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第7話
妻:清美の高校時代の『元彼』と名乗る男から手紙を受け取った次の日。その日から、私の妄想に悩まされる日々が始まった。
妄想は二つあって、一つは高校時代の妻と元彼の関係。もう一つは、ここ最近の妻の事。彼女は私の留守の間に、元彼と会ってるのではないか。そして…。
自分でも何故、そんな妄想を立てるのか分からないでいた。とは言え、最近部下の口から耳にした『寝取られ』の本質を覗いてみたいと言う好奇心が湧いたからかもしれない。
そんな私は、妻の裸体を浮かべようとする。もう何年も目にしていない妻の身体だ。その肉体に覆い被さる顔のない男。
と、こんな妄想が通勤の中や、仕事中でも不意に湧き立ってくる事があるのだ。そんな時の私は、唐突に下半身のモノが膨らむのを感じる。そして、その事態に自分自身が戸惑ってしまうのだった。
妄想を日々繰り返しながら1週間が過ぎた。
間にあった土日に、私は珍しく妻を外食に連れ出そうとした。しかし彼女は、図書館に行きたいと2日間とも一人で行動した。
彼女の単独行動は珍しい事ではない。既に互いが自由の身で、束縛はないのだから。
勿論この休日の時も、やはり私の妄想は繰り返されていた。
悶々とする時間をやり過ごし、やがて次の週の水曜日の事だった。
夕方、職場に戻った私宛に例の手紙が届いたのだ。前回と同じ縦型の茶封筒だった。
『相良賢一様』の文字も、裏に書かれた差出人の字体も前回と一緒。
私はその場で封を開けそうになったが、我慢して残務に取りかかる事にした。
仕事を終えた私は、前回と同じ居酒屋を訪れた。
店に入る前に、妻に『遅くなります』というLINEも忘れない。
今回の手紙は、前回の物より厚みがあった。それだけ『元彼』の男には多く伝えたい事と、それを表現する文才があるのだろうと推測した。
店員が頼んだビールと摘みを持ってきた。彼が立ち去ると直ぐに、私は手紙を取り出した。
【相良賢一様 こんにちは。
前回の手紙を読まれて、お気持ちに変化はありましたでしょうか?
私の勘によりますと、貴方はこのような手紙が届いた事実は、清美さんには内緒にしているのでしょうね。
それは正解です。まだ、結婚前の話ですしね。
さて、それでは前回の続きをお話しさせていただきます。私が清美さんと初めて結ばれてからの、その後の話です。】
私の身体は早くも緊張に包み込まれていった。これは酔わなければ聞けない話だろうと、ジョッキのビールを半分ほど一気に呑み干した。
【私達が初めて結ばれたのは、場末の汚いラブホテルでした。清美さんには処女を捨てる時のイメージがあったかは分かりませんが、彼女の性格からすると、大好きな彼氏の部屋で優しく、それが妥当な所でしょうか。
しかし私が選んだこの薄汚れたホテルこそ、私にとってはお似合いの場所だと思っていました。
そうです、私は昔から自分に纏わりつくイメージを疑っていませんでしたし、暗く淫靡な場面こそ自分が輝くエリアだと知っていたからです。そして、憧れの女性を私の色に染めるには、そのホテルはピッタリだったわけです。
行為の最中で酔いから覚めた清美さんは、何が行われようとしてるのか直ぐに気付きましたよ。そしてまさかの想いで暴れました。
こんな私でも女性よりは腕力もありますし、それ以上に彼女の『初めて』を頂く事でアドレナリンが上がっていたのです。
行為の後、彼女は泣いていました。しかし私は、それだけでは終わりにしませんでした。そうです、続けて彼女を求めたのです。】
手紙を持つ私の手が、ブルブルと震えた。これは明らかにレイプではないか。
しかし。
【貴方は今、レイプを想像しましたよね。確かにそれに近かったと思います。そして私は、彼女の被害者意識を利用して脅しを掛けたわけです。
私は彼女の恥ずかしい姿や、私との行為をデジカメで撮りまくったのです。
清美さんは脅しに屈する形で、2度目を許しましたよ。
さて、ここで彼女の性癖の事です。
実は清美さんは、初めての体験で早くもエクスタシーを感じていたのですよ。出血はありましたが、身体の反応は痛みよりも快楽に傾き、やがてはその悦楽を求め始めたのです。】
私の唇が細かく震え、そして『そんな馬鹿な』と動いた。
【そうです、だからか2度目の行為の時には、拒絶の態度を示しながらも、身体は私を受け入れたのです。その時の描写はここでは割愛します。小説では、その時の様子を書いた事があるのですがね。】
その瞬間、この自称小説家の執筆イメージが湧いた。
この男が書いているのは、間違いなくエロ小説だ。
【関係を結んだ私達でしたが、学校では特に肩を合わせて歩くような事はありませんでした。
それまで本の話題でたまに会話を交わしたりする私達でしたが、周りから噂になるような事は全くなかったのです。それは当然の事で、何処からどう見ても不釣り合いなのですから。
けれども裏では、私は清美さんへの誘いを強めました。
彼女は表面は困った顔をしますが、写真を撮られてると自分の気持ちに言い訳を作っていたのです。そして私に従い、暫くの間、身体を預け続けたのです。
では、ここから具体的に私達がどんな変態チックな行為をしてきたかをお話ししますね。】
そこで私は、フウぅっと長く大きな息を吐き出した。
これは本当の話かと疑問を繰り返すが、その度に話の続きが気になる自分がいる。心の何処かで自分をただの傍観者にして、一読者に身を置こうとしてるのかもしれない。
【私は週末ごとに清美さんを呼びつけました。受験を控えた彼女でしたが、私は勉強も見てやると嘯(うそぶ)いて連れ出したものです。
でも安心して下さい。私と関係を続けながらも、彼女はちゃんと第一志望の大学に合格しましたから。
それで、具体的な私達の絡みの話です。】
私の意識は既に、この手紙に飲み込まれていた。ビールも摘みもそのままに、文字を追い続けたのだった。