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第8話
私は次から次へと写真を観察していた。
同じ人物に間違いないその女性の画像は、場所や服装を変え私の目を釘づけにした。
しかし その女性は写真の中で決して顔を見せる事はなかった。
買い物をしている後姿、公園を歩く後姿、町を歩く後姿。
私はそれらの写真が盗撮された物かと思ったが、次の1枚でその考えが間違っていた事がわかった。
どこかの繁華街だろうか、スナックなどの店の看板が見え隠れする路地で、その女性が初めて正面を向いていた。
しかし 右手に持った水色の傘が、そのつゆ先で口元までを隠していた。
次の画像は同じ路地であろう、閉じた傘を右手に持ち、左手は軽く腰に添え、どこと無くぎこちないポーズをとっている写真だった・・・そしてその写真も首から下しか写されていなかった。
私は首から下を正面から写した2枚の写真を何度も見直してみた。
(・・体型は似てる・・かおりに・・)
服装に見覚えは無いが、身長155cm位で豊満な胸の膨(ふく)らみは私の記憶の中の妻と一致していた。
私はその画像の中の女性の左手をズームUPした。
妻は何年か前からサイズが合わなくなったと、いつも結婚指輪を外していたのだった。
薄っすらとぼやけた左手の薬指には、光る物が見えていた。
(指輪をしている・・・じゃあ 人違いか・・)
私はどこか安堵した気持ちで次の写真をクリックした。
次の写真に私は少しドキリとした。
先ほどの2枚と同じ場所で、その女性が両手でスカートの裾(すそ)を持って、膝頭(ひざがしら)の少し上、太ももの辺りまでそれを持ち上げていたのだ・・当然顔は写されていない・・・。
このアパートで一人暮らしを始めてから、よく覗くようにうなったエロサイトの中に、露出投稿画像の掲示板がある事は知っていた。
私がこの写真にドキリとしたのは、そこが人通りのある昼間の繁華街だと言う事と、その女性の雰囲気が妻のかおりに似ていたと言う事だった。
(・・・ひょっとしてこの繁華街の雰囲気は、まさか○○駅の南口か・・・)
私はその女性の姿もそうだが、後ろに写る店の雰囲気や景色を真剣に見ていた。
頭の中の整理が着く前に次の写真にいこうとして、それが最後の画像だった事に気が付いた。
何とも言えない気分のまま、もう一度最初から写真を見ようとカーソルを画面にあてた時、携帯が鳴り響いた。
イスから飛び上がりそうに驚いた私は、震える携帯を手に取った。
そこには見慣れた番号とかおりの名前があった。
私は一呼吸して携帯のスイッチを押した。
「はい もしもし・・・」
『・・・・・・・・・・・・・』
「もしもし・・俺だけど・・・・かおり?」
『・・・・・・・・・あっ あ あ』
「?・・・もしもし もしもし・・」
『・・あっ あなた?・・もしもし』
「かおりか、どうしたんだい」
『ごめんなさい・・電波が悪くて・・・それでさっき電話くれた? デパートの地下にいたから繋(つな)がらなかったみたい』
「そうか 心配したぞ。俺は今アパート、何とか無事に着いたから」
『そう 良かった・・・』
「・・・・・」
『・・・・・』
「かおり・・今はどこ・・家? 何だか凄く息が乱れて苦しそうなんだけど」
『えっ・・・ううん 今駅から家に向かって歩いてるところ・・・何だか急いで歩いてたら・・・あっ ああ・・い 息が切れちゃって・・』
「・・大丈夫かよ・・・・それで さっき奥村と電話で話したよ。あいつが紹介してくれる仕事だったら取り合えず話は聞いてみれば・・」
『えっ 良いの? あなた 何だか機嫌悪いみたいだったけど・・・』
「いや そんな事ないよ。よく考えれば子供達に金が掛かるし・・・でも 自治会の方も大変みたいだから身体だけは気をつけて・・・・なっ」
心の狭い男と思われたくなかったのか、おそらく気まずいままで離れて暮らしたくなかったのでしょう。
結局 自宅での“携帯の事”なども言い出せず、まして目の前の写真の事などは・・・・・。
(この写真の事は、また後で考えよう・・・・)
私はそんな事をぼんやり考えていた。
『あなた・・・あなた・・・じゃあ そろそろ切りますね・・・』
妻のその言葉に私は返事をして携帯をテーブルの上に置いた。
この夜ベットに横になると、この3日間の事を振り返ってみた。
花岡と小酒井さんがそれぞれ別の日に○○駅の南口の繁華街でかおりに似た女(ひと)を見た。
花岡は男と一緒だったと言った。
小酒井さんは、かおりに声をかけようとした・・・でもかけなかった・・・なぜ・・・・・男がいたからか。
かおりは、南口には行ってないと言った・・・・・嘘をついてるとは思えない口ぶりだった。
娼婦のようなフェラチオだった・・・・・妻はがんばった と言った・・・。
携帯を離さない様になっていた・・・・・深い意味は無いのか・・・それとも自治会の連絡が多いからか。
急に仕事を変えたいと言い出した・・・子供に金が掛かるからか・・・それに奥村と久しぶりに会ったからか。
そして・・・・。
あのメールと写真は?
一体誰が何の目的で・・・・。
“K”とは?・・・・・暗号か、名前か。
そもそも何故 私のアドレスを知っている?。
あの写真に写る女性は、誰?・・・・・指輪をしていたがかおりに似ている気もする・・・。
『昔は普通の主婦でした』・・・・・じゃあ 今は 普通ではないのか?
外の雨が更に激しさを増していた。
しかし私の心の中は渇いていた。
同じ人物に間違いないその女性の画像は、場所や服装を変え私の目を釘づけにした。
しかし その女性は写真の中で決して顔を見せる事はなかった。
買い物をしている後姿、公園を歩く後姿、町を歩く後姿。
私はそれらの写真が盗撮された物かと思ったが、次の1枚でその考えが間違っていた事がわかった。
どこかの繁華街だろうか、スナックなどの店の看板が見え隠れする路地で、その女性が初めて正面を向いていた。
しかし 右手に持った水色の傘が、そのつゆ先で口元までを隠していた。
次の画像は同じ路地であろう、閉じた傘を右手に持ち、左手は軽く腰に添え、どこと無くぎこちないポーズをとっている写真だった・・・そしてその写真も首から下しか写されていなかった。
私は首から下を正面から写した2枚の写真を何度も見直してみた。
(・・体型は似てる・・かおりに・・)
服装に見覚えは無いが、身長155cm位で豊満な胸の膨(ふく)らみは私の記憶の中の妻と一致していた。
私はその画像の中の女性の左手をズームUPした。
妻は何年か前からサイズが合わなくなったと、いつも結婚指輪を外していたのだった。
薄っすらとぼやけた左手の薬指には、光る物が見えていた。
(指輪をしている・・・じゃあ 人違いか・・)
私はどこか安堵した気持ちで次の写真をクリックした。
次の写真に私は少しドキリとした。
先ほどの2枚と同じ場所で、その女性が両手でスカートの裾(すそ)を持って、膝頭(ひざがしら)の少し上、太ももの辺りまでそれを持ち上げていたのだ・・当然顔は写されていない・・・。
このアパートで一人暮らしを始めてから、よく覗くようにうなったエロサイトの中に、露出投稿画像の掲示板がある事は知っていた。
私がこの写真にドキリとしたのは、そこが人通りのある昼間の繁華街だと言う事と、その女性の雰囲気が妻のかおりに似ていたと言う事だった。
(・・・ひょっとしてこの繁華街の雰囲気は、まさか○○駅の南口か・・・)
私はその女性の姿もそうだが、後ろに写る店の雰囲気や景色を真剣に見ていた。
頭の中の整理が着く前に次の写真にいこうとして、それが最後の画像だった事に気が付いた。
何とも言えない気分のまま、もう一度最初から写真を見ようとカーソルを画面にあてた時、携帯が鳴り響いた。
イスから飛び上がりそうに驚いた私は、震える携帯を手に取った。
そこには見慣れた番号とかおりの名前があった。
私は一呼吸して携帯のスイッチを押した。
「はい もしもし・・・」
『・・・・・・・・・・・・・』
「もしもし・・俺だけど・・・・かおり?」
『・・・・・・・・・あっ あ あ』
「?・・・もしもし もしもし・・」
『・・あっ あなた?・・もしもし』
「かおりか、どうしたんだい」
『ごめんなさい・・電波が悪くて・・・それでさっき電話くれた? デパートの地下にいたから繋(つな)がらなかったみたい』
「そうか 心配したぞ。俺は今アパート、何とか無事に着いたから」
『そう 良かった・・・』
「・・・・・」
『・・・・・』
「かおり・・今はどこ・・家? 何だか凄く息が乱れて苦しそうなんだけど」
『えっ・・・ううん 今駅から家に向かって歩いてるところ・・・何だか急いで歩いてたら・・・あっ ああ・・い 息が切れちゃって・・』
「・・大丈夫かよ・・・・それで さっき奥村と電話で話したよ。あいつが紹介してくれる仕事だったら取り合えず話は聞いてみれば・・」
『えっ 良いの? あなた 何だか機嫌悪いみたいだったけど・・・』
「いや そんな事ないよ。よく考えれば子供達に金が掛かるし・・・でも 自治会の方も大変みたいだから身体だけは気をつけて・・・・なっ」
心の狭い男と思われたくなかったのか、おそらく気まずいままで離れて暮らしたくなかったのでしょう。
結局 自宅での“携帯の事”なども言い出せず、まして目の前の写真の事などは・・・・・。
(この写真の事は、また後で考えよう・・・・)
私はそんな事をぼんやり考えていた。
『あなた・・・あなた・・・じゃあ そろそろ切りますね・・・』
妻のその言葉に私は返事をして携帯をテーブルの上に置いた。
この夜ベットに横になると、この3日間の事を振り返ってみた。
花岡と小酒井さんがそれぞれ別の日に○○駅の南口の繁華街でかおりに似た女(ひと)を見た。
花岡は男と一緒だったと言った。
小酒井さんは、かおりに声をかけようとした・・・でもかけなかった・・・なぜ・・・・・男がいたからか。
かおりは、南口には行ってないと言った・・・・・嘘をついてるとは思えない口ぶりだった。
娼婦のようなフェラチオだった・・・・・妻はがんばった と言った・・・。
携帯を離さない様になっていた・・・・・深い意味は無いのか・・・それとも自治会の連絡が多いからか。
急に仕事を変えたいと言い出した・・・子供に金が掛かるからか・・・それに奥村と久しぶりに会ったからか。
そして・・・・。
あのメールと写真は?
一体誰が何の目的で・・・・。
“K”とは?・・・・・暗号か、名前か。
そもそも何故 私のアドレスを知っている?。
あの写真に写る女性は、誰?・・・・・指輪をしていたがかおりに似ている気もする・・・。
『昔は普通の主婦でした』・・・・・じゃあ 今は 普通ではないのか?
外の雨が更に激しさを増していた。
しかし私の心の中は渇いていた。