小説本文



 私は放心状態でソファーにもたれ掛かった。
 綾は私に素直に成れと言った。
 自分の本当の気持ちを曝(さら)け出せと。


 私は確かに妻が見知らぬ男に陵辱され、調教される場面を夢見ていた。
 しかし、それはあくまで頭の中だけの事、妄想の中だけの事だった。
 それが今現実になって目の前で行なわれたのだ。
 醜い中年腹の男、性欲の塊のような男、脂ぎった汚(きたな)らしい男 ・・・ その男達が代わる代わるまゆみのソコに欲望のシンボルを挿入していたのだ。
 そして、まゆみはその行為に歓喜の声 ・・・ 私が一度も聞いた事の無い、まゆみが聞かせた事のない声を高々と上げていたのだ。
 妻の痴態を信じられない自分と、夢に見たシーンに興奮を覚える自分、そして素直に反応した下半身がここにある。


 この後まゆみは本当に素顔を晒すのか。
 裸の男達が言っていた ・・・ この後奥様は素顔を晒すと・・・でも帰る女(ひと)もいると・・・・・・・・。
 まゆみはどうするのだ?
 このまま姿を見せず ・・・ 仮面の裏の素顔を見せずに帰るのか? それとも・・・・。
 もしまゆみがこのまま現われなかったら・・・・。


 会場の端で森川が時計を見た。
 左端の方に人の気配が湧いてきた。


 「皆様、体力、いや精力は回復してきましたか? ・・・ では そろそろ第2ラウンドに入りたいと思います」
 (・・・・・・・・・・・・・・・・・)


 「それでは再び奥様方に登場して頂きましょうか・・・・じゃあ どうぞ」
 森川の声に左側から仮面だけの全裸の女性が現われた。
 軽く胸を張り、澄ました口元で真っ直ぐ嫌味の無い歩き方だ。
 武(かれ)に歩き方までレクチャーされたのか、娼婦としての立ち振る舞い方を叩き込まれたのか。
 目の前で仮面だけを着けた裸の女が、横一列に並びこちらを向いた。


 改めて見る異様な光景だ。
 胸の膨らみを隠そうともせず、股間の翳(かげ)りもそのままだ。
 そしてその中の一人は間違いなく妻のまゆみだ。
 ゴクリ ・・・ 私はツバを飲み込んだ。


 「それでは奥様方が並ばれたところで、又 “宴”を始めたいと思いますが、この後奥様は今着けている仮面を外して素顔を晒します・・・・」
 (・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)


 「しかし・・・・中には流石に素顔は見せられない、見られたくない・・・今日はもう満足したのだからこのまま帰りたい ・・・ そう思っている女(ひと)もいるかも知れません・・・・」
 (・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)


 「そう思われても仕方ありません・・・・・これから先は奥様方に誰も強制はいたしません。帰りたいと思っている方には帰っていただこうと思います・・・・」
 (んん・・・・・・・・)


 「しかし!・・・・素顔を晒してでも、もっともっと快楽を得たい、あるいは素顔を晒さなければ本当の羞恥の快感を得れない・・・そう思っている奥様もいらっしゃるかも知れません・・・」
 (・・・・・・・・・・・・・・・・・)
 (・・・・・・・・・・・・・・・・・)


 シーンと静まり返った会場の中を、森川のシドシドと語る言葉が裸の男女の身体に振りかけられる。
 鏡に映る自分の裸を見つめ、森川の言葉をどう受け止めたのか、女性はみんな黙ったまま前を見据えたままだ。


 「では・・・・、奥様はまずその場で後ろ姿を見せるように振り向いて下さい」
 森川の言葉に4人の女性はくるりと回れ右をするように後ろを振り向く。
 私の目には、今度は4つの背中と4つの大きな尻が飛び込んできた。
 その中の一番左端の臀(しり)は、私の記憶にあるまゆみの臀だ。


 「はい・・・。それではそのまま真っ直ぐ前に進んでください・・・・・・・・・・・そうです、ベットの端が膝に当たる所まで進んでください」
 奥様方が森川の言葉に操られるように、乱れぬ素振りでベットの端へと進む。
 そしてその場で背中と臀を向けたまま、畏(かしこ)まる様に立ち止まった。


 「・・・・奥様方は普段は貞淑、良妻と呼ばれ、家に帰れば良き夫がいて可愛いお子様がいらっしゃいます。社会的にも何一つ不自由なく暮らしてらっしゃると思います。それでも! ・・・それでも心の奥に蠢(うごめ)く欲望に我慢しきれず、素顔を晒してまで快楽を求めるのか?・・・・・・それとも家に帰って普通の主婦に戻るのか?・・・・・・それではもう一度奥様の“心”に問います・・・・」
 (・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)


 (・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
 (・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
 森川があえて間(ま)をとる。
 女達に主婦に戻るか、娼婦を続けるかを選択させようとしている。


 「よろしいですか・・・・・では、奥様方・・仮面を外さずに目を閉じてください。・・・そのまま私が、よし! と言うまで目を開けてはいけません。そして決して隣の人の様子を探ってはいけません。自分の気持ちに正直に従うのです」
 周りを囲む男達からも生唾を飲み込む音が聞えてくる。


 「では、家に帰って普通の主婦に戻りたいと思っている奥様はそのまま立っていてください。・・・・いや!まだまだ自分の身体を味わってもらいたい、自分自身ももっと気持ちいい事をしたい・・・と思っている奥様は、ベットに上がり服従のポーズをとりなさい」
 (ふ 服従!・・・・・)


 服従のポーズ ・・・ それはあの小説、・・・武が書いた小説の中で、森川が“かおり”に奴隷である事を意識付ける為にとらせたポーズ・・・。
 それをこの場面で・・・・・・。


 森川の言葉の後は1秒 2秒 3秒とゆっくり時間が過ぎていく。
 静まり返る空間の中、男達の視線を背中に浴びながら女達はまだ黙って立ったままだ。
 微かに俯(うつむ)く、その頭の中にはどんな言葉が浮んでいるのか?
 15 16 17秒・・・と静寂が過ぎていく。


 沈黙がしばらく続いた時だった。
 一人の女性がゆっくりベットに足をかけた。
 (!!)
 そして四つんばいのポーズをとり始めた。
 「おお~」
 男の一人が痺(しび)れを切らしたように叫んだ。


 (まっ まゆみ!)
 思わず見開いた私の目に、まゆみの姿が鮮明に映った。
 1番最初にベットに上がったのは左端の女性 ・・・ それは他の誰でもない、私の妻の・・・ま ま まゆみだ!
 まゆみは頭を下げ顔をシーツに埋め、首筋から尾てい骨の一本線を海老反る様に尻を高く突き上げた。
 まゆみはここにいる全ての男に、己のオマンコとアナルを曝け出したのだ。
 4人の中で誰よりも早く自分を買ってもらおうと思ったのだ・・・いや違う! 己自身の快楽をいち早く求めたのだ。
 自身の陰部を晒した“恥(は)したない”姿は、ま まさに服従のポーズだ。


 私のパンツの中の物が一気に膨らみ始めた。
 「おお~こっちもだ!」


 その時また別の歓声が沸き起こった。
 右から2番目にいた女性がベットに上がったのだ。
 たしか和美と呼ばれた女性も、その尻を高く突き上げ、これ以上無理だと言うほど股を開いたのだ。
 そして続いて2人の女も交互にベットに上がり、同じように四つんばいのポーズを決めたのだ。