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第33話
優作は暗い部屋の中で、しゃがんで座り込んでいた。
大塚が出て行ってからは2,3分しか経っていないが、優作はとてつもなく長い時間を過ごしている気がしていた。
引戸の細い隙間からは、仄暗い光が一本の線となって、優作の足元に落ちている。頭の中では、大塚が云った“不道徳なショー”、それを“覗く”と言った言葉が回っていた。
優作は息苦しさを覚えて、扉の隙間に顔を寄せた。そして、息を整えて引戸の隙間をもう少し開けてみた。途端に雨音が一層激しく聞こえてきた。
リビングの様子は、雨雲のせいか暗くなっている。と、パチパチっと灯りが点った。大塚が電気を点けたのだろうか。
僅か数センチの隙間から覗く優作の視線。その先には、いつの間にか布団が敷かれている。
今のところ、視界の中に人はいない。
又、雷が聞こえた。その瞬間、優作の頭の中で光が瞬いてーーフラッシュバック。
記憶の奥から暗い和室部屋の様子が沸いてきたーー。
あれは、幼き日の雷雨の夜ーー。
白いシーツの上で蠢く2つの影。若き日の父と母。裸の父と母ーー。
再び光が瞬いて、記憶の中の男の裸体が敏男の姿に変わっているーー。
大塚が云った言葉が蘇るーー不道徳なショー…。
又も雷鳴が轟いた。
優作はハッと我に返り、頭を振った。そして、今の幻を打ち消そうと自分に言い聞かせるように心で呟いた。
(まさか、それはないよな…敏男と母さんが××××だなんて…)
その時、廊下の方から人の気配がした。
優作は慌てて扉の隙間を細くした。
視界の中に現れた者…。
ウウッ!と、優作は無意識に掌を握りしめた。
見つめる先には、部屋の灯りと窓からの暗い光線の配合によってか、褐色に映る女性の肌。その肌には、肉体をはち切れそうに演出している紫の下着。
そして、何よりも驚いたのは、顔を覆う黒いマスクだ。
扉を隔てて僅か数メートルの距離に立ったその女性。優作は声にならない呻きを漏らして、息を飲み込んだ。
黒マスクの視線がこちらを見つめている…と思えて、優作の肩が竦んだ。しかし直ぐに、向こうからはこの細い隙間の奥は覗けない…と気づいてふうっと息を吐く。
女はその肢体を無防備の状態で曝している。揺れる事もないし、モデルのように誰かを挑発するでもない。まるで、何かの指令に備えているかのようだ。
女の頭が少し左に揺れた。その先に男がいた。
優作はウワッ!と声を上げそうになって、慌てて唇を噛みしめた。
男も黒いマスクをしている。しかし、首から下は女と違って下着を着けていない。その巨体は、自身の股間を開けっ拡げに曝していたのだ。
この“アブナイ”男が大塚の云った若者なのか。と、優作は驚きに息を呑み込んだ。
よく見ると、男の黒マスクは女の物とは違っている。男の物は、目と口の周りがくり貫かれたプロレスラーのようなマスクだ。
雨音はいっそう激しく鳴っている。しかし、この部屋の住人は誰一人と気にはしていない。
早苗の中では、雨音が心臓の鼓動のように聞こえていた。その鼓動は、これから始まる儀式のイントロのように、少しずつ大きくなっていく。
震える肩が、巨(おおき)な掌に掴まれた。
敏男の手が、目の前の肩を力強く掴んでいた。早苗の震えを確かに感じ取って、引き寄せながらこちらを向かせた。昨日とは違って、早苗の黒マスクの様相がよく分かる。
敏男は早苗の身体を抱き絞めた。唇を奪おうとして、横目で続き間の扉を見た。あの向こうには優作がいるのだ。息を殺して、あるいは脱け殻のようになって、この光景を覗いているはずだ…そんな事を瞬時に巡らせて、敏男は成るようになれ!と自分に言い聞かせながら唇を押し付けた。
重なった唇を力強く吸う。掌は柔らかな膨らみをまさぐり始めている。その肉の感触が昨日と同じであると意識出来て、敏男は自分が落ち着いていると思えた。
唇を離すと「ハァんッ」と感泣の声が上がった。
黒マスクの口元から覗く唇の色は、昨日よりも濃く見える。敏男にはその色が艶かしく卑猥に見えて、巨体をブルっと震わせた。
敏男はもう一度抱きすくめるように肢体を引き寄せ、掌を背中から臀部へと動かした。
肉の急所を確かめながら、敏男はその都度、扉の隙間に目を向けた。
早苗は隣の部屋から息子ーー優作に覗かれている事など当然知らない。身体は既に抵抗を忘れ、巨漢に投げ出している。
敏男は早苗達親子が顔を合わせた時の様子を想像して、性急に事を進めようとした。
敏男の手が乱暴にブラジャーを剥ぎ取った。露(あらわ)になった膨らみをシッカリと見つめて、口元をニヤリと歪める。
いつの間にか上野が、続き間の扉の所に来て座っている。優作の視界に入らないように来たのか、余裕の表情だ。
その上野が拳を握って突き上げた。
(なんなんだよ、もっと激しくやれってか)
上野の仕種に、胸房を鷲掴んでいた敏男の手に更なる力が加わった。
「あぁッ」
朱い唇から、くぐもった呻きが落ちた。
と、上野の拳が又も上がった。
敏男は早苗の身体を、扉の正面に向くように動かした。そして、後ろから乳房を握り、指の間から尖り立つ突起を扉の隙間に向けてやった。
暗がりの優作ーー。
女の口から零れ落ちた呻き。続いて漏れ聞こえる苦しげな声。そんな声に痺れを感じながらも、優作は息を殺して細い隙間から前を覗いている。
敏男が屈む。目の前には熟した巨尻。敏男は、ハチ切れそうな紫のショーツを掴むと口元を歪めて…。
(お前に母親の陰毛を拝ませてやる!)
と、心で呟き、それ!っと一気に引き下げた。
いきなり飛び込んできた女の股間の様子に、優作の身体は一瞬、後退さった。しかし顔は、恐々ながら前に寄っていく。そして、息を呑んで女の様子を伺った。
女は豊満な乳房、それに卑猥な陰毛を隠しもしない。この無防備に肌を曝す女は一体…。
大塚の話が蘇る。聞かされてきた話の流れを思えば、目の前の男女はひょっとして…まさか…やっぱり…×××と××なのか…。優作の意識が霧の中を彷徨っている。
雨音は変わらず、激しくがなり立てている。
その雨音をピシッとムチのような音が切り裂いた。巨大な掌が女の臀を打ったのだ。女がシズシズと膝を折っていく。
早苗が四つん這いになった様子に、上野がニヤリと笑った。上野は座ったまま、敏男に向かって指でOKサインを出す。
敏男は頷きながら腰を落として、早苗の秘部を覗こうとした。昨日初めて見た早苗のアソコ。その記憶を確かめようと屈んだところで、上野の様子を目で追った。
上野の右手が拳を作り、行け、行け、と宙に繰り返し上がっている。
(へ、急かしやがって)
と、思いながらも、敏男は期待に応えようと挿入の態勢に入った。
(よし、嵌めてやるか!)
敏男は自分の股間に手をやった。
ところが…。
(あれ?)
暗がりの中、優作は唖然としたまま、巨漢と熱した女の様子に見入られていた。
敏男は自分の一物を握り、必死にシゴいている。瞳に不安を滲ませながらシゴいている。
「くそーッ、どうなってんだよ!」
ついに敏男の苛立ちが、叫びとなって上がった。その聞き覚えのある声に、優作は身体中の血が逆流するような衝撃を覚えた。
(ああ…コイツはやっぱり敏男だったのか…)
敏男の苛立ちは更に増して、女のデカ尻を再び打ち付けた。
「いゃーんッ敏男君ッ!」
喘声ともとれる叫びが上がった。その声も又、優作に衝撃を与えた。
(ああっ、その声…母さんッ!)
熱くなっていた優作の身体が、途端にブルブルと震え出した。
それまで座っていた上野が、気配を感じて顔を振った。視線の先の廊下には、大塚と真知子。
真知子が気づき、リビングに入ってきた。そして敏男に近づいた。
敏男はまだ、力のないソレを必死にシゴき続けている。
真知子が敏男の手を取り、立たせようとする。
情けない仕種で敏男が、四つん這いの早苗を見つめる。マスクの裏で、敏男は瞳を濡らしている。
真知子に手を引かれ、敏男はバツが悪そうに腰を上げた。そして、真知子に付き添われるようにして部屋を後にした。
視界から男ーーおそらく敏男が、真知子に連れ去られる姿を見て、優作の身体がフラフラと立ち上がろうとしていた。震える指は扉の隙間に掛けられている…。
廊下の端の先ほどの部屋に入った敏男。真知子に促され、マスクを脱いでベッドに座り込んだ。
「敏男君、今日はちょっと緊張したのかな」
優しげに真知子が、敏男に顔を寄せる。
「うんうん、男の人ってそう言う時もあるわよ。だから気にしないでいいのよ」
幼子をあやすように、真知子が敏男の肩を摩っている。それでも敏男の瞳は、哀しげに揺れている。
「敏男君、大丈夫だって。敏男君の凄さはアタシが知ってるから…」
敏男の肩に置かれていた真知子の手が、サワサワと巨体を擦りながら下の方へと向かっていく。
「ふふ、試しにアタシとしてみよっか。アタシとならきっと大丈夫よ」
そう云った真知子の指が、ヘビのような動きで敏男の胯間に到達した。
「うっ!」
「あら、ビクンとしたわよ、敏男君のココ」
真知子の指が敏男の変化を感じ取って、ソレを弄り始めた。敏男の口から、ウウウと小さな呻きが溢れ落ちていく。
一物を握りながら真知子が、敏男の耳元に唇を近づけて「さっき、早苗さんにストリップをさせたんでしょ…」
「………」
「アタシもしてみようかしら」
云い終えて真知子が、股間から手を離し、敏男を見据えた。真知子のその表情は、年季の入った売春婦の様だ。そして真知子が、自分の服の裾に手をやった。
真知子は上着からジーンズへと、あっという間に脱ぎ去り、下着姿を曝した。敏男の目の前に、早苗にも負けない肉体が現れた。
「どう、アタシの黒のランジェリー、卑猥でしょ」
ゴクっと唾を呑み込み、敏男は魅惑の肢体に吸い寄せられていく。
その敏男の表情に妖しい笑みを返し、真知子はブラを手に取り、続けてショーツを脱ぎさった。
露(あらわ)になったのは、熟した裸体。
そして真知子は背中を向けると膝を付き、四つん這いの格好を披露した。
「ねぇ、さっき早苗さん、こんな格好してたわよぇ」
蜜をまぶしたような真知子の甘い声に、敏男の背筋がゾクっとする。その真知子が、更に臀を突き上げた。
「あぁ…アタシ、早苗よ…」
「………」
「見て、この大きなお尻。打っても何してもいいのよ。敏男君の好きにしてね」
「ウアアア」
気付けば敏男のソレが、信じられない硬さになっていた。先程のアレは何だったのか。敏男は己の硬度を確かめ、目の前の秘烈に手をやった…。
「あぁん…濡れてるでしょアタシのオマンコ」
ああっ…呻きで返事を返し、敏男の顎がコクコクと揺れる。敏男は臀部を掴んだ手にグイっと力を加えた。
目に映るのはアワビのようなアソコ。ソコが歪に拡がり、豊潤な香りが立ち登ってきた。見れば敏男の先っぽが、我慢の汁で濡れている。
「敏男くん、なにしてるのぉ。早くちょうだい、早苗のマンコにぶち込んでぇ」
早苗の…いや、真知子の…いや、早苗…敏男は誰の穴でもよかった。とにかく性急に己の欲望をぶち込みたいと思っていた。そして、牡の象徴を握ぎるとソコに充てがった…。