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第26話
パソコン画面の中では、由紀子さん夫婦の白黒ショーが続いていた。
二人の行為は道徳的に考えれば、赦されるものではないが、それでも衆人の前で、しかもカメラがある中で痴態を曝し続ける様には、正直に凄いと言う言葉が浮かぶのだった。
もし私が同じ立場にいたなら…その有りもしない場面を考えてしまうのも、この異様な映像のせいかもしれない。そんな私に、先ほどから由紀子さんの熱が伝わって来る。私の掌は、彼女の胸房に当てられたままなのだ。
「あぁっ何だが下の方も熱くなってきたわ」由紀子さんが身体を捩らせている。その震えが伝わって来る。
画面の中では、由紀子さんが正常位から今度は四つん這いへと形を変えている。
「あ、あの、恥ずかしくないんですか」
私の質問が間の抜けたものに聞こえたか、彼女が薄く嗤った。そして私の耳元に唇を寄せる。「何を今さらですわ。清美さんのご主人って面白い人ね」
「………」
私は口を閉じて、間をやり過ごそうとする。この空気感には、限界を感じてきたのだ。
「どうしたんですか、もう飽きました?」
「い、いえ、そんな…」
「ふふふ、早く帰って清美さんとオマンコしたいんですか」
ええッ、驚きの声が口をついた。現役教師の口から、隠語4文字が吹き出るなんて。
「いつもはねぇ」甘ったるい声が溢れて、掌が更に強く胸房に押し付けられた。「夫婦のセックスを披露した後は、次に何をすると思いますぅ?」
「え、何をするんですか」
「次はねぇ、見てる人の中から何人かベッドに上がって貰うんですよ」
「そ、それって…」
「うふふ、そうなんです、その日の会に参加した男の人とセックスするんですよぉ」
「ご、ご主人は…」
「ん、主人?あぁ、彼はアタシが見ず知らずの男に抱かれるのを隣から見るんです」
「ええッ、本当ですか!」
「ププッ、清美さんのご主人ってホ~ント真面目なんですね。でも事実なんですよ。主人はね、アタシが男に犯されてるところを見て、性的興奮を覚えるんです」
「うゥゥッ」唇を噛み結ぶ私の口元から、唸り声が零れ落ちていく。
「うふ、ご主人もまんざらじゃらないみたいね。今身体がビクンとしましたよね」
由紀子さんが怪しい笑みを浮かべたかと思うと、彼女の手が私の股間に侵入してきた。股座に緊張が走る。
「あら、まだ小さいのねぇ」
酔いも混ざった彼女の声が、脳みそへと入って行く。同時に私の一物に血が流れ込むのが分かった。そして彼女の指の動きに合わせて、アソコが脈動し始めた。
「夫婦はねぇ、一旦ハードルを越えると以前のステージには戻る必要がないのよ」
「な、何の話ですか…」
「新婚の時は模倣で、好き勝手に快楽を協調しようとするセックス。やがて倦怠期。そのまま一生を過ごす人もいれば、アタシ達のように新たな道に入る夫婦もいる」
「だ、だから何の話を…」
「アタシの運が良かったのは、パートナーが理解ある協賛者だった事」
よく分からない事を喋り続ける由紀子さんだったが、私の下半身にはハッキリとした反応が現われていた。彼女の手の中で、アソコは確実に硬くなっているのだ。
「ほら、ビデオのアタシ、凄いでしょ。この日は3人の男と犯(や)ったわ。主人はそれを見て…うふふ」
映像に向き直れば、ご主人が他の男達に持ち場を譲っている。観覧者だった男達の中から、服を脱ぎ終えた者がベッドに上がって行くのだ。
ご主人が隅に追いやられる中、一人の男が由紀子さんを四つん這いに導き、後ろから挿入した。彼女の前の口には、別の男が股間のモノを咥えさせる。そして又別の男は、由紀子さんの胸の下に潜り込み、下から乳房に吸い付いていく。
「うふふ、凄いでしょ。4Pってやつよね」
耳元で鳴る由紀子さんの声にも、一層卑猥な香りが含まれていた。そして股間に置かれた彼女の指も、卑猥な動きを繰り返している。そしてその指が、ファスナーに掛けられた。
「ちょ、ちょっと!」
咄嗟に声が出たが、その後が続かなかった。身体が強張る中、ジジジとファスナーが降りて行く音が聴こえる。映像からはングング、彼女の嗚咽のような音が聞こえて来る。
「ふふっ、清美さんには黙っていれば大丈夫よ」
「いや、しかし…」
私が言いかけたところで、股間のソレがグッと握られた。
あッと思った時には、ソレが引っ張り出されている。
「ほらやっぱり、こんなに大きくなってるじゃないですか」
「ちょ、ちょっと待って下さい」
腰を浮かし掛けた私だったが、まさに急所を握られ、身体の動きが止まっている。
「あぁ凄いわぁ、これで清美さんを泣かせてきたのねぇ」
心の中では、いや実は、と否定の言葉が浮かんだが声にはならなかった。
横目に画面を窺えば、男のソレをシャブる口元がズームされた。それと同じ事が、今私もされようとしている。
しかしそれは…まずい。
と、その時だった。部屋のドアがノックされた。
一瞬にして二人の身体がフリーズする。
そして聞こえたのは「失礼しまあっす」陽気な店員の声だ。
私達は信じられないスピードで、佇まいを正した。
ドアを開けた店員は、二人で並んで座る私達に不思議な気がしたはず。ノートパソコンは由紀子さんによって蓋をされている。
顔を覗かせた店員はどう思ったか分からないが、私達は何とか助かったようだった。
ラストオーダーを頼み、店員が行ったところで、私達は顔を見合わせた。
「続きは帰ってからにします?」由紀子さんがニヤけながら訊いてきた。
ぎこちなく頷く私を見ながら「清美さんと一緒に視るんでしょ」彼女が続ける。
「い、いや、妻とは」
「ふふっ、分かってますよ。彼女が寝た後で一人でこっそり視るのよね」
私は黙ったまま由紀子さんを見返すが、おそらくその通りだと思っていた。
「アタシ達夫婦の嫌らしい姿を視て、シコシコして下さいねぇ」云って由紀子さんが、朱い唇を歪めた。
それからジョッキの残りを呑んで、店を後にした。
逃げるように由紀子さんと分かれた私は、途中の公園で酔いを覚ます事にした。と言っても、酔いは大した事はなかった。それでも暗い公園のベンチに腰を落ち着け、先ほどの出来事を思い返してみた。
記憶の中には、由紀子さんや徳子さんがセックスしてる様子がシッカリあるのだが、それよりも彼女達の痴態を妻がどんな気持ちで撮っていたのか、そちらが気になってしまう。
妻があの様な撮影をする気になったのも、高校時代の元彼との変態行為に原因があるのではないのか。
動画の女子会=社交会があったのは今から1ヶ月ほど前になるのか。するとこの何日間に、妻の中で何かしらの変化があったかもしれない。彼女はそれを表に出さないようにしている?
妻の事を考えれば考えるほど、頭に浮かんで来るのは、つい先日彼女が口にした次の女子会の事だ。今夜の由紀子さんの話と合わせれば、それは泊まりで行う計画らしい。
由紀子さんは云っていた。『~清美さんを試してみては』と。しかし私は思うのだ。あの言葉は、由紀子さんの後ろにいる『元彼』の言葉ではなかったのか。
そして私の中には、もう一つの恐怖があった。
それは。
妻は元彼と一緒に、白黒ショーの一員になってしまうのではないだろうか。これまでの手紙によれば、元彼はかなり重度の変質者だ。そんな男からしたら、白黒ショーくらいどうって事のない筈だ。そして妻も、若い時に変態調教を施された元彼に誘われれば、自らベッドに上がり、衆人に痴態を晒すのでは。そして、そこで改めて快楽に目覚めたら。
「そ、そんな事はさせられない」私は無意識に言葉を吐き出していた。
私は立ち上がると急いで家路に足を向けた。今夜妻を抱くのだ。何年ものブランクがあるが、そんなものは関係ない。このままでは、元彼に妻を奪われてしまう。
私は今更ながら、迫り来る恐怖を感じていたのだった。