小説本文



 夏美は四つんばいの格好で下半身を丸出しにして、荒い息をついている。
 突っ伏した上半身を覆うブラウスは微かに乱れ、腰から下のむっちり肉付いた腿(もも)から臀(しり)は、窓に向かって突き上げたたまま固まっている。
 股間から流れ出る白濁の液は、窓から差し込む光に照らされ輝いていた。


 “ご奉仕”からと言われたこの日の調教。
 下半身だけを曝け出した姿で肩を抑えられ、しゃがまされた。
 目の前にはファスナーを降ろし、そこから凶悪な一物を取り出した男が笑っていて。
 鼻先に“ソレ”が近付くと性臭の匂いが襲ってきて、もう何度と見たはずの凶悪な塊に、意識は早くも敗北の味で包み込まれていった。


 肉の塊を唇に押し付けられながらも床を踏ん張れば、むっちりした太股(ふともも)の肉付きが一層震えをおこした。
 俯(うつむ)くと股間の翳りが目に付いて、まるで和式トイレで踏ん張っているかのようなその状況に、思わず足指に力を入れてしまった。


 強引に口元を押し開けてくる巨棒を拒みながも抵抗は形だけのものとなり、結果は自(おの)ずと覚悟していた通りの事となった。
 口中で“ソレ”が動くたびに頭の上からは叱咤の声が降り掛かり、無意識にそれに導かれてしまう自分がいた。
 いつしか“ソレ”の太さが馴染んでしまったのか、苦しみながらも涙が流れ出る事は無かった。
 叱咤の声の合間には“褒め”の言葉があり、それは当然“性技の上達”を意味する事かと、胸中には羞恥な想いが沸き起こった。


 口の中からは“グチュグチュ”と濁(にご)りの音が立ち。
 そのリズムと同化して唇の動きは自然と激しくなっていき。
 白いブラウスの裾下で剥き身となった大きな臀部は、艶めかしい格好で床を踏ん張っていた。
 その格好のまま時折り目線を上げ、男の様子を伺う自分がいた。


 やがて“良し”と褒めの言葉が掛かると、ようやく唇は“ソレ”から解放された。
 頭を撫ぜられると羞恥の気持ちは更に高まり、視線は自然と床へと向いてしまう。
 踏ん張っていた態勢から股間を閉じようとして、大きな手に脇の下を掴まれると自ずと“次”の行為を意識した。


 立ち上がりかけ、中腰になったところで突然“パシリ”と臀に乾いた音が上がった。
 続けて後ろから臀の双壁に手指を挿し込まれ、前かがみに掌が床に付くと・・“ああ、今日はこの格好なのか”と・・声にならない嘆きが上がった。


 それはいきなりの挿入だった。
 先日の様に舌での愛撫も無く、唐突の侵入であった。
 しかし、ソノ先端が触れた時には確かな滑りを感じてしまい、侵入が最奥へ進むと・・“今日もまた、負かされるのか”と・・そんな予兆を覚悟した・・・。


 鋼(はがね)の様な力強さはいつも通りだった。
 しかし、その出し入れのスピードは何故か早急の動きと感じ取って。
 やはり今日は“急いでる?”と、そんな考えは本の一瞬の事で、すぐに頭の中は真白な光に支配され、蕩ける様な高鳴りが沸いてきた。
 敗北の意識は早くも遠ざかり、代わって“快楽”が膨れ上がっていった。


 時間にすれば今までと比べると確かに性急なものだった。
 それでも女体はこれまで通りの反応を示していて。
 行為の後の余韻もこれまで通り、肢体は震え、子宮は余熱を逃がさぬようにキュッと締り、そして口から荒い息が漏れ続けた。


 一物から確実に“精”を注入し終えて、男は股間から“ソレ”をゆっくり引き抜いた。
 先端から洩れ零れる“精”をティッシュでくるみ取って、男は今だ硬さを保つソレを握ったまま口元を歪めている。
 夏美は、四つん這いで突っ伏した姿のまま、荒い息を吐き続けていた・・・・。


 「・・・もう少し時間をかけてタップリ楽しみたいところだが、儂も忙しくてな」
 「・・・・・・・・」
 「貴女も逝き足りんだろうが、今日の続きは又今度だ」
 「・・・・・・・」


 堂島は一物を握りながら、夏美の背尻を見つめている。
 夏美は重たげに身体を起こしながらソファーの端に手を掛けると、そのまま頭から突んのめる様にソファーの中へ崩れ落ちてしまった。


 剥き出しの巨尻が以前より大きくなった感じで、無防備のまま淫靡な汗を上気させている。
 その時。
 “コン・コン・コン”
 鳴る筈がない、この部屋のドアがノックされた。
 夏美の顔が反射的に跳ね上がる!
 その顔は色めき立ち、怯えの視線は堂島の姿を探し彷徨った。


 堂島はドアに背を向け、己の一物をズボンの中に押し込でいる。
 そして、スカートに手を伸ばそうとする夏美の身体を隠すようにして、ドアを振り返った。
 もう一度ノックの音が聞こえた。


 「・・・誰じゃ?・・・」
 堂島は背中の夏美をチラッと振り返り、ノックの主に返事をした。
 夏美はスカートに足を入れている。


 「あ、あの・・・○○学部2年の太田新一です・・・」
 扉の向こうから、あきらかに緊張気味の声が聞こえてきた。


 夏美はスカートを腰の辺りまで上げている。
 “カチャリ”と音がすると、堂島がもう一歩ドアへと近づいた。


 「・・・失礼します・・・」
 と、小さな声でドアを押し開けたのは、強張った顔の男子学生だった。


 「ん?どうしたのかな」
 堂島は落ち着いてその学生に問いかけた。


 「あ、いえ、すいません。・・・こちらに山中夏美先生はいらっしゃいますか・・」
 太田新一が畏まりながら、小さな声で返事をした。


 「・・山中先生なら見えているが・・・」
 堂島は眉を寄せ、もう一度後ろを振り返りながら。
 「今、大事な打ち合わせをしておるんだが、何か急用かな」


 その時、堂島の後ろからスッと、夏美が顔を表した。
 新一の表情(かお)が、アッと驚いた。


 「あなたは・・・太田・・新一・・くん?・・」
 夏美の小さな声に。
 「はい・・あの・・実は・・。俺、さっきの授業の最後に、夏美先生に失礼な事を言ったかなと、思って・・・」


 夏美は頭に手櫛しを入れながら、そして狼狽の色を残しながら、新一の言った言葉について思い出そうとする。
 「ほら、夏美先生がボオッと考え事をしてたみたいだったから俺、『東京にいる旦那さんの事、考えてんじゃないの』って・・・」
 「あっ・・」
 夏美はようやく目の前の学生の事を思い出した。
 そして確かに、終わりの方で“夫”の事を言った事も・・。


 不意に夏美の頬に安堵の色が浮かぶ。
 「・・じゃあ、太田君は“その事”を私に謝ろうと思って・・・・」
 と、続けようとして夏美の顔が強張った。
 何かを思い出したかのように、再び緊張の色が浮かぶ。


 新一は夏美の様子など気づかず。
 「そうなんです。それで先生を追っかけてきて・・・」


 「そ、それで、あなたは“何時(いつ)から”・・・そこに・・・」
 最後の語尾は明らかに小さくなっている。
 夏美の横で、堂島の頬がピクっと震えた。


 新一は一瞬、唇を噛み。
 「え? たった今ですよ。・・・・・」


 夏美は新一の顔をマジマジと見つめ、そして一息呑み込んだ。
 「・・・・・・」
 「・・この階まで上って来たのは初めてだから、ちょっと迷っちゃいましたけど」


 「ああ、そうなんだ。・・・でもさっきの事は、私は何にも気にしてないわよ・・」
 と、夏美が続けようとしたところで咳払いの音がした。
 堂島が細い目で二人を見つめていた。


 「んん、太田君と言ったね。まだ打ち合わせが終わってなくてな。儂らも忙しいから、今の話は又今度にでもしてくれるか?」
 堂島の言葉に新一は、思い出したように肩をすくめてみせた。


 「夏美先生は、しっかり者じゃ。君らなんかにからかわれても、全然平気じゃよ」
 堂島が軽く笑い、新一にニコリと微笑んだ。


 「そうですよね。夏美先生は美人でしっかりしてそうだし、全然新人には見えないですよね」
 新一もここに来てみて良かったと思えたのだろう、その声には張りが現れていた。


 新一は頭を何度か下げ、部屋を後にした。
 ドアが閉まったのを確認して、堂島が振り返った。夏美の顔が震えていた。


 「・・んん・・・どうしたのじゃ?」


 堂島が夏美の視線をいぶかしげな眼で追いかけた。
 夏美の視線の先・・・ソファーの下に丸まったショーツが落ちていた・・・・。