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第26話
『あなた・・・・ゴメンナサイ・・・』
その言葉を絞り出したまゆみの顔から、精気が薄れていった。
風呂上がりの上気した表情(かお)から赤身が消えて行き、顔全体がドロンとした翳(かげ)りで覆われたのだ。
「なっ・・・ど どうしたの・・・・・」
私の小さな声に、まゆみが視線を下に落とした。
唖然とする私の直ぐ目の前 ・・・ まゆみは身動きせずまるで人形のように固まっている。
「ま まゆみ・・・・な 何がゴメンなんだ・・・・」
(・・・・・・・・・・・・)
「あなた・・・・」
まゆみが顔を上げた。
人形のような目が私を見つめる。
(何なんだ・・・この雰囲気は・・・・)
私の心の奥を覗き込むように、そんな目が瞬きせず私を見つめるのだ。
言葉を失ってしまったかのような沈黙の時間が過ぎる。
その時まゆみの口元がゆっくりと歪(ゆが)んだ。
まるで魔女のような微笑だ。
「うふふ・・・私・・・しばらくは、あなたとSEX出来ないわ」
「えっ!? ・・・・・」
(・・・・・・・・・・・・・)
「ど どうして・・・・」
「どうしてもよ・・・」
まゆみのその声は、今まで聞いた事のない響きではないか。
夫婦の日常会話の声ではないし、まして愛を語り合う声でもない。
小さい声だが、強い意志の現われではないのか。
「な 何で? ・・・ ど どうして? ・・・」
独り言のような私の呟きだ。
「・・・・・・・色々・・・思うところがあって・・・・・」
「・・・・・・あの・・」
私が言いかけるのと同時に、まゆみがくるりと背を向けた。
再び肌の手入れを行なう後ろ姿を、私は眺めるだけだった。
その後はいつベットに入ったのかも覚えていない。
頭の中には色んな言葉が回っていた。
思うところ ・・・ とは何なのだ?
暗に“綾”との仲を示唆したのか?
自分に好きな“女(ひと)”が出来たと言う事なのか?
それともひょっとして・・・・・。
まさか、まゆみは私と綾の関係を聞いたのか?
綾の口から、長い間自分は裏切られていた事を聞いてしまったのか!?
綾はひょっとして私の前から消える間際に、まゆみに告げたのか?
先日感じた得体の知れない不安・・予感はこれだったのか。
私はじっとまゆみの背中を見つめていた。
次の日から、まゆみを遠めに見る私が居た。
いつも通り日常会話をするまゆみに対して、腫れ物を触る様に接する私が居たのだ。
会社では理由を付けて人事部に綾の事を聞いてみた。
正式な退社手続きはいつ行なうのか。
今度出社する連絡は来ているのか。
私にはもう、興信所にまゆみの素行調査の延長を頼む力が残っていなかった。
一日一日が息の詰まる思いで過ぎていった。
仕事もミスが目立ち、精神的にもまいっていた。
綾から出たオナニー、SEXの禁止令も、私にはそんな元気も考える余裕も無かった。
私の股間の物も役に立つのかどうか? ・・・そんな別の心配も考えるようになっていた。
『~しばらくは、あなたとSEX出来ないわ』 ・・・ あの夜から何日目だろうか、その日外回りから戻った私の机の上に、一通の茶封筒が置かれていた。
(あ ああ 綾だ・・・・・)
心の拠り所ではないが、それは何故だか私の閉塞感を破ってくれる物のように思えた。
その日の残務を何とか終わらせた私は、一目散でいつもの漫画喫茶へと向かった。
受付の時間さえももどかしく、席に付いた私はすぐにカバンからDVDを取り出した。
パソコンにそれをセットしながら、立ち上がる起動音をイライラしながら聞いていた。
やがて画面が明るくなり白い部屋が現われた。
(ど どこだ・・・・)
画面中央にはカメラに向かって一人掛けの小さなイスが置かれている。
画面がそのイスのズームを繰り返し、ピントを確認している。
(・・・・・・・・・・)
やがて画面が決まり、左端から人影が現われた。
その言葉を絞り出したまゆみの顔から、精気が薄れていった。
風呂上がりの上気した表情(かお)から赤身が消えて行き、顔全体がドロンとした翳(かげ)りで覆われたのだ。
「なっ・・・ど どうしたの・・・・・」
私の小さな声に、まゆみが視線を下に落とした。
唖然とする私の直ぐ目の前 ・・・ まゆみは身動きせずまるで人形のように固まっている。
「ま まゆみ・・・・な 何がゴメンなんだ・・・・」
(・・・・・・・・・・・・)
「あなた・・・・」
まゆみが顔を上げた。
人形のような目が私を見つめる。
(何なんだ・・・この雰囲気は・・・・)
私の心の奥を覗き込むように、そんな目が瞬きせず私を見つめるのだ。
言葉を失ってしまったかのような沈黙の時間が過ぎる。
その時まゆみの口元がゆっくりと歪(ゆが)んだ。
まるで魔女のような微笑だ。
「うふふ・・・私・・・しばらくは、あなたとSEX出来ないわ」
「えっ!? ・・・・・」
(・・・・・・・・・・・・・)
「ど どうして・・・・」
「どうしてもよ・・・」
まゆみのその声は、今まで聞いた事のない響きではないか。
夫婦の日常会話の声ではないし、まして愛を語り合う声でもない。
小さい声だが、強い意志の現われではないのか。
「な 何で? ・・・ ど どうして? ・・・」
独り言のような私の呟きだ。
「・・・・・・・色々・・・思うところがあって・・・・・」
「・・・・・・あの・・」
私が言いかけるのと同時に、まゆみがくるりと背を向けた。
再び肌の手入れを行なう後ろ姿を、私は眺めるだけだった。
その後はいつベットに入ったのかも覚えていない。
頭の中には色んな言葉が回っていた。
思うところ ・・・ とは何なのだ?
暗に“綾”との仲を示唆したのか?
自分に好きな“女(ひと)”が出来たと言う事なのか?
それともひょっとして・・・・・。
まさか、まゆみは私と綾の関係を聞いたのか?
綾の口から、長い間自分は裏切られていた事を聞いてしまったのか!?
綾はひょっとして私の前から消える間際に、まゆみに告げたのか?
先日感じた得体の知れない不安・・予感はこれだったのか。
私はじっとまゆみの背中を見つめていた。
次の日から、まゆみを遠めに見る私が居た。
いつも通り日常会話をするまゆみに対して、腫れ物を触る様に接する私が居たのだ。
会社では理由を付けて人事部に綾の事を聞いてみた。
正式な退社手続きはいつ行なうのか。
今度出社する連絡は来ているのか。
私にはもう、興信所にまゆみの素行調査の延長を頼む力が残っていなかった。
一日一日が息の詰まる思いで過ぎていった。
仕事もミスが目立ち、精神的にもまいっていた。
綾から出たオナニー、SEXの禁止令も、私にはそんな元気も考える余裕も無かった。
私の股間の物も役に立つのかどうか? ・・・そんな別の心配も考えるようになっていた。
『~しばらくは、あなたとSEX出来ないわ』 ・・・ あの夜から何日目だろうか、その日外回りから戻った私の机の上に、一通の茶封筒が置かれていた。
(あ ああ 綾だ・・・・・)
心の拠り所ではないが、それは何故だか私の閉塞感を破ってくれる物のように思えた。
その日の残務を何とか終わらせた私は、一目散でいつもの漫画喫茶へと向かった。
受付の時間さえももどかしく、席に付いた私はすぐにカバンからDVDを取り出した。
パソコンにそれをセットしながら、立ち上がる起動音をイライラしながら聞いていた。
やがて画面が明るくなり白い部屋が現われた。
(ど どこだ・・・・)
画面中央にはカメラに向かって一人掛けの小さなイスが置かれている。
画面がそのイスのズームを繰り返し、ピントを確認している。
(・・・・・・・・・・)
やがて画面が決まり、左端から人影が現われた。