小説本文



私の目は見開き、喉はカラカラに渇いていた。
 そして股間の物はパンツを圧迫していた。
 綾の話に興奮を覚えながらも、最初に思っていた疑問を何とかぶつけてみた。
 「綾、まさか最初の飲ませた酒には、何か媚薬とか催淫剤みたいな物を入れてたんじゃないのか」


 私のその言葉にも、綾は嬉しそうに微笑んでいる。
 「ふふ、実はね・・・」
 「・・・・・・・」


 「まゆみさんに飲ませたのはね、ただのレモン水なの」
 「えっ!? ・・・・た ただのレモン水・・・・・・」


 「そう・・水にレモン汁を入れただけの物なの・・・それをわざと“お酒”ってウソをついて飲ませたのよ」
 「何で・・そんな事を・・・・」


 「ふふ、一種の心理操作見たいなものよ。お酒って言う事で・・・・“酔った勢い”  “お酒の力” ・・・心に言い訳を作ってあげるためよ。その方が後になっても私に抱かれたのはお酒のせいに出来るでしょ」
 「綾・・・・君は そんな事まで考えてたのか・・・」


 「・・・・・ええ」


 綾は事の成り行きをスンナリ話してみせたが、実際にその時は心理的なテクニックと性技を存分に使ったのだろうが・・・。
 それにしても私の何気ない一言で始まったこのストーリーは、綾の見事な演出もあって凄い出来を見せていた。
 妄想でしかなかったテーマ。
 妻が見ず知らずの男に陵辱、調教されて悦(よろこ)ぶ姿・・・。
 いや、良く知る女に調教され悦(よろこ)ぶ妻の姿・・・なのだが。


 「うふふ ・・・ゆうじさん、興奮した?」
 「あっ ああ・・・・で でも・・・今のは綾の作り話だろ?」


 「・・・・・・・・・・」
 「まゆみは俺とSEXした時だってオ・・オマンコの4文字をなかなか口にした事は無いぞ・・」


 「・・・・・・・・・・」
 「逝きそうになる時、俺が誘導すると小さい声でオ・マ・ン・コって言うぐらいだ・・」


 「ふふ、・・・じゃあ次は私の話だけじゃなくて実際にその目で見てみましょうか?」
 「えっ ええ!・・・・」


 「それとも、ゆうじさんが前に見せてくれた“あの小説”みたいにDVDに撮った映像で見てみる?・・・・・私はどっちでも良いわよ」
 (・・・・・・・・・・)


 「・・・・・・・・・・」
 「わ わかったよ、そこまで言うなら一応信じるよ。・・・・・・それで綾・・・・その・・行為の後はどんな感じだったんだ? それと・・その・・・2人の関係はこれからも続けて行けそうなのか? ・・・・・・まゆみがもう1度綾の誘いに乗るとは思えないんだけど・・・」


 「・・・・・・・・まゆみさんは“女”と交わったという後悔も少しはあったと思うの。でもそれ以上に満足したと思うわ。まゆみさんかなり欲求不満だったみたい、帰り際に『また楽しみましょうね』って言ったら、恥かしそうに黙って頷いていたわ」
 (嘘だろ・・・・・・・)


 「うふふ・・・さあ これからゆうじさんは、どうなってしまうのでしょうか」
 不意に綾が、テレビのナレーションのような声を出した。
 そうなのだ・・・・。
 私はこれから・・・・。
 そしてまゆみは・・・・。


 先日の夜に、生理だと言ったのはやっぱりウソに違いない。
 綾との情事の痕(あと)を見られるのを恐れたのか?。
 僅か数時間の綾のテクニックで虜(とりこ)になった身体を、私に開きたくなかったのか?
 まさか綾に操(みさお)をたてたという事は無いだろうが・・・・。


 3年ほど前、セックスレスだった私は、“ある小説”の影響でしばらくの間まゆみを抱いた。
 そしてその後は、また2年近くセックスレスだ。
 今回のモデルの話から今の“レズ”の話・・・私は確かに興奮を覚えた。
 この勢いでまゆみを求めたとしても・・・・まゆみが拒み通したとしたら・・・・。
 それでも‥・・“綾がいるじゃないか” ・・・・と言う事になるのか?


 「ゆうじさん どうしたの? 黙り込んじゃって」
 「・・・・・・・・・・・・」


 「えへ、ホテルに入って何もしないって初めてよね? どうする?もう帰る? 時間になっちゃいますよ」
 「あっ」


 「ねえ まゆみさんの事 考えてもうギンギンなんでしょ」
 綾の瞳に娼婦の色が浮かんだ。


 「うふ・・・下だけ脱ぎますね、下半身だけを晒しあってやるのも興奮するわよ」
 そう言って綾が、スカートのジッパーを降ろし始めた。
 私はそれを見て、ベルトに手を掛けた。


 カーテンを開け、窓に手を付いた中腰の生尻に欲望を打ちつけた。
 窓から見える夜景の向こうに、まゆみの痴態を思い浮かべた。
 四つんばいになり、おしげもなく陰部と肛門を拡げる妻。
 その陰部の突起を自分の指で擦り続ける妻。
 卑猥な声を上げながら、その大きな乳房を揺らす妻。


 私の高鳴りは一気にクライマックスにたどり着く。
 崩れ落ちる綾を見下ろしながら、先程の言葉が頭に付いた。
 『~次は私の話だけじゃなくて、実際に見てみたいでしょ』
 

 頭の中にまだまだ黒い欲望が広がっていく。
 まゆみ・・・・。
 綾・・・・・・・。
 まゆみ・・・・。
 綾・・・・・・・。




 ホテルを後にした私は一人、タクシーを拾った。
 あの夜 ・・・ 昼間“女”と交わった“痕(あと)”を、これっぽちも見せなかったまゆみ。
 しかし、考えてみれば私も綾との情事を2年近く続けているが、ばれそうになった事も無ければ当然ばれた事も無い。


 今回 綾とまゆみが“深い関係” になったわけだが、その事で綾がまゆみに私との関係を告白する事はありえない。
 私は今まで通り綾との関係を続けながら、まゆみの痴態を覗く事になるのだ。
 後はその痴態に興奮を覚えて、まゆみと2年ぶりのSEXをするかどうか?
 いや、まゆみとのSEXは、もう少し我慢だ。
 綾の報告を聞き、ビデオを見て、生で現場を覗き ・・・ そして 私の脳みそが最高のボルテージに達した時、まゆみを抱くのだ。 


 先程 別れ際に綾は言った 『しばらくまゆみさんとは定期的に会わせてもらうね。早退や直帰も上手くフォローしてね』
 最後の口調は、会社にいる時のそれだった。
 定期的 ・・・ 雰囲気からは、週に1~2度と言う感じを受けた。
 『そのうち私達の様子をこっそりビデオに収めるね』 ・・・ 綾の目が悪戯っぽく波打っていた。
 『ゆうじさん好みの女に調教してあげるわね』 ・・・ 綾の口が妖しく歪んでいた。
 『うふふ、もう止めてくれって言っても遅いかもよ』 ・・・ 綾の顔は卑猥な色を浮かべていた。
 タクシーに揺られる私は、硬くなっている股間をズボンの上から押さえていた。