小説本文



 
 清水の手先として堀田さん夫婦は、私達をこの“集い”に連れてきました。
 『今日はゲストだから』『見学だから』と聞かされましたが、心の中ではそれだけでは済まないと、私も妻の浩美も覚悟はあったと思います。そしてその通りに、妻の凌辱、輪姦が始まってしまったのです。
 清水に言わせると、隠し持っていた“資質”――M性を刺激された妻は、男共の餌食になっていました。しかし半分以上は、妻の潜在意識が心の奥底で望んだ事なのかもしれません。
 目の前では既に何人目かの男が、妻の中に欲汁をぶちまけています。そのシーンは、初めて妻が犯された日とほぼ同じでした。違うのは、この日の妻が発する声からは、間違いなく“悦楽の香”が漂っていた事でした。


 「どうだい奥さん、俺のチンポの味はよぉ」
 何人目かの男が妻を四つん這いにして、熟れたデカ尻に己の腰をこれでもかと打ち付けています。
 「んはっ…ああ…いい…」
 「いいのかい奥さん。良かったらもっとデカイ声でハッキリ今の気持ちを言えよ」
 「あぁ…はい…」
 妻は眉間にシワを寄せ、その表情はもう堪らないといった感じです。


 「奥さん、今 ビデオを用意してやるから、カメラに向かって正直に心の中を吐き出せよな」
 清水の部下の一人が、どこからか持ち出してきたビデオをいじりながら、卑猥な笑みで話し掛けていました。取り囲む男の中には、手を叩いて喜んでいる者もおります。私の頭の中には「免許証はどうしたっけ」と、そんな言葉が横切りました。
 「さぁお客さん、ピッチをあげて下さい」
 清水の部下が、打ち付ける男に一声掛けながら、妻の顔を正面から撮らえようと前に回っています。
 パンパンパンと肌と肌が、いえ、肉と肉が打ち合う音が一段と高まり、併せて妻の呻きも上がってまいりました。


 「んあ――良いっ!」
 「おらっ!」
 「ヒッ!んあっ 逝くっ」
 妻の表情(かお)が歓喜に歪んだ瞬間でした。“カシャッ、カシャッ、カシャッ”とフラッシュと同時にシャッター音が響き渡りました。


 「おい、どうなんだよ、マンコが気持ちいいんだろ。良かったらハッキリ自分がどんな女なのか、ここにいる皆さんに教えてやれよ」
 清水がギラギラした目で、妻に迫っております。妻はその清水の顔を、トロ~ンとした目で見つめ返します。
 「…ああ…アタシはチンポの事ばかり考える変態人間です…」
 「ククク、そうか。お前は“お堅い”仕事をしながらもチンポの事ばかり考えていたのか」
 「…………」
 「ん?どうなんだよ」
 「ああ…はい。アタシは真面目なふりをして、いつも…人から軽蔑の目で…あぁ…」
 そこまで言って、男の荒腰に身体を震わせる妻です。


 「ほらっ、最後まで言わないと大好きなチンポを抜かれるぞ」
 「あ~ん…いやん、言いますわ」
 「!!…」
それは今まで一度も聞いた事が無い艶(いろ)っぽい声です。私の背中には冷たいものが走り抜けました。


 「あぁ…アタシは真面目なふりをして、変態チックな事ばかり妄想していました…本当は他人(ひと)から軽蔑の目で見られるような事をしたかったんです…」
 「そうか、じゃあ清水さんと出会えて良かったじゃないか」
 今度は客座の一人が、愉快げに言葉を浴びせてきます。
 「そうだろう。お前もここにいる女達と同じように、変態奴隷に堕ちて行くんだよな」
 その声にふと見れば、いつの間にか清水の部下の男達が、美代子さん、弘子さん、そして紀美子さんの首に首輪を嵌め、四つん這いにして膝まずかせているではありませんか。


 「さぁ浩美、お前は俺達の牝犬奴隷だ。しっかり鳴いてみろ」
 清水の言葉が終わると、男がフィニッシュに向かって一段ギアを上げます。


 「あ、あ、あ…んぐっ…んはっ…逝っ逝くっ!」
 「ほら!逝ってしまえっ!」
 「んあ――逝ぐっ 逝きます――――変態女の浩美、逝くゥ――――」
 妻の“その瞬間”は見事に被写体となって、ビデオに切り取られたはずです。清水の部下の一人はカメラを片手に、妻の穴から流れ出る欲液の様子まで撮ろうと構えております。
 フラッシュが数度瞬いた後は、妻の荒息が聞こえる中、淫靡なこの空間は静寂に向かいました。


 「どうですか、皆さん。もう、ザーメンは出しつくしましたか」
 清水の言葉に、見ればぐったりする妻を見下ろすように、男の殆どがそこそこの満足顔のようにも見えます。私は初めて、この日の“集い”の終了を意識しました。


 その後は部屋では、奴隷達の撮影会の様になっていきました。
 首輪を嵌められた牝犬奴隷が、男の言うままに卑猥なポーズをきめていくのです。そしてその姿態の殆どには、免許証や名刺が供えられたのです。


 2号の山本浩さんの奥様、美代子さんは、犬がチンチンをする格好で口に御自身の免許証を咥えて撮(うつ)されました。
 4号の落合康之さんの奥様、弘子さんは、胸からお腹辺りに『牝犬奴隷4号』とマジックで書かれ、その姿を撮られました。勿論手には免許証です。
 5号の紀美子さんは、首輪から伸びるリードを股下に回され、それが陰部に食い込む様を撮られました。恥毛の横にはやはり免許証がありました。


 一通り奥様の写真が撮り終わると、次は“夫婦(つがい)”での撮影でした。
 山本さん夫婦の写真は“えげつない”ものでした。清水の部下が何枚ものバスタオルを敷き、仰向けに寝た浩さんの口元に美代子さんがM字でアソコを拡げて持ってくるのです。そして何と小便をかけるのです。浩さんが口を開けるところから、美代子さんがしゃがみ、アソコを晒し、小便を流し込むところまで全ての様子がビデオとカメラに撮されました。勿論膝元には免許証と名刺です。


 落合さん夫婦は、弘子さんのリード線を康之さんのチンポから袋に巻き付けた姿を撮られていました。弘子さんの指は康之さんのアナルに挿入され、二人の口にはそれぞれの免許証を咥えさせられていました。涙目になりながらも、咥えた免許証を落とさないように噛み締め震える康之さんが印象的でした。
 堀田さん夫婦の姿も凄いものでした。誰が持ってきたのか一本のディルドが用意され、それは両先が男性器の形をしたものでした。二人は尻と尻を突き合わせる様に四つん這いになり、美代子さんの膣にディルドが、そして反対側は何と学さんのアナルに挿入されたのです。二人の腰の上には免許証と名刺が置かれ、カメラは上から横からとその様子を映し続けたのです。


 「皆さん、ではそろそろお開きにいたしましょう」
 フラフラになっている3組の姿を見ている私の耳に、清水の声が聞こえてきました。その時です。
 「それと10号!」
 瞬間的に背筋が伸びました。
 「お前らももう少ししたら、本格的にデビューさせてやるよ」
 「・・・・・・・」
 「人前で素性を明かされて、女房を犯されて、夫婦でオマンコするところを曝して、そして変態チックな写真を撮られるのは最高だぜ」
 「・・・・・・・」
 「ふふ…まぁ悪いようにはしないから、安心して堕ちていくんだな」
 そう言って清水はニヤっと笑いました。
 隣の妻は清水の言葉が聞こえているのか、心ここにあらずといった感じでした。ですが理屈抜きに、妻は快楽に酔っていたと確信がありました。


 「それと…」
 「・・・・・・・」
 「お前ら夫婦はしばらくは、許可があるまでセックスもオナニーも禁止だ」
 「・・・・・・・」
 「とにかく次の連絡が行くまで、悶々としとけや」
 「・・・・・・・」


 気付けば客人の男達は、淡々と帰り支度に入っているようでした。この男達が本当に堀田さん達奴隷夫婦の素性を世間に公表しないか?…そんな心配はあったのですが、それ以上に清水の力が行き渡っているだろう…と、そちらの考えの方が強く働いておりました。


 客人の気配が、この建物から消えた頃、ようやく我々奴隷夫婦は着替えを許されました。
 着替えの部屋には奴隷夫婦だけでしたが、先程までの″出来事″に対して誰も口を開く事はありませんでした。


 外に出ますとあったのは車が数台。客人達の姿はなく、あるのは我々の車と一般利用している客の車でしょうか。
 私達は一言さえ口を聞く事もなく、私は堀田さんの車に乗り込みました。山本さん達と落合さん達は1台の車で来ていたようです。別れ際に山本さん、落合さん、堀田さんそれぞれ夫婦はアイコンタクト?…いえ、軽く目で挨拶を交わし頷き合うと車へと乗っていったのです。
 今の最後の挨拶には、“秘密の共有”、“奴隷としての連帯”、後は何でしょう?…とにかく、間違いなく私はその仲間に近づいていると感じました。勿論妻も。


 帰りの車内も静かなものでした。奥様方の方が当然疲労が強く、妻などは軽い鼾をかいておりました。紀美子さんは眠らず前を向いておりましたが、その瞳には疲れがみてとれました。私と堀田さんも交わす言葉もなく、ただ黙ったままでした。


 車が待ち合わせたパーキングに後わずかの所まで来た時です。隣の妻が「んん~ん」と目を覚ましました。
 それから直ぐに、紀美子さんの静かな声がしました。
 「浩美さん、今日はお疲れさま。帰ったらシッカリ身体を休めてね。また直ぐにあるからね」
 紀美子さんのその言葉に、妻は一瞬の間の後「はい」と返事をしていました。そこには“素直”、“従順”…そんな響きを感じた私でした。


 「…ご、ご主人」
 今度は堀田さんの声でした。凄くシワ枯れた声です。
 「近いうちに私か紀美子から連絡が行きます…」
 言葉の続きに詳しい内容や説明があるような気もしたのですが、普段から言葉が少な目な堀田さんです。私は黙ったまま小さく頷くだけでした。


 家に着いた私と妻。
 二人の雰囲気は改まって何かを語るという感じではありませんでした。何も語る事がなくとも心の中はそれなりに通じ合うと言うのは、夫婦の歴史などと言えば滑稽かもしれませんが、私も妻も清水の元で奴隷に成り下がった事を一つの運命として受け止めたと思いました。いや、受け止めるにはまだ早いのでしょうが、諦めと覚悟があるのは間違いのないところだと思いました。そのような事を私は、妻の目を見て黙って語りかけたつもりで妻の表情にも同意の意思を感じておりました。


 家の中の時間の流れは、これまでと何ら変わりありませんでした。職場に出ればどうなるのか?又、清水が現れるのか?…そんな心配も湧きましたが、先日清水が妻の職場に現れたのは私達に“諦め”と“覚悟”を付けさせる為で、今日の“集い”での私達の様子を見れば、もう改めて職場などに来る必要性も感じて無いのではと思えました。
 それから次の日の月曜日、そして火曜日と清水と堀田さん御夫婦からも何の連絡もありませんでした。


 次に連絡があったのは水曜日の夜でした。私が書斎のパソコンで例のサイトを覗いている時でした。
 サイトを見ていたのは、先日の“集い”の様子がアップされていないか?私達夫婦のあられもない姿が曝されていないか?…心配性の私は目を凝らして覗いていたのです。
 結局のところ、“集い”に関するものは古い物も含めて削除されたのか目に付く物は何一つありませんでした。フッと息が抜けた時に、そのメールの着信があったのです。
 見ればそれは堀田さんからのものでした。


 件名は[次の集まり]と、短いもの。
 開きますと数行ありました。
 [菊地様 先日はお疲れさまでした。今度の土曜日、私共のマンションにお越し下さい。時間は昼の12時でお願いします。勿論、御夫婦一緒にです。では]
 文面は簡単なもので、最後に堀田さんの自宅住所の記載がありました。
 私は直ぐに返信を打ちました。
 [堀田様 畏まりました。妻と一緒にうかがいます。それと質問ですが、当日は他にも誰かいらっしゃるのでしょうか?]
 私は妻の同意を得る事もなく、メールを返していたのです。


 それからしばらくすると、返信がありました。
 [私達と先輩奴隷の御夫婦が一組です。清水様達は来られません]
 文面は短いものでした。私は少しの緊張がありましたが[分かりました]と一言返し、携帯を閉じたのでした。
 妻には直ぐに報告しましたが、妻からも文句なども無く、私達は日常をも清水に支配されていると改めて思いました。


 夜、布団に入りますと堀田さん宅の訪問の事が、嫌でも頭に浮かんできます。
 私達を呼ぶ目的は?
 そこで何かしらの調教があるのか?
 まさか、清水達から逃げる相談?……いえいえ、それは無いと直ぐに頭は否定しておりました。

 そして、木曜日、金曜日が過ぎ、土曜日がやって来たのです……。