光景が浮かんでいた。
親しげに顔をつき合わせながら笑みを浮かべる二人の顔・・・。
あの同じような卑下(ひげ)た笑みは、まるで二人が同じ趣味、同じ趣向の元、盛り上がっている姿だったのではないか・・・。
そんな事を考えていると、店で言った花岡のあの言葉にも意味があったのではないかと思えてきた。
『・・主婦の浮気は多いらしいぜ、女は女優だからな・・』
『・・かおりさんが風俗ででも働いてくれればな・・』
(あいつ・・・変ったな・・)
(昔から下ネタ好きだったけど・・・・あんな表情を見たのは初めてだ・・)
しばらく私の頭の中からは、花岡がヤクザと喋る姿が消えなかった。
(それに あのヤクザ・・・・一体なぜ 花岡と・・・・)
この夜 私が眠りにつけたのは何時頃だったのだろうか・・・。
次の日 眠い目を擦りながら出社すると、私は花岡の姿を捜していた。
アパートを出るとき、ヤクザの姿を見る事がなかった事が私の気持ちを少しだけ楽にしてくれていた。
業務の始まった私が花岡の姿を見つける事ができたのは昼頃だった。
「おい 近藤、夕べは楽しかったな・・・・」
喫煙室でタバコを吸っていた私の所に花岡がやって来た。
「・・・・・・・・」
「ん? どうしたんだよ近藤、・・難しい顔をして」
私はタバコの火を消すと、小柄な近藤の手を取り部屋の隅へと連れて行った。
「おい 花岡、・・あのヤクザみたいな男は誰だ・・まさか知り合いじゃないだろうな」
私の言葉に花岡の瞳が大きく見開かれていくのがわかった。
「なっ 何だよ・・・見てたのか・・」
「ああ・・・・」
「んん・・いや・・・おっ お前が店を出ると あっ あの男が寄ってきたんだよ・・・それで 俺に女を買わないかって・・・」
「・・・本当か」
「ああ 本当だ・・・俺は断ったけどな・・・」
私は花岡の言葉にも疑惑の目を向けていた。
花岡が先ほどから視線を下に向けながら話していたからだ。
気まずい時にするこいつの癖・・・。
しばらく沈黙が続くと、花岡は本社に戻る電車の時間があるからとその場を逃げるように立ち去った。
私はその後姿を黙って見送っていた。
その姿を見ていると、頭の中に別の疑惑が湧いてきた。
(花岡弘治・・・花岡コウジ・・・コウジ・・・コウジの“K”)
(! まさか)
いつの間にか私の身体を妄想の黒い雲が包んでいた。
この日の仕事を終えた私は、黒い妄想を抱えながら帰宅の途についた。
歩きながら妻のかおりに電話を入れてみた。
Kからコラ画像が届いてから毎日決まった時間に電話を入れようと思っていたのだ。
「もしもし かおり」
『あ あなた、・・・・今 ど どちらから?』
「うん 今はアパートに帰る途中」
電話口のかおりの声はどことなく強張っていて、それから続く会話も落ち着かない様子だった。
『・・・じゃあ あなた今度戻れるのは当分先なのね・・・』
「うん ごめん・・・仕事が忙しくて・・・」
『・・そうなんだ・・・それとね・・・いや 何でもないわ・・・』
「・・・どうしたんだよ、・・・はは~ ひょっとして俺の浮気が心配なのか~」
私はあえて明るく聞いてみた。
『・・・・・・・』
「・・・お おい・・どうしたんだよ かおり・・」
『・・・う ううん 何でもないわ・・・あなた これからも身体気をつけてね・・・』
「・・ああ・・うん・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
『じゃあ そろそろ切ります・・・』
「・・う・・うん・・・じゃあ・・」
私は切れた携帯をしばらく見つめていた。
(・・・これからも・・って)
(まるで 2度と会えないみたいな言い方じゃないか・・)
そんな事を考えている私の目にアパートが見えてきた。