小説本文




 隠微な空気に覆われた寝室のベットの上、何一つ身に付けないまゆみが私を見つめる。
 Mの字に開いた熟した腿と腿の間には薄い翳りが見え、その下のグロテスクな生き物を見せ付けるように両方の指が陰部を拡げている。
 その陰部の左右横には2つの文字・・・・綾、そして 武・・。


 収まり所を見失ったかのように、私の硬くなった物が僅かに下を向く。
 その時 挑みかかろうとしていたまゆみの目が、ゆっくりだが悲しげに波を打った。


 (・・・・・・・・・・・・・・)
 「・・あなた・・・・」
 「・・・・・・・う・・・・んん」
 「・・・あなた、こういう女が好きなんでしょ?」
 卑猥なポーズを決めながらも、その声は弱々しい。


 「綾さんから聞いたわ・・・貴方・・・Hな事が大好きだったのね」
 (・・・・・・・・・・・・・・)


 「本当は私もなの・・・・昔から・・・欲求不満で・・・・でも、あなたに言えなくて・・・・言ったら嫌われるかと思って・・・・・」
 (まゆみ・・・・)


 「あなた ごめんなさい。綾さんにモデルに誘われて、身体を許しちゃった時、何て事をしてしまったんだろうと思ったけど・・・凄く感じてしまって・・・・」
 (・・・・・・・・・・・・・・)


 「その後、綾さんに心まで奪われて、・・・綾さんから“ゆう”が悩んでる事を聞かされて・・・」
 (え?・・・・・・)
 「ど どんな風に・・・・・その あ・・あの・・佐々木さんは言ってたんだ?・・・」


 「『嫁(かみ)さんにHな視線を送ってるのに全然気付いてくれないって・・・俺 何年も欲求不満なんだよ』 って・・・ ゆうは2年くらい前はよく抱いてくれたのにその後は・・・あたし、飽きられたのかなって思っていて・・・自分から求めるのが何だか恥かしくて・・・」
 (・・・・・・・・・・・・・・)


 「それに“ゆう”とそんな下ネタみたいな事を喋れる綾さんにも嫉妬して・・・・会社にそんな事を話せる女友達がいる貴方にまで嫉妬して・・・・」
 (お 女友達?・・・・・)


 (・・・・・・・・・・・・・・・・・)
 「ま まゆみは・・それで・・・その・・・・。あや、いや佐々木さんに誘われて・・・・」


 「・・・・ゴメンネ・・・・。綾さんにHな集まりに一緒に参加して って言われて・・・女の人相手に売春婦の真似事させられて・・・・」
 「そうだったのか・・・・・」


 「・・・・・うん。 ・・・その次にも・・・・本当はもう行きたくなかったけど、断ったら綾さんが、 レズしてる所のビデオを“ゆう”に見せるなんて言うから・・・・・」
 (うっ・・・・・・じゃっ じゃあ まゆみは・・・・)
 私は出掛かった言葉を何とか胸の中で留まらせた。
 まゆみは私と綾の関係までは聞いていない。
 綾はまゆみには私との付き合いを言わずに、去っていってくれたのだ・・・・・。


 「綾さんにピシっとした格好をしてきて って言われておしゃれなマンションに行ってみたら・・・・・そこで変なお酒を飲まされて・・・・・そして気付いたら男の人が裸で沢山いて・・・・」
 (え?・・・・・ち 違う・・・綾の話とは・・・)


 「そこで何人もの男の人にレイプみたいに・・・・・でも身体が反応してしまって・・・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・」


 「帰るとき、綾さんが『後2回程付き合ってネ』って ・・・・・ アタシが困った顔をすると 『さっきのビデオに撮ってあるんだ』 って遠まわしに脅されて・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・まゆみはその後も」


 「・・・・・・ごめんなさい」
 それまで裸のまま腰を降ろしていたまゆみが、改まって座りなおすようにして頭を下げた。
 目には薄っすら光る物が溢れている。


 「それで又 一緒にそのマンションに行って・・・そして今日もまた・・・・・・」
 「あ ああ・・・・・・」


 「・・・・でも正直に言うと、最初行くのが嫌だったんだけど・・・ビデオで脅されてるって自分に言い聞かせながらも・・・・行ってしまうとアタシ・・・感じてしまって・・・・・ゴメン・・・・」
 (・・・・・・・・・・・・・・)


 「それで・・・・今日の帰りに綾さんが言ったの・・・・『今までのビデオは全部渡すわ』 って、『ただし条件があって、ご主人に今までの事すべて話しなさい』って 」
 「え!」


 「『恥かしいかも知れないけど私とのレズの事や、 乱交の事も全て話して自分の本性を知ってもらいなさい』って・・・・ 『約束しないとビデオを・・』って・・・」
 (・・・・・・・・・・・・・・)


 「そ それとね・・・・・・」
 「う・・・うん・・・」


 「綾さん 『全て正直に話したらご主人もきっと許してくれる』 って・・・・それと“ゆう”が最近の私を疑ってるのも何となくわかってたし・・・・綾さんも 『最近ご主人からも、この何日間まゆみさんの様子がおかしい って相談されてる』 って言ってたし・・・・」
 (・・・・・・・・・・・・・・・・・・)


 「『ご主人が探偵でも使って証拠を掴(つか)む前に自分から正直に話した方がきっと許してもらえる』 って・・・・・」
 (ああああ 綾!)


 「あなた・・」
 その声が上がるとまゆみが私に抱きついてきた。
 あっ と思った瞬間にはまゆみの唇が私の口を塞いでいた。


 「あなた・・・あなた・・・」
 私の口を小鳥が啄(つい)ばむ様に押し当てながら“あなた”の3文字が聞えてくる。
 私は思い切りまゆみの身体を抱きしめた。


 「あなた  あなた ゴメンネ・・・あたし・・・許して・・・・」
 「あ ああ」
 「もう他の男に抱かれる事なんて・・・」
 「ああ わかってるよ」
 「あたし本当は昔から凄くスケベな女なの。いつもいつもHな事ばかり考えてたの。貴方に恥ずかしくて言えないような事をいつも考えてたのよ・・・。だから何でもして。あたしをもっとエッチな女にして・・・何でも言う事聞くから・・」


 暗く沈んだまゆみを抱きしめながら、私は頬が緩むのを何とかこらえた。
 綾は正に最高の妻を私に残してくれたのだ。


 この夜 私達は2年ぶりに狂ったように交わった。
 それまでの溜まりに溜まった欲望を吐き出した。
 これからの妻の調教を考えると、私のアソコが休まる暇は無かったのだ・・・・・。


 時間を忘れ交わり続けた私達にもやがて睡魔がやってくる。
 どちらが先に眠りについたかは分からないが、私達の寝顔は満足の後のそれだったはずだ。


 まどろむ意識の中・・・夢か? 現実か?
 私の横からスッとベットを降りた影が枕元の携帯電話を手にした・・・・・ようだ。
 意識は・・・夢。
 私は眠りの中にいる・・・・。
 人影はそんな私の寝顔を見た・・・・気がする。
 しかし・・・これは夢?


 「もしもし・・・・・」


 「はい・・・・主人は寝ています・・・・・」


 「はい・・・ええ・・・すっかり私の言った事を・・・・と思います」


 「はい・・・分かりました。・・・もう主人は私を疑う事は・・と思います。・・・はい  そうです」


 「はい・・・私は×××の×××です・・・・。はい・・・主人とは適当に・・・。はい・・・では・・・次の“宴(えん)”では・・・ はい ・・・ はい ・・・ では、お休みなさい」


 意識は夢?
 意識は闇・・・行き着く先は闇・・・淫欲の闇の中・・・・。


 ~おしまい~

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