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第34話
私は小さな部屋の隅で、素っ裸のまましゃがんでおりました。目の端には、無造作に投げ捨てられた妻とお揃いの紫カラーのパンツが見えております。
この部屋に来たのは1時間前だったか30分位前だったか、そんな時間の流れも分からなくなっております。残してきた妻の事は気になっていましたが、我が身に恐怖を感じた時には、逆に『助けてくれ』と妻に念を送った記憶が残っています。
ふう~ッと溜息を吐いて、この部屋に入ってからの事を思い出してみました………。
清水の部下の一人、巨漢の男に連れてこられたこの部屋の中には、なんと川村さん夫婦が待っておりました。「なんでここに川村さんが…」と、二人を見つめる私の肩を、男の大きな手がポンポンと叩きました。
強張る私に男が『あっちの部屋では今頃、アンタらツガイが白黒ショーをやったとして、客の前で旦那の方は“勃つか、勃たないか”の賭けをしてる所だぜ』と、言ったのでした。
確かに妻との交わりの際に、もし勃起しなければどうしようか…と、心配していたのは事実です。ですが、あのスウィートルームで、川村さん達を前にそこそこの事は出来たと自負もありましたので、心の中では「何とかなるだろう」と思ってはいたのです…。
黙り込んだ私に、男は下品な口調で続けました。
『賭けの結果がどうだろうと、みんな、アンタらツガイのショーを楽しみにしてるからよ』
男が言ってる事と私がこの部屋に居る事がどう繋がるのか分からなかったのですが、そんな私の表情を読み取ったのか、又、男が続けたのでした。
『そう言えばアンタは、今日の自分の役割を聞いてなかったんだよな……。浩美は知ってるんだがよ』
“妻は知っている!!”…その言葉に私は、川村さんの顔を覗き込みました。しかし、男の手がすっと伸びたかと思うと、首根っこに物凄い力を感じました。男はそのまま私をうつ伏せに押さえつけ、浴衣を脱ぎ取ったのです。
私は、黙って脱げと言われれば大人しく脱いだはずなのですが、男はあえて屈辱を与えるやり方をしたのです。そして男は、続けて私の尻を一打ちすると紫カラーのTバックパンツを抜き取ったのです。
あの客座で男達の前に“尻”を向け、アナルまで曝す覚悟は出来ていた私でしたが、このような暴力的な形で裸にされた事に言いようのない惨めさと不安を感じていました。そして、続いて吐き出された言葉に、天井がひっくり返るほどの衝撃を受けていました。
『今から浣腸するからよ…。分かったな』
『!?…』
その男は愉快気に告げたのでしたが、当然、頭の中には『なに?なぜ!』と、そんな言葉が浮かび、その“浣腸”という言葉からは“アナルセックス”という言葉が連想されていました。そして、頭の中では更に『カンチョウ?…でも、どうして』という言葉に続いておりました。
先程から黙ったままの川村さん夫婦の前で、私は四つん這いにされ、首根っこを掴まれ、顔は横向きで床に押さえつけられたままでした。尻は突き上がったままで無防備で、その私の目元で男がしゃがみ、雅代さんから“ソレ”を受け取りました。そして、嬉しそうにかざして見せたのでした。
『えッ!!』
それはやはり大きな浣腸器で、SMサイトなどでしか見た事がなかった物でしたが、不自由な態勢で見るソレに、言い様の無い迫力を感じていました。
背中の方では川村さん達の動き回る気配があり、カタカタ鳴る音が聞こえてきた時には又、SMサイトでよくあるシーンを覚悟してしまっていました。
間違いなくソレは、洗面器と薬液のボトルが触れあう音で、私は心の中で『助けてくれ』と叫んでいたのでした。
浣腸などをされるのは生まれて初めての事で、アヌスが冷やっとしたものを感じた時は、思わずソコに力を入れました。
『力を抜いてください。傷がつきますから』
聞こえてきた声は雅代さんのもので、男から浣腸器を受け取ったのが分かりました。私は身体をひくつかせながらも、尻の穴を恐々と緩めていったのでした。
それから直ぐに、腹の中が生温い膨らみで満たされていきました。ソレが何本か続きますと、今まで感じた事の無い苦しみが股間の辺りからヘソの方まで広がっていきました。
意識は抵抗を指示しましたが、恐怖の為か身体も言葉も言う事を利きませんでした。そしてもう、“最悪の瞬間”が近づて来る恐怖に『で、出ます。………出そうなんです………』と、言葉を絞り出しておりました。
『あと1本です。もうちよっと我慢して…』
後ろから聞こえる雅代さんの声に、唇を噛み締めました。それから最後の薬液が腹に侵入してくる時間は、我慢の限界でした。目は涙目で唇は酷く歪んでいた筈です。
アヌスから器具の先端が抜ける時は、同時に全てが排出される恐怖を感じましたが、最後の力を振り絞ってソレを我慢しました。男の『さあ、もういいぞ』……その言葉を聞きましても、身体は痺れて自分では起き上がれませんで、『仕方のない奴だ』と、舌打ちと共に男の手が脇腹に入って来たのです。
『おい、絶対ここで漏らすなよ』
男が真顔で告げると、川村さんも反対の脇腹に手を入れ、私を二人で持ち上げ廊下へと運び出したのです。
眉間にシワを寄せて運ばれる私は、「まさか、客座で」と、恐ろしい瞬間をイメージしてしまっておりました。けれど連れて行かれたのはトイレで、個室に入った瞬間に涙目のままソレを放(ひ)り出しておりました。
『終わったら尻(ケツ)の穴をよ~く洗っておけよ』
男の声に私は、惨めな我が身を意識しながら、時間を掛けてソコを洗ったのでした。
そして、トイレを出た後は部屋に戻り、裸のままで部屋の隅に崩れ落ちたのでした………。
「さあ、これからが今日のメインだな」
放心状態だった私は、その男の声に顔を上げていました。
屈強な男の顔は、心から嬉しそうな感じで、改めて清水達のサディステイックな性質を感じてしまいました。しかし………自分のマゾ気質も嫌というほど分かっているつもりでしたが。
私は紫のTバックパンツを身に着け浴衣を羽織りますと、男と川村さん夫婦に囲まれ、妻が待つ先程の部屋へと向かいました。確かに腹の中はスッキリした感じがあるのですが、この後の展開には不安しかありません。なぜ男の私に浣腸をと………。
そんな事を考えながら、遂に部屋の前にたどり着いたのです。
「さあ行こうぜ、色男」
そう言って男が扉に手を掛けます。
私はもう生板の上の鯉で、従うしかありません。
扉が開かれ1歩入りますと、目についたのは熟した裸の背中と浴衣の前をはだけた男達の姿でした。
その時「あっ、皆様…牡(オス)がやっと戻ってまいりました」と、堀田さんの声が聞こえてきたのです。
「ありゃま、良いところなのに帰って来たのかよ」
半裸の紀美子さんにフェラチオさせている男が、私の顔を見ておどけてみせます。
「旦那さんよぉ、遅いから奥さんの口を使わしてもらってるぜ」
声の方を向きますと、部屋の後ろ辺りで、全裸の妻が仁王立ちの男の物を受け止めております。
どうやら私が連れ出されている間に、妻とそれに紀美子さんまでが慰み者として男の精処理をしていたようです。その時又、堀田さんの声が致しました。
「皆様……まだ“抜いて”おられない方もいると思いますが、牡が戻って来ましたのでツガイのショーの方に移りたいと思います…」
声を聞いた男達は、各々で元の席へと戻ります。妻達にシャブラせている男も心残りに……いえいえ、余裕の表情で一物を収めております。紀美子さんは唇に付いた残り汁を指でかすめ取り、飲み込んだ様子です。妻はどこか虚ろな感じで、フラフラしながら前方の堀田さんの横へとやってきます。
妻が堀田さんと私の間に立ちますと、男達が腰を降ろしていく様子が伺えました。その中の一人の男から「いよいよアンタらツガイのショーの始まりだな。旦那も早く脱げよ」と、刺々しい言葉が飛んでまいりました。
私は堀田さんの顔を覗きますと帯に手をやり、続けてTバックパンツを脱ぎ取ったのです。
並んで全裸を晒した私達夫婦は、改めて好奇の視線を浴びる事になります。男達も一度、“精”を放出したからなのか、先程より緊張が解け一層ふてぶてしくなった気がします。
「で、では……お待ちかのねツガイによる“白黒ショー”の始まりです」
堀田さんが口にした『白黒ショー』と言う言葉は、しっかり耳に届いておりました。“浣腸”が白黒ショーとどう繋がってくるかは今だ分かりませんが、頭の中はとにかく「上手くやらなければ」という焦りが生まれていたと思います。
妻の手を取って一歩前に出ようとした時です。
「えっ!?」と、その手が妻に弾かれてしまいました。見ますと妻は振り向き、堀田さんから“何か”を受け取っております。
ソレは………。
呆然とする私の横で、妻がソレを履き終えると振り返りました。
私の目に映ったもの………。
妻の股間には黒くて長く、そしてグロテスクな形………。妻はぺニスバンドを身に付けていたのです!!。
妻の股間から伸びるソレは、それなりの大きさで、見事に天を向いております。
唖然とする私を見つめる妻はやはり病的な感じで、清水からは『M』『変態』『重度のマゾ』と呼ばれ続けた妻ですが、目の奥にはサディステイックな色が浮かび、淫揚な香りで私に覆い被さって来る感じなのです。その気圧に後ずさりしますと、川村さんがこちらに向かって来る姿が見えました。
川村さんが私の腕をとりますと、その反対側には堀田さんの腕が絡んできております。
有無を言わさず私をしゃがませようとする二人。私はもう、事の成り行きを悟っておりました。今日の“白黒ショー”とは、妻の“ぺニス”で私のアナル処女を散らすショーだったのです。
ほぼ無抵抗で、川村さんと堀田さんに導かれるように四つん這いの格好になった私。今度は雅代さんに紀美子さんまでが寄って来ました。
四つん這いの状態から首だけを捻りますと、雅代さんの手にローションの容器が見えました。頭の中ではソレが、何に使われるかは分かっておりました。
紀美子さんがしゃがむと、私のアナルをグイっと拡げます。そして間髪いれず、ヌルっとした感触がありました。ローションが着いた雅代さんの指が、侵入してきたのです。
「菊地さん、力を抜くんですよ」
この場にいる私達にだけに聞こえるような声が、紀美子さんから致しました。そうなのです、奴隷夫婦だけでショーの仕込みをしているのです。
そして今度は「たっぷりとローションを塗りますから安心してね」と、雅代さんの声がしました。
紀美子さんが私のアナルを拡げ、雅代さんがローションを塗り込む。それが何度か続きました。アナルから雅代さんの手が離れますと、又、「菊地さん、こっちを御覧になって。とても立派な“ぺニス”よ」と、紀美子さんの声です。
四つん這いの体勢から再び首を捻りますと、雅代さんが今度は妻の疑似ぺニスにローションを塗りたくっております。
「さぁ皆さん、ご注目下さい」
堀田さんの声に川村さんに雅代さん、それに紀美子さんがサッと私達から離れます。私達夫婦がショーの主役だと、改まってアピールなのです。今、その中心……男達の視線は間違いなく妻のペニスと私のアナルに向いておるのです。
私は客座に向かって尻を突き上げ、顔はもう泣き笑いで床に埋めています。その私の尻の横に、妻がしゃがんだ気配がありました。
「皆様、アタクシの主人のアナルでございます。醜くみっともない物ですが、どうかご注目下さい」
妻が言い終わると同時に、尻タブからアヌスに近い辺りに指が食い込み、そしてネチャッと一気に開陳されてしまいました。
「…皆様、主人はアタシと同じで、四つん這の格好で見ず知らずの人達に自分の性器や排泄器官を見て貰いたい人間なんです…どうか遠慮なく、罵(ののし)りの言葉を浴びせてあげて下さい」
妻が言い切った後は、沈黙の空気が流れ始めました。羞恥と不安に震える私ですが、妻に言われた通り股間から腹の辺りがサワサワと不穏な高鳴りでセリ上がって行くような感じです。普通に考えれば男が男の性器や排泄器官を見て、喜ぶ筈は無いのですが、見られる私は不思議な気持ちになっていたのです。
「……しゅ、主人は覗きの趣味もあるのですが、覗かれる方も好きな変態なんです」
と、妻が言ったところで、それまで黙っていた客座から声が上がりました。
「変態なのは奥さんも一緒で、アンタもさっき言ってたよなぁ、スーパーの踊場で下半身を曝したって。しかも一人で」
「それに、夫婦だけで深夜の公園や住宅街で露出プレーもしたってなっ。確かにお前らは超変態夫婦だわ」
聞こえてきました男達の言葉からも、私が別室で浣腸をされている時に、妻が先日の露出行為の事などを赤裸に告白していた事が分かりました。それをこの格好で聞く私も、改めて興奮を覚えてしまいます。
「さぁ奥さん、進めてくれや」
関西弁の男をはじめ、隅々から淫揚な空気が身体全体に振り掛けられる感じです。
妻は立ち上がり、ムチでも入れるように私の尻をバシリと打ち付けます。思わず私はグッと気を張りました。
それからアナルの入り口にネッチャッと侵入を感じ受けました。そしてソレは、徐々に厚みを増していきます。妻の指が1本2本と増えていってるのです。
「ア、アナタ…行きますわ」
私にだけに聞こえる声が致しました。
アナルが妻の左手にでしょう、グイっと引っ張られるように拡がりを感じた瞬間は、思わずソコに力を入れていました。しかし、「力を抜いて下さい」との声に、フーと息を吐いております。
アナルの周りにはピタピタと侵入を試みようとする感触があり「ああ…コレが疑似ぺニスか…」と、何か不思議な感じです。
そして遂に、妻のぺニスが私を犯し始めました……。
ググッと凹凸を感じた時は、一瞬光が弾ける感じでしたが、「はぁ~」っと息を絞り出しますとブルブルっと身体が震えました。
ソレの侵入は浅く深く、入って出て、また入ってとユックリながら確実に中へ奥へとやってまいりました。恐れていた痛みなどはさほど感じずに、けれど性的な快楽もないのですが、このような変態的な行為、しかも人知れずではなく大勢の前で行っている事こそに、言い様のない快感が湧いて来るようでした。そして妻と一緒になって、犬の格好で股ぐらを曝している事に至福の悦(よろこ)びを感じ始めたのです。そんな私達に、ザワザワと足音が近づいて来ました。
「旦那さんよぉ、どうだい気持ち良いのかよ」
「奥さんも、もう少し激しく突いてみろよ」
気が付けば、男達がニヤニヤしながら私達を至近距離から覗き込んでおります。
その時です。「おおっ、コイツ…やっぱり勃(た)ってきてやがるぞ」
甲高い声が上がったのです。それは、 “勃つか、勃たないか”の賭けの結果が出た瞬間でした。そして直ぐに、他の男達も私の股間を覗き込んできます。
妻は腰を打ち付けながら、時おり私の尻タブを擦ったり、乳首に手を伸ばしたり、そして袋から竿へと指を絡めていたのです。いつの間に身に付けたのか、妻は娼婦の小技を披露していたのです。
「お客様、チョッと失礼しますよ。牡が牝に突かれて、おっ勃(た)ってるところを撮っときますか」
ぶっきらぼうに聞こえて来た声の主は、清水の部下の一人でした。
男は私の…いや、私達の姿や結合の部分、そして反り勃った一物をあらゆる角度からカメラに納めていったのです。
そして最後に…お決まりの事です、名刺と免許証を私の背中に置いたりだとか、妻の腰辺りに貼ったりだとか、そして私達の口に咥えさせたりだとか、とにかく見世物としての被写体を演じさせたのです。勿論、妻との結合が解かれる事はありませんでした。
私達は…素性をあかし、好き勝手な事を言われ、そして決定的な写真を撮られ、それでも変態チックな営みを披露する正真正銘のショー芸人でした。
けれど、この姿こそ……世間体を気にして体裁を繕ろいないがら何とか社会的地位を得た私の裏の顔であり、真実の姿なのです。そして間違いなく、妻も同類なのです。
私は見世物扱いされているこの状況に、得体のしれない高鳴りを覚えておりました……。