小説本文




 手紙を手にしたままの私は、自分を落ち着かせる為にビールを飲もうとジョッキを見たが、中身は空だった。
 直ぐに追加を頼み、注文が届く間に妻と元彼の事を考えた。
 元彼と名乗る男には『女店主』と呼ぶ恋人か愛人が既にいたわけだ。手紙からは、間違いなく彼より歳が上で、性の支配者のイメージがある。
 元彼は若くして女店主から性技を受け継いで、その体験を妻に対する長年の想いを込めて、そして同時に溜め込んだ妄想を実現しようと発揮している気がする。そして妻は、性の魔物に取り憑かれたように男の傀儡と化してる気がするのだ。


 注文したビールが運ばれてきた。
 それを半分ほど一気に呑み干し、私は再び手紙に目をやった。


 【その部屋には人を張り付けにする器具がありましてね。壁から2本の鎖が伸びているんです。分かりますかね。鎖の先は手首を拘束する手錠形の輪っかがあるんです。それを清美さんに繋いだわけです。
 黒マスクはまだ被ったまま。アソコはバイブを咥えたまま。その状態で、私はムチを使いました。
 とは言っても安心して下さい。私は、女店主との関係において、サドの時もあればマゾの時もあったのです。
 ですのでムチ打ちのコツと言いますか、何処をどの程度の強さで打てばどうなるか、そんな事は承知していたわけです。
 それでも清美さんのあの豊満な臀は、かなり強く打ちましたけどね。】
 私はウウウっと唸りを上げた。同時に男のほくそ笑む笑いが聞こえた気がする。


 【尻打ちから始まり、乳房も打ちました。
 衝撃による清美の叫びは、恐怖を含んだものでした。
 そのくせ彼女は、乳首を立てていましてね。その事を教えてやると、首を振りながら羞恥が混ざった鳴きの声を上げましたよ。
 乳首を甘噛みしてやると、鳴きの声にも甘みが入って身体全体をを震わせましたね。
 臀を打った後に股間を見ると、液汁がバイブを伝ってタラタラ流れ出ていましたよ。いつの間にか痛みに代わって、陶酔が下半身にも伝わっていたんでしょうね。
 ある程度打ったところで、清美のマスクを剥いでやりました。
 彼女の顔は汗でぐっしょり、前髪が額にベットリと貼り付いていました。瞳は虚ろで、それでも次に何をされるか恐怖もあったと思います。
 私はそんな彼女を優しく抱きしめると、唇を重ねました。清美は私を受け入れ、何かに取り憑かれたように夢中になって私の唇を吸い返してきましたよ。
 あの瞬間、清美は間違いなく暴君、即ち私の性奴になったのかもしれませんね。】
 今夜何度目かの呻き声が、私の口から上がった。この男の告う事が本当の事なら、その瞬間、妻が奴隷宣言をした事になるのではないのか。


 【黒マスクに続いて手首の輪っかも解いてやると、清美は私に垂れが掛かってきましてね。そのままベッドへと連れて行きました。
 そして寝かせてから、彼女のミミズ腫れの後を優しく舐めてやりました。
 私はそのまま愛撫を続け、それまで以上に優しく優しく彼女を陶酔の世界に運んであげたのです。
 その後は分かりますかね。
 私達はノーマルなセックスに入ったのです。
 清美は好きでもなかった男に、急速に開発された自分の身体が恥ずかしかったのでしょうが、直ぐに私の愛撫に身を任すようになりました。そして自分から身体を開いたのです。
 分かりますか?それは従順と見せかけて、実は自分の快楽を求める動きなんですね。
 私達は愛し合いましたよ。サディスティックな行為の後でしたし、彼女はこれまでとは一味違った快感を得たんじゃないでしょうか。
 ノーマルな愛し方に逆に安心したのか、清美の声は遠慮のないものでしたね。腰の振り方も激しさが増したものでした。私は何度も射精していましたが、それでも彼女に、最後の一滴まで吸い取られた感じでした。
 そして私達は抱き合ったまま、暫く眠ってしまったのです。
 そうそう、それとご主人に伝えておく事がありました。それは避妊の事です。】
 その文字を見た瞬間、私はあッと大きな声を上げた。


 【清美さんとのセックスでは、初めての時から避妊はしていなかったのです。妊娠しなかったのは、ただただ運が良かっただけだと思います。
 その事を例の女店主に話した時がありまして、私はこっぴどく叱られました。そして女店主が、何処からか避妊薬を用意して来てくれたのです。
 女店主とのセックスでは、私はコンドームをせずにやっていたのですね。そのせいか、清美さんにもついウッカリ、生で挿入していたわけです。
 清美さんに避妊薬を渡したのは何時だったか記憶が定かではありませんが、ソレを受け取った時の彼女の様子はよく覚えています。
 その薬を飲む時の彼女の気持ちを考えると興奮しませんか?
 飲む行為は、男に抱かれる事を自分で肯定するわけですよね。しかも相手は憎いはずの男ですよね。
 快感を得る為なら、清美さんは悪魔にでも魂を売る女だったのですかね。まあ、この辺りの話は私もよく分かっていません。もし機会があれば、ご主人から訊いてみて教えて下さいよ。】
 男の嗤い声が耳鳴りのように、そして得体の知れない女の叫びが、喘ぎとなって聞こえて来るようだ。


 【さて、続けます。
 SMチックな部屋でノーマルなセックスをした私達は、寝入っていましたがやがて目を覚まします。
 清美を浴室に誘うと、彼女は恥ずかしげに付いて来ました。その時の様子は何と言うか、男の後を半歩下がって淑やかに付いて来る感じなのです。
 おかしいですよね、憎い男の筈なのに…私の身体を洗う清美を見ながら、そんな事を考えているとサディスティックな癖が再び顔を覗かせてきましてね。風呂から出た私は、もう一度清美に羞恥を味わわせてやったのです。そう、部屋の隅に便器があるんです。
 便器?と、その文字が誤字だと思った私だったが、読み進めて驚愕した。


 【ソレは腰高の狭い空間に設置されているのです。短い階段があって、そこに上がると用を足せるように出来てるわけです。しかも和式です。
 尻をこちらに、まさにウンチングスタイルで屈めるのです。
 私は命じてやりましたよ。
 さすがの清美も、顔を真っ青にしましてね。それでも私の冷たい眼差しに悟ったんでしょうね。そこに上がりまして、しゃがみました。
 私が屈んで少し目線を上げると、清美のソコの状態が丸見えです。
 見事に映える豊満な尻。ケツ毛の下辺りを、私は注視しました。そして云ってやりました。
 『分かってるだろ清美、小便を垂れ流せ。お前は変態女、遠慮せず放尿しろ』とね。
 清美のケツが泣き出しそうに震えましたよ。私はもう一度ムチで尻打ちです。
 本気の鳴き声に、私はゾワゾワと背中を粟立たせました。
 そして尻打ちを続けていると、清美の陰部がブルルと痙攣しました。
 私の目が異様な輝きを放っていましたっけ。
 そう、それと書き忘れてましたが、屈んだ清美の直ぐ目の前も鏡なんです。
 清美は鏡に映る自分の顔を見ながら、尿を放流する音を聞いたのです。】
 アーーーッ嘘だ、嘘だ、絶対に嘘だ!
 無意識に私は叫び声を上げている。


 【放尿を終えた清美は泣いていましたね。デカ尻を私に向けたまま俯いて。
 彼女の泣き声を聞いても、私にあるのは歪な高鳴りです。興奮です。憧れの女性の放尿を目の辺りにしたのですから。】
 手紙の男と同じで、正直なところ私も興奮を覚えていた。
 しかし、さすがにこれはフィクションだと、心の何処からかそんな声を呼び起こそうとする私がいる。
 首筋を熱く冷たい汗が流れた。
 その時、コンコンと部屋の扉がノックされた。
 店員が先ほどの私の叫びが、何事かと見に来たのだった。
 私は謝り、ついでにビールのお代わりを頼む事にしたのだった。