小説本文



ズームされた画面は、全裸で横一列に並んだ女を端から一人ずつ捉え始めた。
 裸の女はまるで人形?のように、喜怒哀楽を消して澄ました顔で立っている。
 女性の年齢は、“買う側”の女達に比べると少し下のように見える。
 両手を腰の横でダラっと下げ、乳房とヘソの下の翳(かげ)りを隠す事なく晒している。


 白い肌、綺麗な肌、日焼の痕を残す肌。
 そして大きな乳房、小ぶりな乳房、そして黒い乳首。
 順番に周っていたカメラが4人目をズームした。
 まゆみだ・・・。


 他の3人とも遜色の無いその身体。
 年齢だって10歳若く見られても可笑しくないのじゃないか。
 しかし、その表情は・・・・。


 ただ一人、まゆみの表情だけが他の3人と違っている。
 少し俯き加減、そして今にも泣き出しそうな瞳。
 どことなく頼りなさそうな雰囲気だ。


 (まゆみ・・・・)


 “買う側”の女が、ママの合図で近づき始める。
 一人一人をいかにも値踏みするように見て周る女。
 顔から足の先まで見下ろし、顔を上げてニッと笑う女。
 乳房、尻の大きさを確認するように、横から見る女。


 しばらくして一人の年配の女が、左端の裸の女の肩に手を掛けた。
 一人目が買われたようだ。


 グレーのスーツを着た女が、2人の裸の女の間で顔を左右に振っている。
 どちらかに決めかねているのだろうか?
 そこにママを呼び、何事か囁き、それにママが答えた。
 グレースーツの女が大きく頷き、一人の女の手を取った。


 残っているのは一人の女、それと綾だ。
 買われる側にも一人の女、そしてまゆみだ。
 綾が2人の女の周りをゆっくり歩きながら、時折足を止める。
 アゴに手を当てるのは、綾が迷っている時の仕種だ。
 まゆみの顔が今にも泣き出しそうになっている。


 そして綾が一人の女の手を取った。
 まゆみ! ・・・・・ではない。
 最後の女が“残った”まゆみの肩に手を置いた。
 その女がまゆみを、優しそうに覗き込んだ。

 
 まゆみが口に手を当てている。
 私の胸がキューーーーっと締め付けられていく。
 買われる身が辛かったのか。
 品評される自分が惨めだったのか。
 綾に“買って”もらえなかった事が悲しかったのか。
 まさか一番最後まで売れ残った事が、悔しいわけではないだろう。


 まゆみの元に、ママがやって来た。
 ママがまゆみの涙を拭き、頬に優しく手を当てる。
 そして諭(さと)すように何かを言っている。
 ママの表情はとても優しそうだ。
 やがてまゆみが小さく頷くと、“買った”女が手を取った。


 画面では既にキスをしているカップルがいる。
 この“舞台”がどういう作りになっているかは分からないが、そこの絨毯(じゅうたん)の上で事を始めようとしているカップルもいるようだ。
 あるいは別の所に個室もあるのだろうか、綾のカップルはこの画面に見る事は出来ない。
 

 まゆみの手を取った女が、画面端に映るソファーに向う。
 女が服を脱ぎシミーズのような格好になると、そのソファーに腰を降ろした。
 女の前にはまゆみが立っている。


 その瞬間まゆみの後姿がズームされた。
 えっ! っと驚く私の目に、まゆみの背中と尻が飛び込んできた。
 カメラはまゆみを意識しているのか。


 私の目には、まゆみの裸をソファーから見上げる女の顔が見える。
 歳は50近くだろうか。
 まゆみより上なのは明らかだ。
 この娼婦館では常連なのか、落ち着いた目がまゆみの身体を確かめているようだ。


 私からは、まゆみの顔は見る事は出来ないが、少し頭を垂れたまま肩が震えている。
 女の手がスッと上がったかと思うと、まゆみの尻に回った。
 その尻を撫で回しながら、女が座ったまままゆみの下腹辺りに顔を付ける。
 ヘソの周りから翳(かげ)りの部分にまで、ほお擦りしているようだ。
 しばらくしてくるりと、まゆみがこちらを向く。
 私は唇を噛み締めた。


 まゆみは座った女に促され、その場で足を広げていく。
 肩幅より大きく開いた所で、両手を膝の上に置いた。
 丁度まゆみの尻の割れ目が、女の目の前にあるはずだ。
 正面を向くまゆみはアゴを上げているが、目は瞑(つむ)ったままだ。
 涙の痕は見つける事が出来ないが、その表情はやはり“我慢”しているそれだ。
 私の胸がチクリとした。


 女に促されたのか、まゆみは今度は頭をグーーっと下げ、両手の手の平をピタッと床に付けた。
 座っていた女の顔が、一段とよく見える。
 いかにも好色な表情。
 女が立ち上がり全てを脱ぎ去ると、細身の身体に程好い大きさの乳房が現れた。
 まゆみはその苦しそうな姿勢、惨めな格好で何を想っているのか。


 (・・・・・・・・・)


 女がソファーに座り直すと、まゆみの尻に手を当て、そこをグッと拡げる。
 女の顔がより一層好色に輝いた。
 私がアッと思った瞬間には、女が“ソコ”に顔を埋めていた。
 

 カメラがそれ以上にズームされ、まゆみの肛門と陰部辺りを嘗め回す女の顔がアップされる。
 やはりカメラはまゆみ達を意識しているのだ。
 そんな私の考えなどお構いなしに、カメラは2人の様子を映し続けた。


 「あ・あ・あ・・・・・・」
 まゆみの口からは、じょじょに官能の声が響き渡り、やがてその場に崩れ落ちた。
 それを見た女がソファーから立ち上がった。
 そして女の手に、ママから黒いバイブレーターが手渡された。

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