小説本文



陰気臭い畳部屋の中で、私達夫婦は男達の獣のような眼に見つめられておりました。
 私達は壁に背中を押し付けられるように、小さく身を寄せ合い、震えを感じずにはいられません。


 「そこの夫婦……名前はまだ申し上げませんが、5号の堀田夫婦がネットで釣ってきた夫婦です」
 「・・・・・」
 「今日は、我々の“集い”を見せてやり、刺激を与えて持って生まれた“資質”を燻(くすぶ)ってやろうと思いましてね」
 清水の静かな語りに、私達に向く幾つもの目は、好奇のものに変わっていくのが分かりました。私の震えは、強くなっていくばかりです。


 「それでは、そろそろ始めましょうか」
 清水の言葉に男達の視線が前を向いてくれました。私の息がフッと抜けます。


 「じゃあ、お前達は上を脱いで真ん中へ」


 前に並んでいた3組の夫婦が法被だけを脱ぎ、部屋の真ん中へと進んで行きます。それに合わせて客座の男達各々が、3組を囲むように円になり座り直します。私達夫婦だけが壁に背中を着けたままです。


 3組の夫婦は真ん中で三角形を作るように立っています。男達が卑猥な姿の3組を見上げます。
 ご主人方はTバックショーツだけの姿。奥様方はノーパンにガーターベルトだけの姿です。


 薄暗い照明(あかり)の下でも、中年夫婦の裸はクッキリ浮かび上がっておりました。
 3人の奥様方は皆、歳相応の脂が乗った身体をしています。皆さん、豊満な乳房に熟れた臀(しり)をしているのです。
 旦那さん方は皆、私と同じような中年腹で、背格好も似たような感じです。


 「さて、今日の奴隷達の役割を説明しましょう。まずは2号夫婦です」
 清水が畏まります。
 「今日の美代子は輪姦です。何発でもどんな格好ででも皆さんが満足するまで犯(や)って下さい。勿論、生で中出しで構いませんので。それと、出した後のチンポの後始末は旦那の浩の口を使ってやって下さい」


 「4号夫婦の弘子は、皆さんの前でオナニー姿をお見せします。この女は見られる事に快感を覚えてきましたよ。皆さんは、この変態女教師に色んな格好での自慰を注文してやってください。その後は、皆さんのザーメンを飲ませてやって下さい。それと旦那の康之は、弘子の姿を見ながらマスをかきたいそうなので、かかせてやって下さい」


 「5号の学と紀美子はオマンコしてる姿を皆さんに見て頂きたいそうです。皆さんは見ながら、遠慮なく感想でも罵声でも浴びせてやって下さい」


 「それと・・」
 再び清水の目が私達に向きました。
 「あんたらは、まあ好きにしてな。自由に動いて覗き見でもすればいいからよ」
 「・・・・・」
 「で、もし自分達も“何か”したくなったら遠慮せずに俺に言えよな」
 そう言って清水が笑いました。


 「では、始めましよう」
 清水の合図に、直ぐに何人かの男達が立ち上がりました。
 部屋の中は小さなグループに分かれていきます。


 中央では落合さんがしゃがみ、妻の弘子さんが立ったまま自身の股間を広げます。陰毛を掻き分けビラビラを開陳してるのです。
 「奥さんのマンコ、ますます真っ黒になってきたね」
 男達がギラついた視線で、容赦のない声を浴びせてきます。


 部屋の前方では山本さんの妻の美代子さんが、早くも押し倒されていました。
 「美代子は輪姦の味が忘れられなくなったんだよな」
 ここでも卑猥な声が上がっています。


 そして部屋の後ろ側、私達の直ぐそばでは、堀田さんが正座をしてその横には紀美子さんが立ち姿を晒していました。いつかの相互観賞の時と同じ感じです。


 「皆様、改めまして、堀田学と紀美子の変態夫婦でございます。私達は清水様に″こちらの世界″に連れて頂き感謝しております。本日も皆様の目の前で夫婦の営みを披露させて頂きたいと思います。よろしいでしょうか。お願いいたします」
 堀田さんが役者掛かった口調で述べると、深々と頭を下げました。


 「あんたら自分達だけが気持ちよくなってもダメなんだぜ」
 「そうだ、俺達をちゃんと満足させれるのかよ」
 囲んだ男共の口には、愉(たの)しげな言葉が付きます。


 「はい。一生懸命やりますので、お願いいたします」
 妻の紀美子さんも一緒になって頭を下げています。


 前方の方から「んあーーー」と喘ぎの声が上がりました。早くも美代子さんが獣(いぬ)の格好(かたち)で突かれています。
 隣ではご主人の浩さんが、正座をした姿勢から首を伸ばして美代子さんを覗き込んでいます。


 中央からも艶(なまめ)かしい声が聞こえていました。
 落合さんの奥様の弘子さんが立ったまま、クリトリスを(いじ)っているのです。目は瞑(つむ)ったまま、顎を突き出し、唇は半開きです。
 ご主人の康之さんは、その隣でTバックパンツを脱いで正座しているのですが、股間の物は天を向いて見えます。


 「変態教師の落合康之さんよぉ、あんたも早く“シコシコ”したいかい?でも、もうちょっと待ってな」
 その声に康之さんは、苦しげに頷きます。


 堀田さん夫婦は共に全裸になり、口づけをしていました。二人だけの世界に入ったのでしょうか、目をつむり舌を絡ませ合っています。


 その時です。
 トントンと私の肩が叩かれました。見ると清水の顔が直ぐそこにあります。


 「菊地さんよぉ。あんたらもじっとしてないで、もっと近くに見に行ってこいよ」
 「・・・・・・」
 「ん?。遠慮しないで、ほら」
 清水の小馬鹿にしたような表情があります。


 「それと後で、俺と浩美で“白黒ショー”をさせてもらってもいいかい?」
 「なっ!」
 私の声に男達の何人かが、こちらを振り返りました。


 「浩美もかなりの好き者だから、変態チックなプレイを心待ちしてるんじゃないのかな」
 「・・・・・・・・・・・」
 「それに、浩美のマンコと俺のチンポは結構相性がいいんだぜ。なあ、浩美」


 私の額からは汗が滲み出てきました。妻の温度も上がった気がします。
 清水は顔を近づけ、私達の表情を食い入るように覗き込んできます。


 「・・・・・・・・・」
 「・・ふふ、冗談だよ。けど浩美が犯(や)りたいんだったら俺は構わないぜ」
 ネットリとした清水の囁きです。
 隣を恐々覗くと、妻が俯いております。


 「まあ、愉(たの)しんでくれよな」
 そう言って清水が、もう一度私の肩を叩きました。


 清水が振り返ったのを見て、私は妻の横顔を覗きました。瞳は膜が掛かったようで虚ろな感じです。唇が微かに開き、静かに息が漏れています。妻の体温が上がっているのが分かりました。


 それからしばらくして、私達の身体は、ジリジリと壁伝いに移動を始めたのでした……。