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第10話
今日届いた2枚目のCDの中の画像を全て見終えて、私はイスに座ったまましばらく考え込んでいた。
登場したのは何処にでもいそうな中年の女性・・・身長、体型は確かに妻のかおりにそっくりだ。
それに身体の各パーツは、同じ体型の女性なら皆 似ているのではないか・・・。
ひょっとして、これは無差別に送りつける手の込んだエロビデオのセールスなのではないか?
近いうちに3枚目が届き、内容が過激さを増し、最後に続きを見たければ ×××××円で購入可能です・・・・そんな “おち”が来るのではないか。
そんな考えにたどり着くと、どことなく気分が楽になってきた。
私の妄想が画像の中の女性をかおりと同化させたのに違いない、私はそう結論付けると “K” に返事を出してやろうと思った。
《あなたは 何処の誰ですか? どこで私のメールアドレスを知ったかわかりませんが、アダルトビデオのセールスならお断りですので》
私はその文面を読み直してもう少し嫌味の一言でも書き足そうと思ったが、余計な事はいいかと一人納得し画面の“送信”をクリックした。
しばらくして私はかおりに電話を入れてみた。
『はい かおりです・・』
「もしもし 今日は出るの早かったね」
『あ 貴方。私も丁度 電話しようと思ってたの・・・昼間 奥村さんに電話して仕事の事をお願いしたの』
「はは さすが早いね、それでどうなった?」
『ええ それで奥村さん すぐに連絡を取ってくれて明後日面接になったのよ』
「へ~そうなんだ、それでどんな会社のどんな仕事なの?」
『う~ん それがまだよくわからないの・・・営業事務の仕事って言うだけで・・』
「・・・・そうか でも かおりに事務なんか出来るかな」
私の言葉に意地悪な響(ひびき)を感じたのだろう、かおりも少し剥(む)きになって言い返した。
『大丈夫だって、自身あるんだから・・・それに今のファミレスはスカートが短くて男の人の視線が気になるんだもの・・・それと歩きっぱなしで腰も痛くなっちゃうし・・』
「はは 男の客はみんな、かおりの大きな胸とお尻に目がいっちゃうからな」
『もう何よ “ゆう”ったら』
(!・・・・・ふふ “ゆう”・・か)
それは私たちが学生時代に付き合い始めた頃から、結婚して長男が小学校の高学年になるまで、かおりが使っていた私の呼び方だった。
子供が大きくなってからは、その呼び方では可笑しいだろう と言う事と、妻には“あなた”と呼んでもらいたくて、その言い方は止めたのだった。
子供が大きくなり、それに併せて妻が歳を重ねても “おばさん”にはなって欲しくない。
いつまでも私のために自分を磨いていてもらいたい・・・身も心も。
妻が“あなた”と呼ぶ事によって、常に上品で、貞淑な女性でいてもらいたい、私はいつしかそう思っていたのだ。
『もしもし・・もしもし・・あなた』
「・・あっ おお、ぼおっとしてたよ・・」
『もう 大丈夫? ・・・疲れてるんじゃないの・・』
「いや・・」
その後しばらく私達は子供達の事を話し、そして電話を切った。
離れて暮らしてみて、妻も私と遠距離恋愛でもしている気分になっているのだろうか・・・“ゆう” あの呼び名がそれを現していたのではないか。
明るいかおりの様子に、心の中に沸いていた疑惑の黒い雲が少しずつ薄らいでいくのがわかった。
(そうさ やっぱり かおりがあんな写真の被写体なんかになるはずがないじゃないか・・)
その夜 私は久しぶりにぐっすり眠る事が出来た。
それから2日後 この日はかおりの面接の日だった。
仕事を終えてアパートに帰った私は、あれ以来届いていなかった “K” からのメールと3枚目のCDに自分の考えの甘かった事を思い知らされた。
ポストにあった茶封筒を確認した時点で “K”からのメールが来ている事は想像できていた。
私はパソコンが立ち上がると直ぐにメールを確認した。
件名は “K”。
本文は初めてそれなりの文章が書かれていた。
《初めての返信ありがとうございます。 アダルトビデオのセールスではありません。 貴方がお金を払ってでも欲しければCDもDVDもお譲りしても良いとおっしゃってます》
(DVD? ・・・・動画もあるのか)
(それに “おっしゃってます”・・・・何だかおかしな言い方だな・・)
私はそんな事を考えながら、茶封筒の封を切っていた。
そこにはいつものA4サイズのコピー用紙が1枚入っていた。
~一人寝の貴方に~ 『ちょっと遊んでみました』
(・・・遊んでみました・・・今度は何なんだ・・・)
私は少し強張った表情のまま、中にあったCDをセットした。
画面に現れた物は、今までと同様40枚程度の画像だった。
1枚目の画像にいきなり頭を殴られたようなショックを受けた。
昼間の繁華街の路地で、女がコートを両手で大きく広げていた。
コートの下は全裸、大きな2つの乳房、そして股間には黒い翳(かげ)り。
そして 顔は・・・・忘れるはずが無い、妻のかおりの笑顔があった。
私はその画像に被(かぶ)りつきながら、身体の震えを止めることが出来なかった。
心臓の音が耳鳴りのように鳴り響き、瞳が大きく見開かれ、目の前が揺れ始めた。
マウスに添えた右手も今にも痙攣を起こしそうだった。
(なっ なぜ・・・・)
登場したのは何処にでもいそうな中年の女性・・・身長、体型は確かに妻のかおりにそっくりだ。
それに身体の各パーツは、同じ体型の女性なら皆 似ているのではないか・・・。
ひょっとして、これは無差別に送りつける手の込んだエロビデオのセールスなのではないか?
近いうちに3枚目が届き、内容が過激さを増し、最後に続きを見たければ ×××××円で購入可能です・・・・そんな “おち”が来るのではないか。
そんな考えにたどり着くと、どことなく気分が楽になってきた。
私の妄想が画像の中の女性をかおりと同化させたのに違いない、私はそう結論付けると “K” に返事を出してやろうと思った。
《あなたは 何処の誰ですか? どこで私のメールアドレスを知ったかわかりませんが、アダルトビデオのセールスならお断りですので》
私はその文面を読み直してもう少し嫌味の一言でも書き足そうと思ったが、余計な事はいいかと一人納得し画面の“送信”をクリックした。
しばらくして私はかおりに電話を入れてみた。
『はい かおりです・・』
「もしもし 今日は出るの早かったね」
『あ 貴方。私も丁度 電話しようと思ってたの・・・昼間 奥村さんに電話して仕事の事をお願いしたの』
「はは さすが早いね、それでどうなった?」
『ええ それで奥村さん すぐに連絡を取ってくれて明後日面接になったのよ』
「へ~そうなんだ、それでどんな会社のどんな仕事なの?」
『う~ん それがまだよくわからないの・・・営業事務の仕事って言うだけで・・』
「・・・・そうか でも かおりに事務なんか出来るかな」
私の言葉に意地悪な響(ひびき)を感じたのだろう、かおりも少し剥(む)きになって言い返した。
『大丈夫だって、自身あるんだから・・・それに今のファミレスはスカートが短くて男の人の視線が気になるんだもの・・・それと歩きっぱなしで腰も痛くなっちゃうし・・』
「はは 男の客はみんな、かおりの大きな胸とお尻に目がいっちゃうからな」
『もう何よ “ゆう”ったら』
(!・・・・・ふふ “ゆう”・・か)
それは私たちが学生時代に付き合い始めた頃から、結婚して長男が小学校の高学年になるまで、かおりが使っていた私の呼び方だった。
子供が大きくなってからは、その呼び方では可笑しいだろう と言う事と、妻には“あなた”と呼んでもらいたくて、その言い方は止めたのだった。
子供が大きくなり、それに併せて妻が歳を重ねても “おばさん”にはなって欲しくない。
いつまでも私のために自分を磨いていてもらいたい・・・身も心も。
妻が“あなた”と呼ぶ事によって、常に上品で、貞淑な女性でいてもらいたい、私はいつしかそう思っていたのだ。
『もしもし・・もしもし・・あなた』
「・・あっ おお、ぼおっとしてたよ・・」
『もう 大丈夫? ・・・疲れてるんじゃないの・・』
「いや・・」
その後しばらく私達は子供達の事を話し、そして電話を切った。
離れて暮らしてみて、妻も私と遠距離恋愛でもしている気分になっているのだろうか・・・“ゆう” あの呼び名がそれを現していたのではないか。
明るいかおりの様子に、心の中に沸いていた疑惑の黒い雲が少しずつ薄らいでいくのがわかった。
(そうさ やっぱり かおりがあんな写真の被写体なんかになるはずがないじゃないか・・)
その夜 私は久しぶりにぐっすり眠る事が出来た。
それから2日後 この日はかおりの面接の日だった。
仕事を終えてアパートに帰った私は、あれ以来届いていなかった “K” からのメールと3枚目のCDに自分の考えの甘かった事を思い知らされた。
ポストにあった茶封筒を確認した時点で “K”からのメールが来ている事は想像できていた。
私はパソコンが立ち上がると直ぐにメールを確認した。
件名は “K”。
本文は初めてそれなりの文章が書かれていた。
《初めての返信ありがとうございます。 アダルトビデオのセールスではありません。 貴方がお金を払ってでも欲しければCDもDVDもお譲りしても良いとおっしゃってます》
(DVD? ・・・・動画もあるのか)
(それに “おっしゃってます”・・・・何だかおかしな言い方だな・・)
私はそんな事を考えながら、茶封筒の封を切っていた。
そこにはいつものA4サイズのコピー用紙が1枚入っていた。
~一人寝の貴方に~ 『ちょっと遊んでみました』
(・・・遊んでみました・・・今度は何なんだ・・・)
私は少し強張った表情のまま、中にあったCDをセットした。
画面に現れた物は、今までと同様40枚程度の画像だった。
1枚目の画像にいきなり頭を殴られたようなショックを受けた。
昼間の繁華街の路地で、女がコートを両手で大きく広げていた。
コートの下は全裸、大きな2つの乳房、そして股間には黒い翳(かげ)り。
そして 顔は・・・・忘れるはずが無い、妻のかおりの笑顔があった。
私はその画像に被(かぶ)りつきながら、身体の震えを止めることが出来なかった。
心臓の音が耳鳴りのように鳴り響き、瞳が大きく見開かれ、目の前が揺れ始めた。
マウスに添えた右手も今にも痙攣を起こしそうだった。
(なっ なぜ・・・・)