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第25話
私は公園のベンチに腰を降ろし、青白い顔で俯(うつむ)いていた。
誰かが私の姿を見ていれば直ぐにでも救急車を呼んだのではないか。
そんな私に声をかけたのは、懐かしいはずの男の声だった。
「奥村・・・・」
何とかその声を絞り出した私の前に、巨漢の男がこちらを向いて立っていた。
「へへ近藤 あの色男が台無しだな」
「・・・・・・・クソ」
「お前 小酒井の親父の所へ行ったんだって・・・それでどこまで聞いたんだ」
「・・・お前が教えたのか、俺が小酒井の所へ行くって」
「ん・・違うな、お前が小酒井の家を出た後に俺に電話があったんだよ、あの親父から。・・・お前があまりにも青白い顔して夢遊病患者みたいに出て行ったから自殺でもするんじゃないかって・・・。」
「へっ・・へん 自殺なんかするもんか・・・ちょっと具合が悪くなっただけさ・・・」
「ふん そうか 心配して来て見て損したな・・・それでお前が小酒井の所へ向かうだろうって言ったのは花岡だ」
「なに・・花岡が・・・・一体どうなってるんだ、お前たち3人は知り合いだったのか・・・・」
「・・・・聞きたいか」
「・・・・ああ」
「・・・そうか・・・でもその事は彼女から直接聞けよ」
「・・・彼女・・・・彼女って・・・」
「ふふ かおりちゃんだよ」
「なに・・・かおりからだと・・・」
「ああ そうだ・・」
「いいか 俺はなあ かおりを捜す為に帰ってきたんだぞ・・・・それなのに本人から聞けって・・・」
「ふふ かおりちゃんなら家に居るんじゃないのか」
「なっ 何だとー」
「・・・・・・」
「おい奥村 何でお前にそんな事がわかる、・・・・やっぱりお前が“K”なのか」
「・・・ふふ Kか・・・さあ 知らんな・・」
「クッ クソ・・・」
「とにかく一回家に帰って見ろよ・・・何か分かるんじゃないか」
いつの間にか私の吐き気も眩暈(めまい)も治まっていた。
負のパワーが力を与えたのか、目の前の大男を睨み付けると私はゆっくりと立ち上がった。
「奥村 お前と会うのはもうこれっきりだ・・・最後に教えろ・・なぜお前は変った・・何がお前を変えたんだ・・・いや お前だけじゃない・・・俺の同僚の花岡、それに小酒井の親父もそうだろ・・・何でみんな変るんだよ・・・」
「・・・・・・・近藤 お前まだ分からないのか・・・かおりちゃんだよ・・お前がかおりちゃんって言う可愛らしくて、貞淑で良妻って言われる女を嫁にしてるからだよ」
「なっ!!」
「俺たちはな、みんな犯(や)りたかったんだよ、かおりちゃんと。・・・ずっと昔から・・・そんな欲望を腹に溜め込んでたんだよ。俺もそうだ、それに花岡だって、小酒井だって・・」
「・・・・・・・」
「たまたまそんな同じ気持ちを抱えてた3人が偶然出会ったんだよ・・・・あの人の元でな」
「!・・・あの人・・・あの人って誰だ」
「・・・それも かおりちゃんの口から聞け。・・・・それと近藤 もう一つ言っておく、よく聞け・・・欲望を溜め込んでるのは男だけじゃないぜ・・・女だってな・・・お前もビデオを見たんだろ」
「グッ グググググ」
「ふっ ふふ・・あのビデオを信じる信じないはお前の勝手だ・・・でも次のビデオを見たらどうかな・・・へっ へへ」
「・・・・・・・」
「ふん じゃあ俺はそろそろ行くぜ、又会おうな・・・・今度はビデオの中で」
「!」
私は立ち上がったまま奥村の巨漢の後ろ姿を見つめていた。
頭の中で奥村の後ろ姿は小酒井に変り、花岡に変り・・・・そして見ず知らずの男の後ろ姿に・・・・・。
(もう一人いる・・・・)
(やっぱりもう一人いたんだ・・・)
花岡や小酒井や奥村がかおりを別の世界に連れて行く事なんてやっぱり出来るはずがない・・・・。
あいつらは“その男”に導かれただけだ。
その男に導かれ・・・そして弾けただけだ。
(とにかく一度家に戻ろう・・・・)
(そこに かおりがいるかも知れない・・・そしてもう一人の“その男”も・・・かおりが“ご主人様”と呼んだその男も)
誰かが私の姿を見ていれば直ぐにでも救急車を呼んだのではないか。
そんな私に声をかけたのは、懐かしいはずの男の声だった。
「奥村・・・・」
何とかその声を絞り出した私の前に、巨漢の男がこちらを向いて立っていた。
「へへ近藤 あの色男が台無しだな」
「・・・・・・・クソ」
「お前 小酒井の親父の所へ行ったんだって・・・それでどこまで聞いたんだ」
「・・・お前が教えたのか、俺が小酒井の所へ行くって」
「ん・・違うな、お前が小酒井の家を出た後に俺に電話があったんだよ、あの親父から。・・・お前があまりにも青白い顔して夢遊病患者みたいに出て行ったから自殺でもするんじゃないかって・・・。」
「へっ・・へん 自殺なんかするもんか・・・ちょっと具合が悪くなっただけさ・・・」
「ふん そうか 心配して来て見て損したな・・・それでお前が小酒井の所へ向かうだろうって言ったのは花岡だ」
「なに・・花岡が・・・・一体どうなってるんだ、お前たち3人は知り合いだったのか・・・・」
「・・・・聞きたいか」
「・・・・ああ」
「・・・そうか・・・でもその事は彼女から直接聞けよ」
「・・・彼女・・・・彼女って・・・」
「ふふ かおりちゃんだよ」
「なに・・・かおりからだと・・・」
「ああ そうだ・・」
「いいか 俺はなあ かおりを捜す為に帰ってきたんだぞ・・・・それなのに本人から聞けって・・・」
「ふふ かおりちゃんなら家に居るんじゃないのか」
「なっ 何だとー」
「・・・・・・」
「おい奥村 何でお前にそんな事がわかる、・・・・やっぱりお前が“K”なのか」
「・・・ふふ Kか・・・さあ 知らんな・・」
「クッ クソ・・・」
「とにかく一回家に帰って見ろよ・・・何か分かるんじゃないか」
いつの間にか私の吐き気も眩暈(めまい)も治まっていた。
負のパワーが力を与えたのか、目の前の大男を睨み付けると私はゆっくりと立ち上がった。
「奥村 お前と会うのはもうこれっきりだ・・・最後に教えろ・・なぜお前は変った・・何がお前を変えたんだ・・・いや お前だけじゃない・・・俺の同僚の花岡、それに小酒井の親父もそうだろ・・・何でみんな変るんだよ・・・」
「・・・・・・・近藤 お前まだ分からないのか・・・かおりちゃんだよ・・お前がかおりちゃんって言う可愛らしくて、貞淑で良妻って言われる女を嫁にしてるからだよ」
「なっ!!」
「俺たちはな、みんな犯(や)りたかったんだよ、かおりちゃんと。・・・ずっと昔から・・・そんな欲望を腹に溜め込んでたんだよ。俺もそうだ、それに花岡だって、小酒井だって・・」
「・・・・・・・」
「たまたまそんな同じ気持ちを抱えてた3人が偶然出会ったんだよ・・・・あの人の元でな」
「!・・・あの人・・・あの人って誰だ」
「・・・それも かおりちゃんの口から聞け。・・・・それと近藤 もう一つ言っておく、よく聞け・・・欲望を溜め込んでるのは男だけじゃないぜ・・・女だってな・・・お前もビデオを見たんだろ」
「グッ グググググ」
「ふっ ふふ・・あのビデオを信じる信じないはお前の勝手だ・・・でも次のビデオを見たらどうかな・・・へっ へへ」
「・・・・・・・」
「ふん じゃあ俺はそろそろ行くぜ、又会おうな・・・・今度はビデオの中で」
「!」
私は立ち上がったまま奥村の巨漢の後ろ姿を見つめていた。
頭の中で奥村の後ろ姿は小酒井に変り、花岡に変り・・・・そして見ず知らずの男の後ろ姿に・・・・・。
(もう一人いる・・・・)
(やっぱりもう一人いたんだ・・・)
花岡や小酒井や奥村がかおりを別の世界に連れて行く事なんてやっぱり出来るはずがない・・・・。
あいつらは“その男”に導かれただけだ。
その男に導かれ・・・そして弾けただけだ。
(とにかく一度家に戻ろう・・・・)
(そこに かおりがいるかも知れない・・・そしてもう一人の“その男”も・・・かおりが“ご主人様”と呼んだその男も)