小説本文




  ホテルのロビーは、かなりの人波だった。パッと見たところ、多いのは海外からの旅行者だ。私は彼等の視線さえ避けるように足を運んだ。前を行く渋谷君は慣れたものか、迷う事なく足を進めている。


 彼が足を止めたのは、エレベーターホールだった。そこは運良く、あまり人がいない。
 そこで彼は↑のボタンを押して「10階なんですよね」と呟いた。そして、周りの視線を気にしながら私の耳元に顔を寄せてきた。
 「係長、本日の接待ご苦労様です。先方の専務は既にお部屋にいらっしゃいます。社長の方は地下の喫茶室にお茶を飲みに行かれているようです」
 彼が私の緊張を解す為か“隠語”で状況を伝えて来た。そして小声で続けて来る。
 「係長、緊張してますよね。でも、ここまで来たら割り切って犯(や)っちゃって下さいね」
 「そ、そうですね…」
 「ふふっ、頑張って」
 私は彼の眼差しに「は、はい」と呟き、そして黙り込んだ。
 やがてエレベーターが到着して、上の階へと向かった。


 案内された部屋は、シングルタイプの思ったより狭い間取りだった。
 窓際に小ぶりなテーブルセットがあって、私達はそれぞれイスに腰掛けた。渋谷君が一呼吸置いて、私を真っ直ぐ見詰めてきた。
 そして。
 「では、奥様の方はシャワーを浴び終えてるでしょうから先生も…」
 その言葉に、口元を結んだまま立ち上がった。


 バスルームに入った私は、ジェルで固めた髪を濡らさないようにシャワーを浴びる。お湯の心地好さに目を閉じながらも、プレイのイメージを浮かべていた。
 ガウンに着替えてバスルームを出たところで「先生、はいコレ」渋谷君が手に持つソレを渡してきた。


 「あぁ、これが仮面ですか」
 「はい、着けてみて下さい」
 恐々と受け取って鏡の前で着けてみた。
 鏡の中に怪しい男が浮かび上がってくる。
 あぁ…これが私なのか。


 「フフフッ、まるで誰だか分かりませんよ。ええ、エロチックな感じです。うん、先生なら何でも出来ますよ」
 「あぁ…」
 「いいですか。先生はただの牡なんです。獲物を求める飢えた牡。相手は飢えた牝。飢えた者どうしで欲望をぶつけ合って下さい」


 彼の言葉を、鏡に映る仮面の顔を見ながら背中越しに聞いていた。
 その言葉は、不思議な感覚で身体の隅々に染み渡って行くようだった。同時に弱気な自分が消えていく気がするのは何故だろう。股間のアソコにも活力が満ちてきた気がする。これが仮面の魔力なのか。
 あぁ…犯(や)らなければならない。そんな気持ちが湧いてきた。


 「さぁ、そろそろ行きましょうか」
 声に私は、黙って振り返る。
 「そうそう、顔見せと声出しには気を付けて下さいね」


 渋谷君が先に廊下の様子を確認する。私は彼の合図で部屋を出る。
 彼の手には、隣の部屋のカードキーだ。それをドアノブの下の隙間に差し込む。解除の点滅があってドアが開かれた。
 私は素早く周囲を確認して彼に続いた。
 部屋は聞いてた通り、常夜灯だけで仄暗い。間取りは隣と同じようだが、薄暗くて奥の様子が分からない。


 「失礼します」
 薄暗い部屋の中に、透き通るような渋谷君の声。
 彼は足音を殺して奥へーーベッドの方へと進む。私も従うように着いて行く。
 彼が足を止めた直ぐその先、ベッドの端に腰掛ける後ろ姿を見る事が出来た。私と同じ白いガウンが、頼りない灯の下に佇んで観(み)えたのだ。


 「奥様、お連れ致しました」
 「………」
 「僕は一旦失礼しますけど、プレイが終わりましたら空メールを入れて下さい。直ぐにこちらの“先生”を迎えに参ります。では」
 渋谷君の畏まった言葉に、ベッドの後ろ姿が微かに頷いたのが分かった。
 彼はその後ろ姿に「ありがとうございます」落ち着いた声で告げて、そして私をチラリと盗み見した。その目にはどこか愉(たの)しげな色が浮かんでいる。


 渋谷君が出ていくドアの音を背中で聞いて、私は静かに深呼吸をした。そして、ゆっくりと近づいて行く。
 常夜灯の下、白いガウンになぜか神聖な気配を感じた。そして、私の手が白い肩に掛かって…。
 「………」
 無言のメッセージに、女が肩に置かれた私の手に自分の手を重ねてきた。私はその温かさに胸がキュンとなってしまった。
 シャワーのお湯のせいなのか、はたまた性への渇望が原因なのか“女”の熱さが伝わって来るようだ。
 その時、女が立ち上がって抱きついてきた。
 そして、私達は仮面越しに見つめ合った…と思ったのも一瞬で、私の唇は女に奪われていた。
 私の舌は女に絡み取られ、鼻の奥には香水の匂いが広がった。同時に背中がゾゾゾと粟立ち、意識の奥にあった“妻”の姿が霧に包まれていった。
 気づけば二人の口元から、嫌らしい音が立っている。
 ブチュチュ!
 ジュルジュルッ!


 声は出さないようにと云われていたが、この粘着音は構わないのか。その音の合間に渋谷君の声が聞こえてきた。
 『…相手は飢えた牝…飢えた者どうしで欲望を…』


 女の鼻からフンフンと嫌らしい音が聞こえている。間違いなく女の方は興奮している。
 女が舌を射し込んだまま、私のガウンの結び目に手をやって全てを剥ぎ取っていく。
 私を全裸にすると、次に女は自分のガウンを脱ぎ取った。そして私は、股間の物をギュッと握られた。ソコは女の手指によって、みるみるうちに硬くなっていく。


 反り上がったソレが二つの身体に挟まれたまま、私達は口づけを続けいていた。
 男根が感じる熱さはシャワーが原因なのか。それとも、コレが女の欲求に熱を発したのか。
 あぁ…女の鼻息がますます荒くなって行くではないか。この女は欲求不満が続いているのだと、自分に言い聞かせた。


 よし! “俺”が解放してやる。私の中にサディスティックな癖が湧き出てきた。この柔らかい唇から卑猥な叫びを吐き出させてやるのだ。
 私は指で女の乳首をつねり上げた。
 ンーーーッ!口づけの隙間から奇妙な叫びが上がる。
 なんだその叫びは!間違いなくマゾの叫びではないか。私は更に乳首を捻りながら舌を最奥へと射し入れた。
 私の口周りには女の鼻息が当たる。その艶かしさに呼応するように、私は唇を吸うだけ吸って、そのまま身体を押し倒した。
 イヤンッ!咄嗟に出た女の叫びなどもう気にしない。ベッドの上、私は強姦魔のつもりで股がったまま乳房にシャブりついた。
 目の辺りを仮面に覆われているが、そんな事はどうだっていい。匂いを嗅ぐようにジャブってやる。


 あぁ、乳首がビンビンに反応してるではないか。口からはくぐもった声が漏れてくる。間違いなく女は感じている。たっぷりシャブったら次はアソコだ。
 乳房から唇を這わせながら下腹へと進める。直ぐに口元が毛に触れる。あぁ、確かに剛毛だ。
 先だってのマジックミラー越しに曝されていた剛毛がこれなのだ。さぁ、この奥の秘密の部分を見てやるのだ。
 私は熟した股間の匂いを吸い込み、そして腿の内側に手を当てた。なるべく乱暴に、ガバッと拡げてやった。女にも覚悟を決めさせてやる。


 仮面越しの目に映ったのは、奇妙な生き物だ。
 ソレは仄暗い灯りの下で、パクパクと呼吸してるようだ。私はその左右のビラビラを鼻先で押し拡げて、唇を持っていった。そして、思い切り音を鳴らしてやる。
 ジュルジュルッ!
 ジュルジュルッ!
 ジュルジュルッ!


 ンアーーーッ!
 女の喘ぎが、暗がりを引き裂いた。
 私は泥濘に射し込んだ舌を回しながら、恥豆も責めてやる。
 ビンビンに尖った突起を舌で転がし続けてやる。
 上目遣いに目線を上げれば、左右の乳房の間に口を手の甲で押さえる仮面の女だ。声を出さないように必死になってやがる。私の責めに間違いなく感じているのだ。身体が、ますます熱くなっていくではないか。次の責めはアソコだ。


 私は女の片膝を持ち上げて、横向きにして尻にピシャリとムチを入れてやる。女も心得たものか、腰を浮かせて四つん這いになっていく。
 その丸みは暗い灯りの下でも、輝いて観(み)える。大きさは…あぁ、覚えのある大きさだ…。
 頭に血が昇っていき、尻の肉厚を両手で鷲掴んでそのまま上下左右にコネクリ回してやった。その中心で歪(いびつ)にゆがむ不浄の門。ソコを凝視してやる。


 ーー尻(ケツ)の穴 丸見えだよ。
 心の中で卑猥な声を掛けてやった。その言葉に私自身の身体がブルっと震えた。気がつけば私はアナルに舌を射し込んでいた。そしてソコを抉るように舐めてやる。ヒクヒク匂いを嗅ぎながら、唾液まみれにしてやる。


 ーー以前は尻(ケツ)の穴を見られのが恥ずかしいってか。でも今は嬉しいんだろ。
 おい、どうなんだよ。
 ほら、マンコ拡げてお願いしてみろよ!
 心の問いかけに、女穴がヒクヒク返事をした。
 私は股間の男根を握ってみる。間違いない巨(おお)きさだ。
 あぁ…遂に…。
 私の先っぽから我慢の汁が溢れてるではないか。
 コレを目の前の穴に射れるだけで良いのだ。後は勝手に反応して、快楽の局地に導いてくれるのだ。


 そして私は、女の膣(アナ)にソレをぶちこんだのだったーー。