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第7話
日曜日。
朝早く、まゆみは普段と何一つ変わらぬ様子で出かけて行った。
私は一人 家でやきもきしている。
しかし、考えて見れば今日一日で全ての事が進むわけではない。
綾のストーリーは、まず着衣のモデル ・・・・ それを何度か続けた後 ヌードをお願いする。
そのヌードになるか? なれるか? ・・・ 間違いなくそれが一つ目のハードルだろう。
私の中に緊張感と高揚感が湧き上がっている。
夕方、まゆみが帰ってきた。
少し疲れの色も見えるが、それでも普段と変わらない様子。
「まゆみ どうだった モデルは」
子供達のいない居間で明るく聞いてみた。
「う~ん・・とっても楽しかったわよ。先生や生徒さんも良い方ばっかりで」
「そうか・・それは良かったね・・・・・それで」
その時 階段の音が聞えてきた。
次男のたくみが降りてきた。
子供の前でモデルの話はまずいだろう ・・・ 私達はどちらからともなく話を打ち切った。
その夜、ベットに入った私は、まゆみが来るのを今か今かと待っている。
今日のモデルは、どうだったのか・・・。
風呂から上がり部屋に入って来たまゆみは、いつもの様に肌の手入れを行う。
どことなくその手入れの様子も、丁寧に見えるのは気のせいだろうか。
そしてベットに入ったまゆみに、思い出したように聞いてみた。
「そうだ そう言えば昼間のモデルはどんな感じだったの? ・・・ 佐々木さんはいたの?」
あえて無関心を装ったような私の声。
「あっモデルね、とても楽しかったわよ・・同じポーズを続けるのはちょっときつかったけど。それでも適当なところで休憩も入るし・・」
「そうなんだ・・・それで生徒さんは何人くらいいたの?」
「え~とね 今日は15人位かしら・・・・いかにも芸術家タイプのヒゲを生やした人が2,3人、それに美大生っぽい若い男女が3,4人、それといかにもスケベっぽい中年の人が3,4人・・・後は 私と同じ歳くらいの女性の人が4人かな」
「結構な数だよね・・・・それで・・どうだったの・・・その・・その時の気分とかは・・」
「う~ん その時の気分ねぇ・・・」
それまで天井を見ながら話していたまゆみが、くるりとこちらを向く。
私を見つめた瞳に何故だかドキッとした。
「“ゆう” ・・私ね その時 何だか変な気分になっちゃったの」
「えっ? 変な気分って」
「ずっと同じポーズをとってるとね、目だけしか動かせないでしょ・・・だからね どうしても生徒さんの顔とか仕種を追いかけて色んな事を考えちゃうのよ」
「・・・・・・・・・・」
「この人は何をしてる人だろう・・・この人はご主人がいるのかな・・・奥さんはいるのかなとか・・・それで私をジーっと見つめてキャンパスに向って筆を走らせるでしょ・・そして又 顔を上げて私を見つめるの・・・・そんな事を繰り返してたらね」
「・・・・・・・・・うん そうしたら?」
「うん そうしたらね、・・・たくさんの目にジーっと見つめられてると何て言うんだろう “心”を晒(さら)される気分になっちゃうの」
「心を晒す?」
「う~ん 上手く言えないけど、私の殻(から)が少しずつ剥(は)がされていく気持ちになるのよ・・・そして・・心の奥を覗かれると言うか・・・・上手く言えないけど・・」
(・・・・・・・・・・・・・)
「でも先生も終わった後に言ってたわ『モデルさんの中にある“心”を掴(つか)める人は良い絵が描ける』って・・・・私にはよく分からないけどね・・・」
「ふ~ん ・・・・・・それで生徒さんが描いた絵は見せてもらったの?」
「えっ ああ それはまだよ・・・だって1日で描けないんだもの・・・だからね、今度は水曜日の夜で、その次は日曜日なの」
「えっ そうなの」
「うん 行ってもいいでしょ、ちょっと位帰りが遅くなっても、あつしやたくみも手が掛からないんだから」
「あっ ああ大丈夫だよ」
「うん それとね、今日終わった後 4,5人の生徒さん達と少しだけお茶をしてきたの。そうしたらね何人かの人が私のヌードも描きたいって言うの」
「なっ 何だって!」
「でもね、それがそんなに厭らしい言い方じゃないのよ」
「・・・・・・・・・・・でも それはやっぱり下心が・・」
「ううん、言ったのはね芸術家風の男の人達だったんだけど・・・、その人の話を聞いてるとヌードってやっぱり綺麗で美しいものだと思っちゃったわ・・・・、綾さんも言ってたわ『見られる事によって内面から美しくなっていきますよ』って・・・・」
(・・・・・・・・・・・・・)
私は天井を向いたまま何とも言えない気持ちになっていた。
綾が考えたストーリーは見事なまで、素晴しいスタートを切ったのではないか。
とりあえず今日の着衣モデルは、後2回で終わりだ。
そうしたら次は・・・・。
まゆみはそのハードルを越えるのだろうか? 越える事が出来るのだろうか?
あるSMサイトに書いてあった話を思い出す。
SMの世界でも“才能”があるらしい・・Sの才能とMの才能が・・。
マゾにはマゾの才能が・・・・。
それに気付く者と気付かない者がいる。
しかしある時、ちょっとした出来事でその才能が開花するらしい。
露出プレイ・・・・。
嫌がりながらも見られる事に感じる者がいる ・・・ それは間違いない。
ひょっとしたらまゆみにとって今日のモデルは・・・・。
私は起き上がり、隣のベットのまゆみに手を伸ばそうとした ・・・ その胸の大きな膨(ふく)らみに。
しかし・・・・。
私が向けた瞳の先には、いつの間にか寝息をたてる妻の姿。
その寝顔を眺める私の顔に、自然と笑みが浮かんできた。
しばらくして、私も静かに目を閉じた。
朝早く、まゆみは普段と何一つ変わらぬ様子で出かけて行った。
私は一人 家でやきもきしている。
しかし、考えて見れば今日一日で全ての事が進むわけではない。
綾のストーリーは、まず着衣のモデル ・・・・ それを何度か続けた後 ヌードをお願いする。
そのヌードになるか? なれるか? ・・・ 間違いなくそれが一つ目のハードルだろう。
私の中に緊張感と高揚感が湧き上がっている。
夕方、まゆみが帰ってきた。
少し疲れの色も見えるが、それでも普段と変わらない様子。
「まゆみ どうだった モデルは」
子供達のいない居間で明るく聞いてみた。
「う~ん・・とっても楽しかったわよ。先生や生徒さんも良い方ばっかりで」
「そうか・・それは良かったね・・・・・それで」
その時 階段の音が聞えてきた。
次男のたくみが降りてきた。
子供の前でモデルの話はまずいだろう ・・・ 私達はどちらからともなく話を打ち切った。
その夜、ベットに入った私は、まゆみが来るのを今か今かと待っている。
今日のモデルは、どうだったのか・・・。
風呂から上がり部屋に入って来たまゆみは、いつもの様に肌の手入れを行う。
どことなくその手入れの様子も、丁寧に見えるのは気のせいだろうか。
そしてベットに入ったまゆみに、思い出したように聞いてみた。
「そうだ そう言えば昼間のモデルはどんな感じだったの? ・・・ 佐々木さんはいたの?」
あえて無関心を装ったような私の声。
「あっモデルね、とても楽しかったわよ・・同じポーズを続けるのはちょっときつかったけど。それでも適当なところで休憩も入るし・・」
「そうなんだ・・・それで生徒さんは何人くらいいたの?」
「え~とね 今日は15人位かしら・・・・いかにも芸術家タイプのヒゲを生やした人が2,3人、それに美大生っぽい若い男女が3,4人、それといかにもスケベっぽい中年の人が3,4人・・・後は 私と同じ歳くらいの女性の人が4人かな」
「結構な数だよね・・・・それで・・どうだったの・・・その・・その時の気分とかは・・」
「う~ん その時の気分ねぇ・・・」
それまで天井を見ながら話していたまゆみが、くるりとこちらを向く。
私を見つめた瞳に何故だかドキッとした。
「“ゆう” ・・私ね その時 何だか変な気分になっちゃったの」
「えっ? 変な気分って」
「ずっと同じポーズをとってるとね、目だけしか動かせないでしょ・・・だからね どうしても生徒さんの顔とか仕種を追いかけて色んな事を考えちゃうのよ」
「・・・・・・・・・・」
「この人は何をしてる人だろう・・・この人はご主人がいるのかな・・・奥さんはいるのかなとか・・・それで私をジーっと見つめてキャンパスに向って筆を走らせるでしょ・・そして又 顔を上げて私を見つめるの・・・・そんな事を繰り返してたらね」
「・・・・・・・・・うん そうしたら?」
「うん そうしたらね、・・・たくさんの目にジーっと見つめられてると何て言うんだろう “心”を晒(さら)される気分になっちゃうの」
「心を晒す?」
「う~ん 上手く言えないけど、私の殻(から)が少しずつ剥(は)がされていく気持ちになるのよ・・・そして・・心の奥を覗かれると言うか・・・・上手く言えないけど・・」
(・・・・・・・・・・・・・)
「でも先生も終わった後に言ってたわ『モデルさんの中にある“心”を掴(つか)める人は良い絵が描ける』って・・・・私にはよく分からないけどね・・・」
「ふ~ん ・・・・・・それで生徒さんが描いた絵は見せてもらったの?」
「えっ ああ それはまだよ・・・だって1日で描けないんだもの・・・だからね、今度は水曜日の夜で、その次は日曜日なの」
「えっ そうなの」
「うん 行ってもいいでしょ、ちょっと位帰りが遅くなっても、あつしやたくみも手が掛からないんだから」
「あっ ああ大丈夫だよ」
「うん それとね、今日終わった後 4,5人の生徒さん達と少しだけお茶をしてきたの。そうしたらね何人かの人が私のヌードも描きたいって言うの」
「なっ 何だって!」
「でもね、それがそんなに厭らしい言い方じゃないのよ」
「・・・・・・・・・・・でも それはやっぱり下心が・・」
「ううん、言ったのはね芸術家風の男の人達だったんだけど・・・、その人の話を聞いてるとヌードってやっぱり綺麗で美しいものだと思っちゃったわ・・・・、綾さんも言ってたわ『見られる事によって内面から美しくなっていきますよ』って・・・・」
(・・・・・・・・・・・・・)
私は天井を向いたまま何とも言えない気持ちになっていた。
綾が考えたストーリーは見事なまで、素晴しいスタートを切ったのではないか。
とりあえず今日の着衣モデルは、後2回で終わりだ。
そうしたら次は・・・・。
まゆみはそのハードルを越えるのだろうか? 越える事が出来るのだろうか?
あるSMサイトに書いてあった話を思い出す。
SMの世界でも“才能”があるらしい・・Sの才能とMの才能が・・。
マゾにはマゾの才能が・・・・。
それに気付く者と気付かない者がいる。
しかしある時、ちょっとした出来事でその才能が開花するらしい。
露出プレイ・・・・。
嫌がりながらも見られる事に感じる者がいる ・・・ それは間違いない。
ひょっとしたらまゆみにとって今日のモデルは・・・・。
私は起き上がり、隣のベットのまゆみに手を伸ばそうとした ・・・ その胸の大きな膨(ふく)らみに。
しかし・・・・。
私が向けた瞳の先には、いつの間にか寝息をたてる妻の姿。
その寝顔を眺める私の顔に、自然と笑みが浮かんできた。
しばらくして、私も静かに目を閉じた。