小説本文



部屋の扉が開いて堂島と幸恵が現われた。男達の動きが一瞬に止まる。
 夏美は両手両足を振り回し、立ち上がるとヨロメキながら堂島の元へ飛び込んだ。
 堂島が太い腕で夏美を抱き寄せた。


 夏美は堂島の胸に顔を埋めている。
 体臭とタバコの匂いが鼻の奥に広がったが、そんなものは気にならない。
 男達はマスク越しに二人の様子を捉えたが、夏美を追いかける事無く、布団の上のガウンに手をやった。
 そして各々は黙ったまま部屋を後にした。
 最後に残ったが沖田が、意味深に堂島を見つめてペコリと頭を下げた。


 夏美の肩に、幸恵の手から優しくガウンが掛けられた。
 堂島と幸恵に両肩を抱かれ、夏美がふら付きながら自分の部屋へと向かう。


 部屋へ入った夏美は、幸恵の手を借りながらベットへ滑り込んでいく。
 「‥心配しないで、朝まで私が此処にいてあげるわ」
 幸恵が優しく吐いた言葉に頷いて、夏美は静かに目を閉じた。


 堂島の姿は既に消えていた。
 夏美の鼻の周りには堂島のアルコールとタバコの香りが混じった独特の体臭だけが残っていた。
 しかしその残り香には、これまでの様な苦痛の味はない。 
 そして夏美は、眠りへと落ちていった‥‥。


 次の朝。枕元にいたのは堂島だった。
 「‥昨夜は悪かったのお」
 優しい響きが頭の上から掛けられ、夏美はゆっくり目を開けた。
 「もう心配はいらん。男共は朝早く帰って行ったわい」
 夕べの出来事を思い出すと、身体は強張ったが、それでも夏美はのっそりと起き上がる事が出来た。


 朝食は幸恵が部屋まで運んで来てくれた。
 病人の様に身体を起こし、夏美は半分ほど口にした。


 一昨日の夜と夕べの出来事については、今一つ分からない事が残っているが、目の前の幸恵の狂乱の痴態だけは頭にこびり付いていて。
 目の前の優しく微笑む幸恵と、映像の中で男を同時に受け入れていた幸恵のギャップが、どこかで信じられない気持ちだった。


 この日の朝は最初から予定は無く、しばらくして夏美達4人はここを後にする事にした。
 夏美は見送りに来た管理人の男のオドオドした態度に、夕べの出来事は夢では無かったと、苦い感情を思い出していた。


 夏美達が乗った車は晴天の空の下を、来た道を通り戻って行く。
 運転席は沖田で、その横の助手席には幸恵が座っていた。 
 後部座席では、堂島にもたれ掛かるように夏美が寝息をたてている。


 「‥眠りが浅かったんじゃな。よう寝ておるわ」
 堂島がボソリと吐いた言葉に、幸恵が振り向いた。


 「ご主人様、犯(や)ってもよかったのではないですか」
 幸恵が夏美の寝顔を確かめながら、落ち着いて話しかけてくる。
 「ん、‥いや、自分から股を開くようにならんとな・・・」
 堂島は嬉しそうに夏美の寝顔を見つめている。


 「・‥まあ、お楽しみは、これからじゃ」
 そう言って堂島がニコリと頷くと、幸恵と沖田、二人の口元がニヤリと歪んだ。
 何も知らずに眠る夏美を乗せ、車は順調に進んでいた。




 夜7時。
 堂島一向の車は途中の渋滞に巻き込まれたが、無事屋敷に到着した。


 「夏美さん、ご苦労様。渡す物があるからちょっと待ってて」
 屋敷の駐車場でキャリーバックに手をやった夏美に幸恵が声を掛けてきた。
 夏美の身体には、まだ気怠い感じが残っている。


 「夏美さん、はい」
 幸恵が紙袋を手渡した。


 「後で開けてみて」
 「‥‥‥」


 部屋に帰った夏美は、そのままペットへ倒れ込んだ。
 僅か2泊3日だったが、身体も心も疲れていた。
 しばらく横になって、荷物の片付けを始めようとのっそり起き上がる。
 一通りの片付けを終えたところで、幸恵から渡された紙袋に気が付いて。手元に寄せ開けてみた。
 恐々取り出してみれば、“ゴクリ”と喉がなって、それを凝視した。
 量感こそ無いが、グロテスクなその形。
 先端は見事に節くれだっていて、その反り具合に夏美は思わず身震いした。


 “ああ・・”これが大人のオモチャかと。若い頃、性に好奇心を覚えた時期に先走った知識の記憶、それが一瞬蘇ってきた。
 夏美はしばらく“ソレ”を握っていたが、我に帰ったように袋に入れ戻した。
 首筋に不快な汗が流れ落ちていて、浴室へ向かう事にした。


 夏美は浴室の壁の大きな鏡に、自分の裸を写しみた。
 改修工事の時に、この鏡の設置を支持したのは堂島だったのかと、夏美は考え付いて。
 堂島は、いつしかこんな心理的な揺さぶりを与える時を待っていたのかと‥‥いや、それは自分の考え過ぎなのかと‥‥。


 夏美は唇を軽く噛んで、胸を張ってみた。やはり乳房は少し大きくなっている。
 下腹も子供を産んでいないせいか、全く緩んではいない。
 腰の括(くび)れは今でも充分で、臀(しり)の張りも大きさも魅力的なのだ。
 夏美は鏡に背尻を向け、肩越しに振り向いた。
 熱い痺れが、身体の奥から、いや、股間の奥から沸き起こっていた。


 両足がジリジリと広がっていく。
 目の前の壁に両手を付き、顎を突きだしたまま背筋は前屈みに倒れていく。
 鏡の中では、巨尻が膨れ上がるように突きあがっている。
 夏美はもう一度、肩越しに振り返った。
 薄っすら瞼を開くと、無防備な尻が独りでに揺れているように見てとれた。


 (・・ああ、嫌らしい・・・)
 この惨めな卑猥な姿‥‥。
 しかし、これも自分の本当の姿の一部なのだ・・・。
 この格好で夫以外の男を受け入れたのだ自分は‥‥。
 そして悦(よろこん)だのだ自分は‥‥切っ掛けはどうであれ。
 夏美の意識は遠いところでそんな事を認めていた。


 いつの間にか夏美の手指はヘソの下を通り、翳りを掻き分け陰部に触れていた。
 両脚は自然とガニ股開きで、踏ん張っている。
 足の痺れに身体はゆっくり崩れ落ちていく。 
 いつしか肢体は四つん這いになっいて、夏美の指は力強さを増している。
 頭の中では腰を振る幸恵の姿があったが、気付けばそれは自分の姿に変わっていた。
 複数の男に弄(もてあそ)ばれる自分もそこにいても良いのか‥妄想の世界ではそれも許されるのか‥‥夏美は腰を揺すりながら自分の“女”を弄(いじ)くっている。

  
 「うっ、くっ、ん、んあっ!」
 小さい呻きと同時に、夏美は軽い頂に到達した。


 それからしばらく、夏美は蛙が押し潰された惨めな態勢のままうずくまっていたが。
 ゆっくり立ち上がり、朦朧としながら浴室から寝室へと歩み進む。
 先ほど一度袋に戻した“ソレ”を抱えるように床に座り込んだ。
 そしてうつ伏せの姿勢になり、ジワリと足を広げ、腰をゆっくり突き上げた。
 ディルドの根っこと先端を両手で持って、顔の前でじっくりガン見する。
 憎き男に教授されたようにソレを扱(しご)きたてると、口から「ああ」と、嘆きの声が漏れてくる。
 舌を出し、恐々裏筋に伸ばすと再び堂島の教授の声が聞こえてきた。
 思い切って口に咥え込んだ後は、無意識に夢中になっていた。
 そして唾液が行き渡ったところで、股間にあてがった。 


 膣穴が感じた肉厚は確かに違う物だったが、溢れる液体が夏美の右手を激しく導いていく。
 不自由な姿勢のままだが右手の動きはいつしか滑らかで、腕のリズムで腰も激しく揺れ動いていた。
 濡れ濡れの淫部の上では放射状の皺を拡げた肛門が、先程から物欲しそうに轢き付いている。


 「うっ、ううっ、あああ・・・」
 最後の尊厳を守ろうとして、夏美の口は漏れ零れそうな淫声を固く閉じ込めようとする。
 しかし、相反するように右手の動きは確実に高鳴りを求めている。
 眉間に皺がより、小鼻の穴は大きく広がり、両脚の震えが身体中に広がっていった。


 「ああ・・気持ち・・・いい・・・・」
 小さくくぐもった言葉には、確かな快楽の響が混ざっていて。
 その更なる響きを求めて、右手の力強さは増していく。


 夏美は股間に手を当てたまま、自ら仰向けの格好へと身体を動かした。
 股をこれでもかと拡げ、開いた左手で膝裏を身体へ抱き寄せる。
 頭を上げ、乳房の向こう、ベットリ付いた陰毛を掻き分けながら出し入れされる己の右手の様子が飛び込んできた。
 夏美は自分で自分にとどめを刺すように、それまで以上に突きたてた。


 「ううっ、うあっ、んん、んあっーーーーー」
 淫声の爆発と一緒に、そこから水流が溢れ出た。


 夏美はしばらくディルドを握ったまま、朦朧としていた。
 腰のあたりに冷んやりした物を感じて、起き上がった。
 冷たい感覚は夏美の心情を言い当てていた・・・「こんな物ではない」・・・・・。


 身体に痺れは残るが、それは虚しいものだった。
 手に持った“偽物”を眺め、夏美は哀しい吐息を吐き出した。
 間違いなく自分は“逝った”のだが・・・。


 床に広がった淫水の中に畏まるように正座座りして、夏美は顔を覆い塞ぎ込んだ。
 己の惨めさを認めながらも快楽を求め続け、そして確実に頂きを感じたはずだった余韻の後は更なる惨めさが襲ってきて。
 夏美はしばらく、その格好のまま座り続けていた・・・・・・・・。