小説本文




 ーー金曜日。
 今朝の私の挨拶も硬いものだった。
 妻の方も重い雰囲気が続いてる感じで、食事も互いが無口なままで採る事になってしまった。
 食事が終わればそそくさと出勤の準備をして、私は重い荷物を背負った気分で家を出た。


 学校に着けばこの日も、生徒の親からクレームが来ていた。それを処理すると、待っていたのは学年主任の小言だ。
 授業中はスマホを弄る生徒を注意しては、逆に挑発的な目を向けられて気疲れしてしまった。


 昼休みは一息つけるように、リラックスしようと思った。
 昼食を食べ終えた私は、背もたれに身体を預けて伸びをして、肩の力を抜きながら目を瞑った。


 今日は陽射しが暖かい。
 気温も上がってきている。
 お腹は満幅だ。
 今にも睡魔がやって来そうな気配を感じる。
 このまま少し寝てしまおうか…。


 どこからともなく、黒い雲が降りて来る…。
 …若い男の前に、一人の女性が立っている。


 ーーなに突っ立てんだよ。ほら早く脱ぎなよ。
 は?恥ずかしいってか。
 何を改まって。
 まさか旦那に悪いなんて思ってないよね。さんざん裏切ってるんだからさ。


 ーーあぁ…でも、こんなのは初めてだし…。


 ーーでもね、1度やったら直ぐに慣れるんだからさ。
 それに言っておいた通り、お相手は若い男だけなんだから。
 先生も嬉しいでしょ。


 ーーは、はい。


 ーーそう、素直にならないとね。
 じゃあ脱いで。


 ーーああ、はい…。


 ーーうん、いいねえ。
 30代には見えないよ。やっぱり子供を産んでないからかな。
 さぁ最後のパンティーも脱いだら、そこで気を付けの姿勢で立ってみてね。


 ーーああ…こうですか?


 ーー手は腰の横でしょ。
 学校の先生なんだから、分かるよね。
 そう、うん、隠さないでいいんだから。
 あれっ、そこの毛ってそんなに 毛深かかったっけ。


 ーーあっいやん。


 ーーフフ。
 じゃあその格好のまま言ってみようか、さっき教えたよね。


 ーーは、はい…。
 あ、あなた…アタシ、これから若い男の方とオマンコします。
 アタシ…あなたとのセックスじゃずっと満足できなくて、同僚の先生と浮気してたんです。けど…それも満足できなくて…。
 そんな時、偶然に渋谷君と出会って…そして、その彼に抱かれたんです。


 ーーえっ何だって?もう一回言ってみて。


 ーーあぁ…そう、ダメでしたね『抱かれる』なんて上品な言い方は…。あぁ、オマンコです。彼にいっぱいオマンコしてもらったんです。
 彼はアタシが本当は淫乱で下品な女である事を教えてくれたんです。同時に本性を素直に出せるように調教もしてくれたんです。
 今のアタシ、彼が言う事なら何でも出来るんです。それでも彼は時々キツイ事も言うんです。
 それでアタシ…売春するんです。はい、人妻教師の売春婦になるんです。
 命令された時は恐怖に震えましたわ。でも、どこからか喜びも沸いてきたんです。自分の中にこんな願望もあったんだって気づいたんですから。
 でも、それには試験があるんです。
 お相手するのは、彼のお知り合いの若い人達なんです。それで、その方々が満足できるか、身体や舌の使い方、それにアソコの締まり具合なんかをテストしてもらうんです。
 あぁ…これに合格したら、アタシは晴れて肉便器の女教師って事になるんです。


 ーーフフフ、いいねえ。なかなかよく言えたよ。そうそう久美子って語る事でオマンコ濡らすんだよね。
 ほら、確かめてみてよマンコ拡げてさ。指、突っ込んでさ。


 ーーあぁ…こうですか?こう、ガニ股に…。
 ウアァ、あぁ…濡れてますわ、はい…。


 ーーおっ、いい画(え)だねぇ。動画にも撮っとくか。
 うん。さぁそのまま云ってごらん。向こうに旦那がいると思って。
 ほら、寺田先生にさ。


 立ったまま股座(またぐら)を拡げて、ソコを弄っていた女の指がヌボっと抜き出て、私の方に向かってきた。
 その濡れた指が私の肩を掴み、そして揺する。


 んぐっ。
 んかが。
 んはっ。


 「ちょっ、ちょっとどうしたんですか寺田先生。悪い夢でも見てるんですか。しっかりして下さいよ」
 ハッと気が付けば、同僚の手が私の肩を揺らしていた。
 またも白昼夢か。私はバツが悪そうに誰にでもなくペコリと頭を下げてから首筋の汗を拭った。


 立ち去る同僚を横目に、頭を振って今の夢を思い浮かべてみる。あの本【白昼夢】にも刺激されての夢だったか。出てきた女性は久美子で、若者は渋谷君か…なんて思いながら苦笑いをした。
 それにしても先日の夜に妻が口にした言葉『…好きな事を…』ーーあれは実際、どう意味なのだろう。妻は半年前から“何”をして来たのだろうか。
 あの言葉の意味を深読みしてみれば【白昼夢】の女性のように、夫ーー私の目を盗んで“男”と会っていた、とか。妻の“ソレ”の理由が、私と同種の病的な振る舞いであれば、こちらの気持ちも少しは救われる…そんな変態的な考えも一瞬想ったわけだが、もしも本当にそうだとしたら…。あぁ、でもこれも又私の妄想なのか…。


 私は午後からの授業を続けながらも、好奇心が湧く自分を感じていた。妻の動きが気になって仕方なくなってきたのだ。
 と、そこで渋谷君だ。
 渋谷君達の仕事に“尾行”は、あるのだろうか。
 そこに考えついたところで、急に彼ーー渋谷君に会いたくなってきた。
 心の何処かには彼が体験して来た“仕事”、それの続きを聞きたい私もいたのかも知れない。それも良しだ。とにかく渋谷君に会う事でストレスが軽減されて、私の好奇心も満たされるーーそんな自分勝手な欲望を新たに、彼に連絡をする事にしたーー。


 ーー渋谷君からの返事は、その夜に来た。
 夕方にメールを送ってからは、ずっとヤキモキしながら待っていたのだ。
 そういえば彼は、2年前に予備校を辞めたと神田先生から聞かされていた。その経緯を詮索する気はないが、若い彼から感じた繊細さとサディスティックな色。あれを思い出すと、興味が湧いて来る。それもあってか、彼からの返信を楽しみにしていたわけだ。


 《寺田先生、こんにちは。ご指名ありがとうございます(笑)
 その後はお元気でしたか。
 奥様の事や、何か諸々相談があるようですね。
 僕もいつも暇というわけではありませんが、先生の都合が良い日を幾つか出してみて下さい。
 では、よろしくお願いします》


 彼から送られてきたメールを読んだ後は返信をして、土曜日に会う約束をする事が出来た。時間は午後の2時だ。
 予定が決まると、心の中に高揚感が湧いてきた。 
 さあ、私の“癖”は満たされるのだろうか…。