小説本文



綾に見送られマンションを出た私に、夏の陽射しが届く。
 綾は別れ際にもう一つのメッセージを残した。
 いや、それは綾(かのじょ)の最後のジョークかも知れない。


 『まゆみさんは鏡の向こうにゆうじさんがいる事を知らなかったと思いますか? 知ってたと思いますか?』
 電車に揺られる私の中に、その言葉が残っている。
 しかし・・・・。
 それもどっちでもいいような気がしてきた。


 家に着いた私は休日の残りをのんびり過ごした。
 あの数時間前の出来事は、幻だったのか。
 でもそれもどうでもいい事か。
 今夜まゆみを抱こう・・・。


 まゆみが帰ってきたのは夜の6時頃。
 「ただいま~、遅くなってゴメンね。お腹空いたでしょ?」
 少しはにかんだ明るい声だ。


 「“ゆう” ・・・ ゴメンね一人にしてて。来週は何もないからネ」
 昔から変わらないまゆみの表情(かお)だ。


 食事をして、風呂に入り、テレビを見る。
 平凡な日曜日の夜だ。


 寝室に入った私に高鳴りがやって来る。
 まゆみが部屋に入ってきた。
 いつもの風呂上りのレモンの香りを漂わせている。
 今夜のまゆみは薄いネグリジェだ。


 肌の手入れを終えたまゆみがこちらを向く。
 薄い片化粧が妖しい雰囲気を醸(かも)し出している。
 まゆみが部屋のスポットを落とす。
 “隠微なストーリー”の幕開けか。


 私は黙ったまま、まゆみの前に立つ。
 2人の顔と顔の距離はほんのわずか。
 まゆみの目を見つめながら、パジャマのボタンに手を掛けた。
 まゆみが背中に手をやると、ストンとネグリジェが下に落ちた。


 目の前には紫色のハーフカップブラにお揃いのTバックショーツだ。
 私の大好きな大きな乳房が目に映る。
 私は続けてズボンに手を掛ける。
 私の股間は既に盛り上がっている。


 まゆみが背中に手をやり、ブラジャーを外すとソレをそっと床に置く。
 私がパンツの端に手をやると、まゆみも合わせるようにショーツの端を掴んだ。
 私達は見つめあいながら、ゆっくりソレを降ろしていった・・・・・。


 私達は向かいあい見詰め合っている。
 互いに何一つ身に着けない生まれたままの姿で、向かい合っている。
 シーンと静まり返った寝室の中は、これから“儀式”でも始まる前の静けさだ。


 コチコチ時計の秒針の音だけが響く。
 静寂が羞恥を演出して、互いがその快感を得ようとする。


 私の右手がゆっくり上がる。
 その手に導かれるようにまゆみが近づいた。
 私はまゆみを抱きしめ、唇をふさぐ。
 2年ぶりのキスだ。
 2人の陰毛が肌に触れ合う。
 私の性器がいきり勃(た)つ。


 ベットに倒れ込んだ私達は唇を貪(むさぼ)りあった。
 私の唇がまゆみの口から咽元(のどもと)、胸そしてそこから下へと向う。
 夢中に身体中に吸い付きながらヘソの下の翳(かげ)に向った。


 懐かしい薄い陰毛が見える。
 まゆみの両膝を開くと、一番大好きな粘膜がソコにあるのだ。
 私はソコの蜜を味わいに顔を近づけた。


 (?)
 まゆみの陰部の直ぐ横に、2cmくらいの痣(あざ)?がある・・・。
 私は更に顔を近づけた。
 薄暗い照明の下、私の瞳がその輪郭を確認する。


 “綾”
 (あ・・・あや・・・・)
 「ああーーーー!!」


 まゆみの口元が歪み、陰部の反対側に手を当てソコを拡げた。
 私の目がそちらに吸い寄せられる。
 そこには・・・・・。


 “武”
 (・・・た・け・し・・・・)
 「あああーーーー!!!」


 まゆみの陰部を真ん中に右側には“綾”の刺青が、そして左側には“武”の刺青が・・・・・・。