小説本文



女の嬌声で始まったその映像に、夏美は驚きを覚えていた。
 画面の中では全裸になった幸恵が、複数の男に甚振られている。
 夏美は先程からここに幸恵がいない事は分かっていて、まさかこの映像が別室の中継なのかと一瞬考えて。
 しかし、最初にビデオを巻き戻した事を思い出せば、それは有り得ない。
 夏美は堂島に肩を抱かれながら、目の前の画面に吸い寄せられている。

 
 これまで見た事がある映画のエロチックシーンと比べ物にならないその卑猥な映像に、夏美の衝動はこの部屋の状況を忘れてしまっている。
 まるで身に着けている黒いマスクが言い訳を許してくれたかのように、夏美は画面に引き込まれている。
 夏美が、1番衝撃を受けたのは一人の女が3人の男に同時に甚振られている事だった。
 しかもその女性は、いつしか夏美の身近な人物。
 そして、その女性の情夫は、今自分の肩を抱いてアルコールの匂いとタバコ臭い息を吐き出す男、堂島なのである。


 ここにいる沖田以外の男連中と堂島の付き合いがどれ程なのかは、夏美には分からないが、その男達に平気で“自分の女”の姿を気にせず見せる男、堂島。
 そして目の前の映像をごく普通に、ごく自然に見続けている男達。
 昼間の活発な討論をそれこそ自然に行っていた男達が、マスクを着けているとはいえ卑猥な映像に見入っているのだ。
 そしてその映像から目を離せない夏美がいる。


 「どうじゃ夏美先生、あの男達のチンポの太さは?」
 いきなり堂島の口から、隠語が甲高く響き渡った。まるで周りの者達に聞こえるように。


 画面の中の3人の男も、夏美達が身に着けている物と同じ黒マスクで素顔を隠している。
 この映像がいつ、どこで、どういう経緯で撮られた物なのか分からないが、鮮明さが大画面に乗って凄い迫力で伝わってくる。


 「おうおう、幸恵の奴、上手そうに2本同時にしゃぶっておるのう」
 「・・・・・・・・」
 「どうじゃ、夏美先生もしゃぶってみたいか。んん?・・・2本同時じゃぞ」
 「・・・・・・・・」
 「夏美先生、あれが“ダブルフェラ”じゃ・・・」
 「・・・・・・・・」

 
 黙り込んでいる夏美を、堂島が抱きよせて。
 「どうしたのじゃ?まさかスペルを考えてるのではないだろうな?はっはっは・・・」


 堂島のくだらない冗談にも、夏美は瞬きを忘れたかのように映像を見つめている。
 そして、周りの男達のマスク越しの視線も気づかない。


 「クク・・今度は騎乗位か。夏美先生もあの格好でよく逝ったのう」
 画面では幸恵が確かに、ウンチングスタイルで腰を振っている。
 その下腹の揺れは妙に生々しく、思わず自分はと、置き換えてしまう夏美がいる・・まさか、あんな格好で腰を振っていたのかと・・・・。


 「さあ、あのまま又ダブルフェラをしおるぞ」
 まるで解説を入れるように、堂島が喋り続けている。


 幸恵の口元のアップに、夏美は小さく息を呑みこんだ。
 堂島の“ソレ”を目の前で見た時とは又違う、映像を通しての独特のアングルに夏美は新たな衝撃を受けている。
 男の“ソレ”の違いを改まって感じて、次の展開に気をひかれる夏美がいる。
 画面では、幸恵が口元の左右にある“ソレ”を交互にシャブリ分けている。


 「夏美先生、あの出し入れの音もよく聞いてみろ。・・厭らしい音じゃろ、んん?・・あの音も男と女を高みに導く一つじゃよ」
 堂島の言葉を聞いて、夏美はもう一度唾を呑み込んだ。今度は大きく喉を鳴らして。


 「さあ、もうすぐ面白いシーンが見れるぞ」
 堂島の嬉しそうな言葉と同時に、画面では幸恵が仰向けの男に倒れ込む様に覆い被さった。
 

 アングルは変わり、幸恵の巨尻が大きく映し出されていく。
 屋敷の覗き部屋から見た情交でも、確かに堂島の性器が幸恵に出入り様を見せつけられたが、目の前の映像は結合部分の生々しさが更なる迫力で迫ってくる。
 男の物の出し入れをヌルヌルになった淫部で受け入れるその上では、排泄器官の小さな穴の放射状の皺までもがよく見える。


 「夏美さん、幸恵の尻の穴をよーく見ておけよ」
 アルコールの混ざった息を吐きかけ、堂島が抱いた肩を揺すってくる。
 画面の中では、一人の男が幸恵の尻肉を指で拡げていて。
 肛門めがけて唾を垂らし、指を差し入れ、揉みほぐしている。


 「さあ、アナルファックの始まりじゃぞ」
 「・・・・・・・・」
 肛門性交がある事は知っていたと思うが、それは異常な世界に生きる人間のする事で、夏美も夫の高志にも縁の無いものだと思っていた。
 まして夏美には、あの小さな穴に男の性器が入るとは思えない。


 「グフフ・・・」
 堂島の卑猥な笑いに応えるように、画面の男が己の性器を握って幸恵の尻穴に狙いを定めている。


 「さあ入るぞ・・・」
 男が肛門に“ソレ”をあてがった。


 まるで“グニュッ”という音が聞こえたかのように、幸恵の“ソコ”が男の先端を受け入れた。
 男の“ソレ”は堂島の物より小さいとは思えていたが、それでも夫と比べると・・・・・・。


 夏美は息苦しさに唇を一舐めした。
 そしてもう一度唾を呑み込んだ。
 目の前では、幸恵の肛門が半分ほど“男”を受け入れている。


 『アヒッーーー!』
 幸恵の悲鳴の瞬間、夏美の胸にも痛みの感情が走り抜けた。


 映像の中では、男が既に幸恵の尻穴の再奥を征服している。
 幸恵の悲鳴は一瞬の事で、直ぐに口からは愉悦の呻きが上がっていく。
 夏美は、2つの穴が同時に支配されるその様子が信じられなかった。


 「ふふ、女の身体は不思議じゃのお。あんな物が尻の穴に収まるのじゃから」
 堂島の声は大げさに聞こえたが、夏美にはまさに神秘の出来事だった。


 「クク・・幸恵の奴、良い表情(かお)じゃ・・・・」
 幸恵の悦楽の表情(かお)に、夏美の心は揺さぶられている。
 「じゃが貴女の表情も負けず劣らず良かったぞ」
 堂島の言葉を受けて、夏美の子宮にキューンと痺れが伝わっていく。


 「夏美さん。ところでビデオの中の男達は誰か分かっておるよな」
 堂島が顎を振って、夏美は初めて気が付いた。


 (・・・うそ!?・・・)
 「・・ふふ、そうじゃよ、ここにいる男共じゃよ」


 夏美は、その言葉に息を詰まらせて。
 「・・・まさか・・・」


 その瞬間、夏美の頭の中に夕べの出来事が見えてきた。
 目の前の映像は、夕べ撮影されたのだと・・・しかもこの場所で。
 そして夕べの幸恵の言葉が蘇ってきた。


 『・・貴女の番は明日の夜ね・・・』


 「さて、幸恵の奴は何処に行っておるのかな」
 夏美の肩から腕を離し、堂島が立ち上った。そして部屋のドアへと足を寄せる。
 画面では幸恵が更に怪しい動きを演じている。


 扉の前では、沖田が堂島に近づき、囁きを耳元で受けて止めている。
 そして、堂島は部屋を後にした。


 ソファーに一人残された夏美に、男達の遠慮のない視線が向かって来た。
 夏美の背中に、冷たい汗が流れ落ちていく。
 一人の男が立ちあがると、隣の男も腰を上げていた。
 息を呑む夏美の目は又一人、男がこちらに向かう姿を捉えている。



 (・・・う、うそっ・・・・)
 夏美は震えながら腰を浮かせていた。
 出口に近づこうとしたが、そこには山の様な男が聳え立っている。
 夏美は沖田に押し返されるように、布団の上へ足をよろめかせた。
 振り向くと男達がすぐそこまで迫っていて。
 怯えの瞳は男達の黒いマスクを見つめていた。


 男の口元が嬉しそうにニヤリと歪んだ・・・顎髭の男だ。
 背中側に回ろうとした男を目線で追いかけようとして、夏美は足を引っ掛け崩れてしまう。
 七三の男が覗き込んできた。


 (・・・や、やめてっ・・・・・)


 男達はガウンを結ぶ腰紐に手を当てていて。
 そこが肌蹴ると素肌が現われた。
 各々がガウンを脱ぎ終えると、股間の様が目について。
 黒い翳りの中から肉の棒が反り上がっていて、夏美の震えは激しさを増していった。


 「イヤッ!」
 教授らしき男が夏美の腰ひもに手を当てた。


 「やっ、止めてっ!」
 管理人の男までが夏美を押さえ付けに来た。
 今日来た若い男が、股間の物を扱きながら近づいてくる。


 仰向けに倒れた夏美に、無数の手が伸びてきた。
 あっという間に身体は、剥かれていく。
 ガウンを奪われた夏美の身体は、卑猥な衣装を身に着けていて。
 怯えの目には、男達の口元が醜く歪むのが見えた。


 乳房が丸見えのハーフカップのブラに、股間がスケスケのTバックショーツ。
 卑猥な衣装にテンションが上がったのか、男達の腕には力が加わっていく。
 そして夏美は、あっという間に素っ裸にされてしまった。
 男達は目を血走らせ、しかし淡々と夏美を凌辱の儀式へと連れて行く。


 「だ、誰かっ、助けてっ!」
 両方の手足を一人ずつ抑え込まれ、一人の男がおっ拡げられた股間の前で己の“物”を扱(しご)き勃(た)てている。
 その後ろに他の男達が並んでいる。


 沖田が壁のスイッチを押してミラーボールが回り始め、幻想的な空間で輪姦が始まろうとしている。
 その時・・・・。