小説本文



朝。
 夫の寝顔を見つめるのは夕べから何度目だろうと、無意識にそんな事を考えていた。
 身体は自然に食事の準備へと向く。


 朝食は哀しいかな、もの苦しいものだった。
 朝の片付けを終えると寝室に向かう。
 そして、音をたてぬよう引き出しを開ける。
 迷った末、水色の質素なショーツを握ると、立ち上がった。

  
 隣の部屋から微かにテレビの音が聞こえてくる。
 白いスカートを手に取ると、身体中に冷たい痺れが広がった。
 (ごめんなさい・・)
 と、そんな言葉が沸いたが、手が止まる事はない。


 高志の前に“その姿”を見せた時は、軽い恥じらいを覚えたが。
 バタンと閉まった玄関の音が、いつまでも心に残っていた・・・・。




 ブザーに門を開けたのは、意外にもゴリラの様な男、沖田だった。
 久しぶりに見るその横顔が、優しく見えたのは気のせいか。夏美は軽く会釈してその横を通り抜けていく。


 家の玄関扉が開くと、そこには幸恵がいて。
 幸恵の優しそうな目が、夏美のスカート姿を見て一層細くなる。
 夏美は黙ったまま幸恵の後ろを付いて歩いた。


 通されたのは何度か記憶にある部屋だった。
 堂島の冷たい目がジッと見つめていた。


 「良い格好じゃ」
 夏美のスカート姿を上から下までじっくり眺め下ろして、堂島が頷いた。


 「今日は仕事はよいぞ」
 (・・・・・・・・・)


 「今日はたっぷりいつかの続きをしてやろう。・・・たっぷりとな」
 (・・・いえ・・・)
 (・・・そんな・・・)
 その言葉とは裏腹に、身体の中から高鳴りが沸き起こってくる。
 俯く夏美に近づきながら、堂島がゆっくり着物を脱ぎ始めた。


 「フフ・・夏美さん、コイツが欲しかったんじゃろ」
 堂島が股間を握る様子に、夏美に武者震いが起こった。同時に“ソコ”に蜜が分泌した。
 (ああ・・)
 「さあ、跪きなさい」
 「・・・・・」
 「んん、何じゃ、まだ力ずくが必要か・・。どれ」
 そう言って堂島の太い腕が、夏美の肩を押さえつける。


 あっ、と声を上げ、夏美はしゃがみ落ちた。 
 顎を上げ、聳え立つ“男”が目に入ると、身体は自然と畏まる。


 「・・・・・・」
 見上げれば、堂島の冷たい眼差しに見下ろされている。
 「ほれ、“コイツ”を気持ち良くするのじゃ」
 鼻が引き寄せられ溢れる匂いを吸い込むと、心の中に崇拝の意識が広がった。


 「・・・・・」
 堂島の冷たい眼差しが続いている。
 髪の毛を掴まれると、呻きと同時に口が広がって。
 「ほれっ」
 堂島の“ソレ”が朱い唇を圧(お)し拡げ、夏美の舌が無意識に動き出した。


 夏美は咥えながらも、時折り口を離し、“ソレ”を見つめる。
 堂島に肩の辺りを引っ張られると、しゃがんだまま服を脱ぎ始めた。
 器用に上着からスカート、ショーツまで脱ぎ終える、ウンチングスタイルになった。


 「ふふ、どうじゃ、濡れておるか?」
 口元から卑猥な音をたてながら、堂島の言葉に手は股間に向かい、陰部に触れてみた。
 (ああ・・・こんなに・・・)
 確かな滑りを感じながら、夏美はフェラチオ行為を続ける。


 「夏美さん、どうじゃ儂の“コレ”は?」
 改まったその声に夏美は再び“ソレ”を見つめる。
 腰の奥から沸き上がる気だる熱を自覚しながら、夏美は“ソレ”を握りしめゆっくりと扱きたてる。
 魁偉な牡の肉棒は、細い指を弾く様にさらに巨(ふと)く、そして硬度をましていった。
 脈動が伝わる距離から見るその迫力は、甘い痺れと屈服の情感を呼び起こす。
 逞しすぎる牡の象徴が己の唾液で淫猥に輝く様(さま)に、熱情は抑えきれずにはいられなかった。
 股間は震え、大臀がもぞりと蠢(うごめ)いた。


 「どうなのじゃ」
 「・・・・ああ、これが・・・憎いです・・・」
 「ふふ、憎いか・・なるほどな。・・どれ、もっとしっかりシャブッてみろ」


 鼻の奥には、いつかの匂いが拡がっていた。
 (ああ・・この匂い・・・・)


 心の中に隷従(れいじゅう)の意識が広がり、気持ちが高まっていく。
 夏美がもう一度ソレを口に含むと、生臭い味が更に広がっていき。
 舌から疼くような悦(よろこ)びが、胸の中に湧き上がる。


 「さあ、そろそろ入れてやろうか」
 冷たい声が降り掛かってきた・・・・・・。


 「何日ぶりのセックスかのぉ。最初は、貴女の好きな格好でしてやろう」
 「・・・・・」
 「ほれ、頭の中に浮かんだ事を言ってみろ」
 「・・・・・・」
 「んん? どうじゃ」


 夏美は唇を離し、俯いた。
 「クク・・仕方ないのう」
 「・・・・・・・・・・・」
 「いつもの卑猥なパンティーを穿いてこんかったと思っとったが・・・まだ心に引っかかりがあるようじゃな」
 堂島がググっと口元を歪めると、夏美の腕を引き上げた。


 「ほれ!」
 バシリと臀(しり)に痛みが走りぬける。


 「どうなんじゃ。どんな格好がよいのじゃ」
 (・・・・・・・)
 「んん?・・」
 「・・ああ、はい。四つん這いで・・・」
 「・・・・そうじゃ 素直になれ」


 夏美はゆっくり両膝を床に付け、剥き身の白い臀(しり)を堂島に向けるとグッと突き出した。
 「ふふ、肛門まで丸見えじゃな」
 「・・ああ‥恥ずかしい‥」 
 「恥ずかしぃじゃと、嫌らしい汁がもう垂れてきておるぞ」
 「・・・ああ・・嘘です・・・」
 夏美のか細い声に口元を歪め、堂島は聳える肉棒を握り近づいた。


 「ふふ、昨日の夜は、旦那とはどんな格好でやったんじゃ・・犬の格好か?」
 「・・ああ‥主人の事は言わないで下さい」
 「んん・・分かっておるわい。直ぐに忘れさせてやるわ・・ほれ」
 その言葉と同時に、夏美のソコは肉の侵入を感じ受けた。


 「はアッ!」
 瞼の裏に激しい衝撃が走り、直ぐに身体の隅々に熱の放射が行き渡る。


 「おやおや、ココはもうグショグショじゃのう」
 確かに聞こえたのは、淫靡な濡れ音。
 告げられた通り、夏美のその場所はしどどに溢れて、肉弁と黒い茂みまでをベットリと濡らしている。


 「・・・あぁ・・こんなに・・・・」
 零れ洩れた言葉には媚の色が混じり、情感はせくり上がり、この惨めな状況に悦(よろこ)ぶ自分を意識した。
 そしてこの瞬間、心の奥底で望んでいたもの・・・それを自覚した。
 「・・・あぁ・・・」
 夏美は燃えるような息を吐き出し、臀(しり)に気を入れた。
 あさましい己の痴態を更に晒し、堂島の冷たい視線を背中一杯受け止めた。


 堂島が無造作に腰を振り始めた。
 「んあッ──」
 ブルっと絶頂の予兆に、汗を蒸気させる裸尻を震わせ、夏美の“ソコ”が締め付けた。
 「ああッ、り 理事長、も もう・・」
 早くも絶頂を覚悟した夏美の腰を掴んで、堂島はいっそう激しく攻め立てはじめる。
 「・・あぁ、死 死にます・・」
 泣き声で夏美はそう洩らしたが、弱りきった声には喜悦の響きがあった。
 「クク・・そうか・・・なら、もっと臀(しり)を振れ」
 落ち着いた声で命じ、堂島はブルブルと震える臀肌をパシリと一打ちした。
 「んああッ、ふ ふりますッ」


 夏美は苦悶の表情で眉間に皺を刻み、“男”の命じるまま、巨臀を揺さぶりはじめる。
 「アアッ、す 凄いいッ」
 凄まじい愉悦が燃え上がり、夏美は絶叫した。
 あられもない叫びを吐き散らして、獣の態勢の交わりに髪をふり乱す。


 「ふふ、今日は何度でも逝かせてやるぞ」
 堂島が腰を弾ませ、再び重みを叩き込む。
 「アゥッーーーー」
 夏美の口からは断末魔の叫びが上がり、四つに這った汗みどろの裸身に、凄まじい震えが走り抜けた。


 弾け飛んだ意識の中で、夏美は物狂ったように乱れ始める。
 「んああっ、いいーーーーっ」
 「そうじゃ、感じるままを口に出せーー」
 夏美は“男”の言葉に生臭い叫びを上げ、何度も「気持ちいいーーーっ」と叫びながら「ゆるしてッ」と泣いた。


 そして・・・・。
 何度も「忘れさせて」と叫び続けた・・・・・・・。