小説本文



まゆみは次ぎの水曜日、日曜日と、緊張しながらも出かけて行った。
 私はまゆみの口からその日の様子を聞きながらも、一刻も早く綾と会って話しをしたかった。
 綾の目にはまゆみのモデルの様子が、どう映ったのか知りたかったのだ。


 火曜日。
 ようやく綾と落ち着いて話せる時が来た。
 H駅裏手のくたびれたラブホテル。
 この夜は、“プレイ”に入る前に聞いてみた。


 「綾 先にまゆみのモデルの様子を教えてくれ」
 「・・・・・・・・ふふ ゆうじさん、声が何だか緊張してるわよ・・・着衣のままのモデルなのにそんなに緊張するんだったら、全部脱いだらどうなるのか心配ね」
 綾がもったいぶる様にスーツを脱ぎながら話し始めた。


 「モデルの様子は、奥様から聞いているんでしょ・・・・奥様は“仕事”として、立派にこなしていたと思うわ」
 「いや、そう言う事じゃなくて・・・その時のまゆみの様子とか雰囲気とか・・これからの事とかだよ」


 「うふ、わかってますよ。まゆみさんは短期間で随分成長したわ・・・1回目より2回目、2回目より3回目って・・」
 「せ 成長ってどういう意味?」


 「ふふ、モデルをするって言う事は例え服を着ていたって、やっぱり恥かしい事なの・・・顔立ちや身体の線、胸やお尻の膨らみを見られるのはもちろん、肌の色から張(はり)や艶(つや)、シワの数から産毛(うぶげ)の生え方まで、穴が開くんじゃないかって言うほど見られるの・・」
 (・・・・・・・・・・)


 「そうしたら心の奥の本心や、本能までを見透かされている気持ちになって、“才能”のある人はそこから少しずつその本心を外に向って出し始めるの」
 (・・・・・・・・・・)


 「まゆみさんの場合は1度目の時は、それがまだ本の少し顔を出した程度だったけど、2度目の水曜日の時にはそれがそこそこ滲(にじ)み出てたわ」
 「・・・・・・・・そんな事がわかるのか?」


 「ええもちろんよ。例えば 培(つちか)われた内面の優しさや強さを何気なく滲み出してる人っているでしょ。逆に負のオーラを背負ってる人は、やっぱり何処と無く暗い雰囲気を持っているわ」
 「う~ん わかるような気もするけど・・・・それがまゆみのモデルとなると・・・・・」


 「うふ ・・・ それでね、3度目の日曜日の時には、まゆみさんの心の声がね 『見てください・・見てください・・もっと見て下さい』 って訴えかけていたわ」
 そう言って綾が上着に続き、スカートを脱ぎ去った。


 「中にはその心の声が、挑発するように “見せてあげるわよ・・ほら見せてあげるわ” って言う人もいるのよ・・・・・・・いい?奥様の心の声は “見てください・・・見てください・・”  だったの・・・・・」
 「そ それって・・・・」


 「そう・・・そうなの、奥様は見られたいの・・・見られて感じるの・・・見られて悦(よろこ)ぶの・・・・“M” って言う事なのよ」
 (!!・・・・・・)


 「うふふ・・・それでね ゆうじさん、その域に近づいた人はね、自然と次に進みたがるの・・・・・・そう 奥様の好奇心は既に、一人歩きしてるのよ」
 「んん・・・でも、ちょっと飛躍しすぎじゃないのか」
 少しバカにしたような私の言葉。


 「まあまあまあ・・」
 「・・・・・・・・」


 「ふふ それでね、日曜日の帰り際に奥様をエステに誘ったの 『良いお店があるから今度どうですか』って・・・『私もご一緒しますから』 って・・・」
 「ま まゆみは、そんな事 一言も言ってなかったぞ」


 「ええ、奥様には『ご主人に黙って行って、綺麗になってビックリさせましょう』 って言ったのよ ・・・・・・まゆみさん 喜んで約束してくれたわ」
 「・・・・・・・・・・・」


 「それでそこの店はね、知り合いがやってるの・・・・そこで私も肌を晒(さら)すわ」
 「うっ ・・・まさか ・・ そこでもう・・・」


 「ううん、そこではまだ“事”に及ばないわ。 ・・・・・肌を見せ合って次の為に免疫を付けてもらうのよ・・・・」
 「・・・・・・・・・・・・」


 「ふふふ、ゆうじさん楽しみでしょ? 奥様がどんどん近づいていくわよ ゆうじさん好みの女に・・・」
 そう言って綾が、ショーツに手を掛けた。


 薄汚れた部屋の暗い照明の下で、綾が挑発するようにゆっくりゆっくりとショーツを下ろし始めている。
 ショーツに続いて全てを脱ぎ終えた綾は、正にモデルのようにその美しい身体を披露した。
 子供を産み経産婦として熟した色気を身につけたまゆみに対し、綾は又一味違った色気を醸(かも)し出している。
 小ぶりの胸の先には薄黒い突起が、白く細い腰の続きには大きな臀部が、そして可愛らしいヘソの下にはまゆみとは正反対な濃い陰毛が私に迫ってくる。


 私の直ぐ目の前で、ソファー、テーブルをまるで小道具のように扱いながらポーズを取り始めた綾。
 綾のポーズはじょじょに激しさを増していく。
 美しく官能的な身体からは、淫靡な香りが溢れ始めた。
 私を翻弄(ほんろう)するように白い巨尻を突き出した。
 細く長い白魚のような指が己の尻肉を掴み ・・・ そこが広がると目の中に濡れた陰部の様子が飛び込んできた。


 「あ・・あああ アタシ “まゆみ”よ・・・あなた・・来て・・・」
 その声が終わると同時に、私は着ている服を一気に脱ぎ始めた。


 全裸になった私達には、ムードなど何も無かった。
 ただ狂ったように求め合った。
 モデルになったまゆみ・・いや 綾 ・・ いや まゆみ ・・・ 私は訳が分からないまま、その女の腰に己の腰を打ち込み続けた。


 私達は互いに貪(むさぼ)り続けた。
 最後の熱の放出を終えた私は、綾に覆い被さるように崩れ落ちた。


 しばらくして、息の治まった綾の顔がこちらを向く。
 「・・・・・ゆうじさん ・・・・ 次に私達が肌を合わせる時はきっと、奥様とエステに行った後ね・・・」
 逝ったばかりの綾の瞳の奥には、妖しい光がまだ輝いている。


 「い 行く日は・・・決めてあるのか?」
 「・・・ええ 遅くとも今週中には」


 綾の何処と無く嬉しそうで、それでいて悪戯っぽい目が私を見つめている。
 その目を見つめ返す私は、いつのまにかその中に吸い込まれていくような錯覚を覚えていた。

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