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 馴染みの居酒屋の個室は、エロ動画の鑑賞の為の部屋になっていた。
 掘りごたつに座る私の横には、妻の同級生の由紀子さんが膝を並べて座っている。
 パソコンの画面では、大田徳子さんが無修正のアソコを拡げた状態で動画は制止している。
 「徳ちゃんの逝き顔って凄いわねぇ」画面を見ながら、由紀子さんがクスクスと嗤う。
 私の方は、先ほどから喉がカラカラで、ビールのお代わりを頼みたいところだが、このタイミングで店員を呼ぶと問題になりそうだ。
 「さぁ直ぐに次のが始まるはずよ」云って由紀子さんが、私の肩に頭を乗せるように密着してきた。「次はねぇ、アタシ達夫婦が登場よぉ、でもちょっぴり怖いわ」由紀子さんが甘ったるい言葉を耳元に吹き掛けてくるが、私は返事どころか緊張に頷く事さえ出来ない。
 「あ、始まった」
 画面が一瞬にして変わり、先ほどのベッドが映し出された。


 ベッドは空だが、その周りを囲むようにベネチアンマスクの男が4、5人ほど座っている。中には全裸の者もいるが、これは徳子さんの相手をしていた男に違いない。
 その時、男達が一斉に拍手をし始めた。画面の横から一組の男女が現れ、ゆったりとお辞儀をする。
 二人はお揃いのガウンを着ているが、ベネチアンマスクを被った男に対して女は素顔を曝している。その人物は私の横から画面を覗き込む由紀子さんだ。
 「あぁぁ何だが興奮してきたわぁ」ネットリとした声が、又も耳元に吹き掛かる。声の方を横目に覗くが、由紀子さんの爛々と蠢く瞳がやけに目につく。
 「うちの主人も、どちらかと言うと奥手の方だったんですよ」由紀子さんが訊いてもないのに話し出した。「セックスも元々マンネリだったのが、仕事のストレスのせいで回数は減るわの、早いわで」と、彼女が自嘲気味に嗤う。
 「でも、ひょんな事からこの『社交会』に入るようになって、今は凄いのよ」由紀子さんの声が上擦って来る。
 映像では、アングルは先ほどより少し遠目に、ベッドの前で立ち並ぶ二人を映している。このシーンを録っているのも妻なのだろうか。
 画面の中、由紀子さんがガウンに手をやった。
 腰紐が解け、ガウンの裾が拡がったかと思うと、彼女の白い肩が露になっていく。そのガウンを隣の男が剥ぎ取ると、私は唾を飲み込んだ。由紀子さんは一糸も身に纏っていなかったからだ。
 「どうですか、アタシの身体は?」耳元で甘い囁き声がした。私は黙って頷くだけで、画面から目が離せない。
 映像越しに視る白い肢体は、小ぶりな乳房に、それに相反するような豊満な腰回りが目を引く。その女体と隣を見比べようとするが、首が回らない。緊張が私を縛り付けているのだ。


 二人が徐に口づけを始めた。そしてそのまま、由紀子さんがご主人のガウンを脱がし始める。
 「さあ白黒ショーの始まりよ」
 「白黒?」
 「ええ、先輩のスワッパー夫婦に教わったんだけど、昭和のストリップ劇場ではよく行われていたショーなんですって」
 「………」
 「男と女が一対となって、お客様の前でセックスを見せるんです」
 「本当にそんな事が」
 「本当らしいですよ。今でもその頃の動画が、それ専用のサイトで視れるし、アタシも実際に視ましたわ。あ、実際って言うのはサイトでも視たし、この社交会で他の夫婦がやってるのを生で視たっていう両方の意味です」云い終えて由紀子さんが、私の耳元で薄く嗤った。彼女は間違いなく私の反応を楽しんでいる。画面の中では、ご主人も一糸も纏わない裸を曝したところだ。
 「しかし何故、白黒なんて」
 「ああ、それはねぇ」私の何気ない呟きに、又も彼女の囁くような声が耳元でする。「昔はね、男女が上がる舞台と観客との間に、幕を引いて影絵の状態で見せたのが始まりだそうです」
 「影絵…それで白と黒なのか」
 「そうです、それが徐々に過激になって、幕間がなくなり直接見せるようになったみたいネ」
 私は彼女の説明にも、ゴクリと唾を飲み込むだけだ。
 映像の中では、由紀子さんがしゃがんで、ご主人の胯間のモノを咥え込んでいる。


 「あぁ、恥ずかしいっ」由紀子さんが視線を隠すように、私の肩に顔を埋めた。私の目は映像の中、ズームされる彼女の口元にいく。
 彼女にシャブられ、ご主人の一物はあっという間に硬度を蓄えた。こんな時、どうして男は自分のモノと比べようとするのだろうか。ご主人のカリ首が異様に膨らんで観えてしまう。
 その時、私の手が由紀子さんに掴まれた。「いゃぁん、どうしましょう。アタシ恥ずかしすぎる…」
 行き場のない彼女の声が、この個室に舞って行く。私は身体を強張らせ、心臓の鼓動が聞こえて来そうだ。
 「清美さんのご主人…ねぇアタシ、嫌らしい女なんですよぉ。でも軽蔑しないで下さいねぇ」
 切れ切れの声に私は、身体の体温が上がって行く気がした。由紀子さんに握られた手が、彼女の胸元へと連れて行かれる。そして掌が膨らみに押し当てられた。
 「ほらご主人、アタシのここ、ドキドキしてるでしょ」
 由紀子さんの弱々しい声が続く。しかし映像では、彼女は大胆に本性を露にしていく。ご主人の膨らみきったソレを、頬ずりしながらウットリとした表情を浮かべるのだ。そしてベッドを囲む男達に、歪んた口元を見せつける。「あぁ変態夫婦のショーが始まってしまうわぁ。どうしましょう、アタシの淫乱マンコに、主人のチンボが入るのよぉ」
 告うや否や、映像の由紀子さんはベッドに上がり、四つん這いになって男達に臀を突き出した。
 私はゴクっと喉を鳴らし、その秘密の部分に目をやってしまう。体温は上がり続け、心臓がバクバクし始めた。秘所を曝す女性が直ぐ隣にいると思うと、頭がどうにかなりそうだ。


 「あ、あの…この撮影も妻が?」私は気を散らしたくて、妻の事を訊いた。
 「うふふ、そうですよ。このあられもないアタシ達の痴態を撮影してくれたのも清美さんよ」
 「そ、そうなんですね…」
 「ええ、でもこの日の彼女は見学と撮影だけ。それ以外の事…服を脱いで裸を見せたりはしてませんから」
 先ほどの羞恥の表情を何処へ隠したのか、由紀子さんは落ち着いた声に流し目まで送って来る。
 「あの、男は…元彼はそれで何と…」
 「元彼?ああ、あの人ね。うふふ、アタシが指示されたのは、清美さんに刺激を与えて下さいって事だけですから」
 「………」
 「まあアタシとしたら、いつかは清美さんにもこちら側の世界に来て欲しいと思ってますけどね」
 由紀子さんの私を見る目が、怪しい光を携えている。そして唇が更に私の耳元に近づいた。
 「それとねぇ、出来ればご主人も一緒に」
 「ええッ!」
 「アタシ達は変態セックスを愉しんでるスワッパー夫婦。そんなアタシ達の仲間に、ってね」
 「いえ、私達は…」
 「ふふっ大丈夫、分かってますって。無理強いはいけませんからね。でも、清美さんの方が先に飛んだらどうしますか」
 「と、飛ぶって…」
 「ふふ、清美さんの行く末を皆んなが楽しみにしてるんです。あの人と寄りを戻したら…な~んてね」
 「き、清美に限ってそんな事は…」
 「ふふふ、あるわけないですか?」
 由紀子さんが間近な距離から見詰めてくる。
 「ご主人は、これまでも清美さんを大切にして来たんでしょ?」
 「………」
 「たくさん抱いてあげたんでしょうが、彼女の本質をちゃんと理解してあげてたのかしら?」
 「本質って…」
 「持って生まれた性癖。それって幾つになっても変わらないらしいですよ」
 「………」
 由紀子さんの言葉が映像のヨガリ声と重なり、雨粒のように降り掛かって来る。
 彼女が云った事も理解できる気がするが、それでも私の中には、妻が元彼に施された調教が、何かしらの形になって表れはしないかと恐怖が先立つのだ。


 「そうそう、そう言えばねぇ、泊まりでの女子会を検討中なんですよ」
 「そ、それは聞いてます…」
 「そこで清美さんを試してみては如何ですか」
 「え、試すとは?」
 「決まってるじゃない。清美さんがそこで飛ぶかどうかよ」
 私は唸り声を続けるだけだった。頭の中は酔いもあるし、この雰囲気もあってか色んな場面が渦を巻いている。
 これもあの男の仕掛けなのか。私は完全に翻弄されている。
 「ご主人、そうあまり真剣な顔しないで下さい。アタシも問い詰め過ぎました。今云った事は時間があるから、考えておいてくれればいいですよ。それより、こっちの続きを楽しみましょうよ」
 彼女の言葉にパソコン画面を向き直れば、由紀子さんが臀を向けてご主人に跨がっている。二つの生殖器が、片方は侵入を繰り返し、もう片方はソレを難なく飲み込んでいる。そしてその摩擦音が、響き伝わって来るのだった。