小説本文



古い佇まいながら街の景観にしっかり溶け込んでいて、この辺りでは知らぬ者がいない堂島泰三の“御邸(おやしき)”。
 その屋敷の中の数ある部屋の一室で、夏美の調教は進んでいた。


 部屋の中央に設置されていた大きなベットの上では、夏美がまるで解剖台の蛙(かえる)の様に股間を立膝の状態で拡げている。
 その様子は、両方の掌(てのひら)でしっかり顔を覆っているが、間違いなく呻きの声が上がっていた。
 先ほどから、堂島が己の指2本だけで夏美の“女”を蹂躙していたのだ。
 堂島の太指は剥き身の股間の“女の花弁”を割り裂き、一本の指は膣中へ潜り込み、もう一本の指腹が女陰を蝕診する。


 「・・・あっっ・・・」
 己が上げた声に羞恥を刺激されてか、顔を覆う夏美の手指には力が入る。
 「・・や やめて・・」
 上がった声は弱々しいが、その声とは裏腹に“女”の奥からジュクリと蜜が分泌した。
 堂島の指は蹂躙を続ける。


 「・・・ああ・・・こ こんなの」
 屈辱の筈のこの状況にも、夏美の中からは血が沸騰する高まりが湧いてきて。
 「…ああ…う うそ・・・」
 「ほら、もう少ししっかり口に出せぬか?・・・んん? しっかり口に出せるようならもっと高みを味わせてやるぞ。・・・ほうら次は2本だ」


 堂島の誘いに、夏美は2、3度小さく首を振る。
 夏美の抗(あらが)いも堂島はまだ満足げに頷きながら、女体の片足を折り曲げた。
 右手の指を“女”に挿入したまま、堂島は夏美の折り曲げた膝を左手で抑えると、器用にクルリとうつ伏せに導いた。


 シーツに顔が突っ伏した己のその格好を、夏美はすぐに理解した・・あの夜に屈服を味わされた獣(いぬ)の型(かたち)だと。
 あの夜も快楽の狭間での格好であったが、今宵はあの夜とは彷徨(さまよ)う意識に差があって、厭(いや)でも羞恥を味わされる事になる。
 それは、夫にさえも数える程しか披露しなかった後ろの門を、今、憎き男の目に晒されているという事実。
 しかし、その羞恥の怯えを意識する間もなく現実的な悦楽に導こうとしたのは、憎き男の2本の指だった。


 「・・・うっ んあっ・・」
 絞り出た声を確かに意識して、顔の振りでハラリと落ちた髪の隙間から鏡に映る己の横顔が目に付いた。
 弛(たゆ)んだ背筋の続きにはつきたての餅のような臀部(しり)があり、薄暗い灯りの下でも熟尻の白さは眩しく映って見えた。
 堂島の2本の指は厭らしく、グチョリと半回転して再び最奥を突き立てた。


 「・・・あうっ・・ふ 深い・・」
 無意識に零れ洩れた夏美の小さな声を確かに聞き取って、堂島は親指と小指をググッと拡げる。
 女穴を突き刺す2本の指と、女陰に伸びた太い小指。
 そして剥(む)き出しになった“菫色の皺(しわ)”をなぞる親指。
  

 「ウアッ・・・アア・・・・・・」
 夏美の口から更なる呻きが上がった。


 夏美の声質に堂島は微笑んで。
 「ふふ、どうじゃ、三所(ミトコロ)攻めだ」
 「・・・・・・・・・・」
 夏美は唇を噛み締め首を振る。


 「ほら、遠慮はいらんぞ。・・・んん? しっかり声に出してみろ、ほら」
 「んぐっ くくっ・・」
 夏美の目尻の震えが激しくなった。


 堂島の親指は円を描き、肛門の皺を伸ばすように揉み込んでゆく。
 嫌悪か快感か・・ときおり夏美の肩胛骨が浮き沈む。
 堂島の左手が臀肉を鷲掴むと、放射状の肛門の皺が確かな拡がりをみせる。
 夏美の顔は歪む。

 
 「くく、美人は“ココ”も綺麗じゃな」
 羞恥をあおる堂島の言葉に、夏美の身体は更に朱く染まる。


 「・・・い いやっ 恥ずかしぃ・・・」
 「ふん、気持ちよいのだろ? ・・・・これはどうかな?」
 「・・うっ うあっ ああああー・・」
 「・・・ふふ ここがGスポットじゃ。・・・どうだ、夫はここを攻めてくれるか?  んん?」
 「ああ、いっ 嫌っ」
 弛(たゆ)んだ背筋から頭が持ち上がり、夏美は顎を激しく左右に振った。


 「ふふ、そろそろ一度逝かせてやろうか?  んん?  どうじゃ?」
 夏美の返事を聞く間もなく、堂島は膣中の指腹に更なる強弱を付け始める。
 夏美の苦鳴の声よりも大きな音が響き渡り、震えに合わせるように指の弄(いじく)りが更に激しさを増した。


 シーツをググッと握る手指の感触も、踊り弾む太臀の揺れも、あの夜と変わらなかった。
 違ったのは・・・。
 「さあ、鏡を見るのじゃ。今夜は自分が逝くところを・・・自分の逝き顔を見てみろ」


 堂島の左手が夏美の下顎を掴み、頭を鏡の方に導いていく。
 涙で濡れた瞳には、それでも確かに悶え震える女体の姿が写しだされた。


 「・・ああ・・・い イヤッ・・」
 弱々しい声を上げ、夏美は絶頂の予兆を意識した・・・。


 「ほれっ!」
 魔力を持った淫指の絶妙な激しさに、夏美の予兆は間違いなく迫ってきて。
 「・・・うあっ、く 来るっ い イヤッ・・」
 開いた口から涎が流れ落ち、震える肢体からは汗が蒸気して、貫かれた女穴からは淫臭が沸き上がった。


 そしてまた・・・・。
 「イッ イヤッ イッ イヤッ イクッ イク―――!」


 吐き出された淫声は、薄暗い部屋の中で木霊(こだま)の様に響き残った。
 絶頂の後の女体の様子もあの夜と似通っていて・・・・。
 獣の格好のまま身体は固く震え続け、余韻は確実に女体に回り及んでいた・・・・。
 それでも・・・・?
 足らなかったのは・・・。


 「ふふ、さあ、次はこいつの番じゃ」
 くっ伏す夏美の震え残る背尻を見下ろしながら、堂島は股間から聳(そび)え出た己の巨棒を握り掴んだ。
 「指で逝った次は、判っておるな?」
 「・・・・・・・・」


 堂島は後ろから夏美の両脇に掌を差し入れると、力強く女体を抱き寄せる。
 胡坐を組み、背中を預ける肢体の重みなど気にする事もなく、堂島は夏美の太股(ふともも)をそれぞれの掌で支えると一気に股間を割り開いた。
 「イヤッ!」と、夏美に声が上がった。


 「ふふ、まだ元気が残っておるようじゃな。・・・そうだろう、“指”だけでは逝き足りんだろうからな」
 「・・・・・・・・・・」
 「さあ、鏡を見ろ。儂の“物”が収まるところを」
 耳元からタバコ臭い息と交ざって、堂島の言葉が襲ってくる。


 薄く開いた瞳の中に、鏡の中で大男に背中を預け、惨めに股間を割り裂かれた女の姿が映し出される。
 腿裏にグイッと力を感じると、夏美の太臀は浮き上がり、その下からは記憶通りの肉根が姿を現して。
 夏美の中に悲しい波が寄せてきた。


 「さあ、入れるぞ」
 「・・・うう・・・無理です・・・」
 「何が無理じゃ、貴女はあの晩も“コイツ”をしっかり咥え込んだじゃろ、んん?」
 「・・・うう・・・いや・・・止めてください・・・」
 「何をいまさら・・・」
 「・・うう・・・・」
 「ふふ、さあ、しっかり見ろ」


 心の意識は間違いなく抵抗を支持していたが、哀しいかな身体の自由は効かなかった。
 鏡に向く瞳には涙の幕が掛かっていたが、膣穴の入り口は間違いなく滑っていた。


 「ほれ、いくぞ」
 グッ。
 グチュッツ。
 ググググ・・・。


 「・・ア、アアアアーーー!」
 夏美の口から哀しい叫びが漏れ散った。


 「ふん、口では“嫌”と言っても“コッチ”は充分濡れておるようだな」
 「・・・あぁ・・・」


 「さあ、高みを見せてやろう。んん? 遠慮するな、しっかり感じたら素直に声に出すのじゃ。よいか?貴女は素直な女だ」
 そう言って堂島は、夏美の臀下から強弱を付け始めた。
 そして、夏美には記憶通りの波が押し寄せてくる。


 夏美はすぐに桃源の波に呑み込まれていく。
 鏡の中には小ぶりな乳房を揺れ踊らす女の姿がある。
 頬を伝った涙の痕はしっかりこびり付いていて、流れ出る涎(よだれ)は顎へと伝わっていく。


 いつしか堂島の両手は肢体の腿(もも)から離れていて、夏美の肢(あし)は無意識にその位置を変えていた・・・・。
 知らぬ体位・・・夫とも一度も試した事のない格好(かたち)
 それでも間違いなく快楽の波は寄せてきて・・・・。


 「くくく・・・“乱れ牡丹”じゃな」
 堂島の口から四十八手の一つの名前が呟(つぶや)かれた。


 上下に揺れる乳房の先を、後ろから回ってきた手指に揉み崩される。
 背筋の薄い体毛を筆の毛先の様な指腹に、サワサワ触れられるたびに身体に震えが走り抜け、自然と嘆きの言葉が零れ落ちる。
 「・・ああ なんで・・・」


 そして巨(おおき)な臀部(しり)を横からピシャリピシャリと叩かれると、嫌でも腰の動きに弾みが付いた。
 まるで、競走馬が鼓舞されるように。


 「・・ああ またなの・・・」
 やがて夏美の貌(かお)は恥辱に歪んでゆく。
 背筋は反りかえり、臀の動きはどうしようもないといったふうに、激しさをましていく。


 そしてまた・・・。
 「ああっ だめ、んああっ い イクッ イク―ーーー!」
 

 そして肢体は崩れ落ち。
 薄暗い部屋のベットには、濡れ輝く白い肉塊が残った・・・・。