小説本文



私は目の前の裸の男女を見つめていた。
 人生の酸いも甘いも一通り経験した良い歳の男と女達だ。
 その男女が己の心を開放して、欲望の限りを尽くそうとしている。
 そしてその中の一人は私の妻なのだ。


 「それでは男性の皆さんに女を味わっていただきましょうか・・・これからしばらくフリーセックスタイムです。先程も言いましたが相手の膣へは全て生で挿入して中に出してください。3P 4Pはその場の雰囲気をよんで行ってください。それと女性のアナルへの挿入だけはNGとさせていただきます。 ・・・・・ではどうぞ」
 男が言い終わると裸の男達が女性に群がった。
 先程とは違う音楽が流れ、照明の明るさも少し落とされた。


 目の前で男と女の淫らな“宴(えん)”が始まった。
 それは等身大のアダルトビデオか?
 いや違う。
 監督も、ADも、照明係もいないのだ。
 そして何よりそこに妻のまゆみがいるのだ。
 仮面を着けているとは言え、あの胸の膨らみ、その大きな尻の女性は間違いなく妻のまゆみなのだ。


 目の前では早くもまゆみが正常位で突かれている。
 生まれて初めて見る妻と他人の性行為。
 言葉を失い、放心状態の私の直ぐ目の前、ミラーの向こうで大きく開いた股の間で男が腰を振っているのだ。
 男の大きな背中と汚い尻がよく見える。
 初めて会った名前も知らない男の性欲をまゆみのアソコが受け止めているのだ。
 私の位置からはまゆみの仮面は見えないが、女達の叫びの中から聞き覚えのある声が届いてくる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。









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1
 いつの頃からだろうか・・・。
 気が付いたら、ネットで検索していたジャンル。
 どちらかというと 陵辱系 SM系が好きだった私 ・・・ いつのまにか頭の中では、その対照となる女性が自分の妻になっていた。
 妻をSMチックに陵辱したら・・・晒(さら)したら・・・そんな妄想がいつしか沸き起こり、やがて妻を甚振る男は私から見ず知らずの男へ・・・。
 妻を他人へ・・・・なんて不道徳で、非人間的で、それでいてその背徳感に魂が震えるテーマなのだろうか。
 でも、私にとっては現実の世界では絶対起き得ない出来事、あってはならない出来事・・・あくまでも私の妄想の中でしかないテーマ・・・・だった。


 まゆみと結婚したのは、確か私が25、妻が23の時だった?・・・そして直ぐに長男のあつしが生まれた?・・・そんな頼りない言い方になるほど、夫婦としての時間が経ってしまっていた。
 結婚して恋人から妻になり、子供を産んで妻から母となり、何処の夫婦にでも起こり得る関係・・・・倦怠期 セックスレス・・・私達の場合はもう2年近くそれが無い。
 それでも私は妻を愛している、もちろん妻も私を愛してくれている。


 そんな私は3年程前にある試みをした事がある。
 とある寝とられ系のサイトの掲示板に書き込みをしたのだ。
 現実の世界で妻を他人と性行為させるなんて・・・。
 それはあくまでも妄想の中だけの出来事、現実にはそんな勇気も行動力も持ち合わせていない私が取った精一杯の試み・・・。
 その掲示板にこんな書き込みをした。
 『私の妻を題材にして、どなたか小説を書いて頂けませんか?  妻が見知らぬ男に陵辱されて悦(よろこ)ぶ姿が頭に浮かんで仕方ありません』


 返信用のメールアドレスを載せていた。
 返信なんて来るだろうか。
 冷やかしがほとんどだろう・・・でも中には奇特な物好きがいたりして・・・。
 2日後 ログインした。
 正直驚いた。
 20件近くのメールの数。
 しかし・・・大半は 『バカかお前は』  『人に頼らず自分で書いてみろよ』。
 そしてごくわずかな、奇特な人たち。


 取り合えず、執筆を申し出てくれた3人とメールのやり取りが始まった。
 私たち夫婦のプロフィールを提示する。
 私“ゆうじ”41歳は本名を、妻の“まゆみ”40歳は架空の名前“かおり”とした。
 そして書き手の趣向の確認。
 メールの文章に見え隠れする人柄を想像する。
 そして一人の人物を絞り込んだ。


 その“彼(かれ)” のメールからは、真面目そうで、それでいて厭らしそうな雰囲気が所々に感じ取る事が出来た。
 よし こいつに頼んでみるか!・・・万が一 面白い小説でも書いてくれたら儲けものだ。
 私は心とは反対に、バカ丁寧にお願いした。
 そして、彼(かれ)の小説が始まった・・・。
 今から 3年程前の事だった。


 彼(かれ)の小説は、私にとっては想いも寄らぬ興奮を与えてくれた。
 小説の中で調教され、羞恥の様を覗かれ、陵辱の限りの末 堕ちていった妻 “かおり”・・・。
 53話からなる小説を読みながら、何度自分を慰めた事か。
 小説のお陰で、それからしばらくまゆみとの夫婦生活は新鮮さを取り戻した。


 しかし・・・人間とはよく出来たもので、小説の余韻が消えると再び倦怠期の時間がやって来た。
 私の蘇った性に対する欲求は・・・・?
 それでも私は満足している・・・。
 何故なら・・・。
 それからしばらくして “愛人(かのじょ)”が出来たからだ。


 彼女の名前は “佐々木 綾(ささき あや)”。
 私が勤める商社の同僚だ。
 歳は現在43歳、妻まゆみと同い年。
 かれこれ2年近くの付き合いになる。


 妻のまゆみは、身長155cm 比較的小柄だが男の目を惹く88cmのバストが今でも自慢だ。
 彼女 綾は 身長165cm バストは82cmと小ぶりだが、90以上のヒップが男をそそらせた。
 結婚経験が一度も無く、もちろん出産経験も無い。
 会社勤めも長い彼女が、“お局様” と呼ばれないのは、嫌味の無い美貌と身の振り方、そして他人(ひと)に対して常に優しく振る舞えるからだろう。
 しかし・・・。
 私だけが知っている、いや 知ってしまった綾の本当の顔・・・・。


 切っ掛けは何処にでもある、部署の打ち上げだった。
 中堅社員として友人でありながら何処かでお互い空気のような存在。
 そんな私たちが、ある夜 酔った勢いで一つになってしまった。
 彼女の一人暮らしのマンションだった。
 そして始まってしまった二人の淫靡な時間。


 私に妻がいる事をよく理解してくれている女。
 妻に出来ない事を何でも応じてくれる女。
 犯(や)りたい時に犯(や)らせてくれる女。
 妻が今までしてくれなかった事を、平気でしてくれる女。
 便利な女。


 ある時は売春婦。
 ある時は清楚な人妻。
 ある時は社長婦人。
 ある時は怪しいマダム。
 いくつもの顔を演じれる女。


 綾(あや)との淫靡な時間を過ごせば過ごすほど、家では良い父親、良い夫を演じれる私がいる・・・・ただし、セックスレスである事を除いてだ。


 『ゆうじさん いつでも言ってね私が邪魔になったら。奥さんにばれそうになったら いつでも消えるからね』
 そう言って屈託の無い笑みを浮かべる女。


 一瞬申し訳なさそうな顔をしながら、心の中で舌を出す私がいる。
 今度会う時はどんな“プレイ”をしようか。
 妻が寝た後 パソコンを開いて妄想に耽(ふけ)る私。
 露出?
 縛り?
 放尿?
 アナルセックス?
 他には・・・・?


 一通り試したプレイも、場所を変え、小道具を加え、衣装を変えれば又 違った刺激が生まれてくる。
 今夜も そんな事を考えながら股間を大きくする私がいる。
 近藤ゆうじ 44歳。
 43歳の妻まゆみと、先月大学1年生になった長男あつし、そして高校1年生になった次男たくみ・・・・幸せな家庭を持つ私だった。