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第21話
次の日も予備校に敏男の姿はなかった。優作は今日も何度かその巨体を探してみたのだが、目にする事はなかったのだ。
気になるのであれば、メールを送ればいいだけなのは分かっているが、心配してる気持ちを知られるのが嫌だった。
無意識に「クソッ」と、小さく呟いて帰り支度を始めた。明日は土曜日だから、たまには息抜きでもしたいな…と考えて、気軽に誘えるのはやっぱりアイツかと、もう1度敏男の顔を浮かべた。早苗の顔も浮かぶのだが、休日に母親と出掛ける歳ではないと改めて、フーっと溜め息を吐き出した。
校舎を出た時だった。
胸ポケットのスマホが震えた。手に取り、んっと目を凝らしたのは、相手が敏男だったからだ。一瞬なぜメールじゃないのかと思ったりもしたが、直ぐに出ようとして、慌てて手を止めた。直ぐに出るのはシャクだな。そんな意固地な気持ちを覚えて、暫くそのままにしてやった。そして一つ置いてから、それに出た。
「え~どちら様?」
クールを装ったよそ行きの声は優作。
『ゆ、ゆうさく…今いい?』耳に届くか細い声は、間違いなく敏男の声だ。
「今勉強中で忙しいんだけど」億劫そうな声で返しながらも、何故か耳は集中していた。
「ふふん、冗談だよ。もう帰るところだ」優作はそう言って、ゆっくり駅の方へと向かった。
『ああ、あのなあ、明日は暇?』
「は?お前なぁ、サボりの常習犯が久しぶりに電話してきて、明日暇?ってどういう事よ」
咄嗟に出た言葉であったが、その声に刺々しさはない。それを察知してか、敏男は落ち着いた声で云ってきた『うん、実は会って相談したい事があるんだわ』
歩くのを止めず、優作は聞き返す。
「なに、好きな子できたとか」
『い、いや違う…』
「じゃあなに、予備校辞めるとか」
『………』
「………」
『………』
沈黙の間合いに、優作の頭には「心配」の文字が浮かんできた。
「ん、なに、お前…真面目に悩んでる?」
『そ、そうだってば、お前しか…お前しか相談出来ないから電話してるのに…』
その涙も混ざっているように感じる声に、優作は立ち止まった。目に付いた自販機の横まで歩き、建物の壁に背中を預けた。
「何かあったのか?話してみろよ」そう言った優作の目の前を、同じ予備校生達が通り過ぎていく。優作の意識は、敏男の悩みは進路の事だと告げている。
『うん、けど…電話じゃあれだから…』
「あぁそうだな…じゃあどうする?」
『うん、だから、明日会えないか』
「あぁ分かった。家に来るか」
『え!いや、家じゃなくて…』
「………」
『◯◯駅………そこでどう?』
「へっ」一瞬、優作の頭に?の文字が浮かんだ。
「敏男、なんでそこなんだ」
『いや…明日、そこの近くで用事があって…』
「ん~そうなのか…。まぁ俺は何処でもいいけど…」
最後は何か釈然としないものも残ったが、すぐに時間を決めた。
電話を切って再び駅に歩き出す。頭には、また結局は大した事のない相談事で終わるのかな…そんな場面も浮かべながら、帰りにあの辺で遊んでいってもいいかな、久しぶりだし…いつの間にか足取りは軽くなっていた。
電話を切ると、それを手に持ったまま敏男は、フーっと大きく息を吐き出した。
「なんか、緊張したなぁ」
首筋に汗を感じながら、敏男は一息ついてスマホを持ち直した。次にかけるのは上野だ。
『おぅ、どうだった』
どこか横柄な感じで、上野が電話に応える。全裸の仁王立ちから腰を突き出して、見下ろす頭を手で撫でた。
「あのさぁ、う、上手く行ったから。明日のアポ取れたからさ」
『ああ、ご苦労さん。俺の方もバッチリだから。じゃあそう言う事で』
「あっ、ちょ、ちょっと。で、俺はやっぱり行っちゃまずいのかな」
『だから今朝もメールで言ったろ。ちゃんとビデオで撮っとくからさ』
「う、うん…」
『大丈夫だって。全ては順調に進んでるんだからよ』
そこで上野は、もう一度股間を押し付けるように突き出した。
『それとなぁ、今立て込んでるんだわ。なので又な』
一方的に言いきって、上野はスマホを置いた。
「ほらほらオバサン、どうだい今日のチンポの味は」
ここは昨日に続いて渋谷家の優作の部屋。
「うんうん、フェラチオもだいぶ上手くなったよ」そう納得して、上野が口から一物をぬく。崩れ落ちた早苗は、一糸も纏わない姿で、荒い息をついている。
「電話があったって事は…もう授業が…」一人呟いて、上野が早苗の腕を取る。
「さぁオバサン、大事な息子が帰ってくる前にもう1発やっとこうか、今度は立ちバックで」
そう言って、勉強机の端に手を掛けさせて。
「それとさぁ」
意味深に笑いながら、ノーパソコンを開く。
「オバサン知ってた?息子君のこのパソコン、パスワードが設定されてないんよ」
どって事のないような口調で告げて、上野は早苗の肩越しから器用に操作を始めた。机に突っ伏す姿勢から、早苗が少し顔を上げて。
「あぁ…」零れた声は気だるい甘さが混じっている。
「さぁ一緒に腰を振りながら見よっか」
この日何度目の交わりになるのか…早苗の思考はそんな記憶も思い出せないまま、肢体は中腰に、臀は既に気を張っていた。
「どれどれ」濡れ具合を確認され、早苗は再度気を張った。パソコンの画面からは、何やら淫靡な香りが沸き立っている。
女穴がグググと侵入を感じ受けると、早苗はその質感に再び負けを認め「はぁんっ」と、一声上げた。
「さぁオバサン、目を開けて、しっかり画面見ててよ。コレはさぁ、ウンウン…夕べ、息子君が見てたエロ画像なんよ」
耳元から聞こえたまさかの言葉。早苗は驚きに目を見開いた。
「ほら、ネットの履歴って見る事が出来るんだよ、知ってた?」
どこか馬鹿にしたような声にも、身体はビクビクと反応を始めた。膣奥の支配に意識は飛びそうになりながらも、早苗は支配者の言葉を理解した。
「あぁ…こんな…」
切ない甘声が掛かる画面。その画面には自分と変わらない歳の女の裸がある。キューンと早苗の身体に痺れが走りぬけた。
「いやはや、変態だね、オバサンも息子も」
「…………..」
「ほら、もっと見てごらんよ。コレなんか凄いね。大股開きで丸見えじゃん」
画面にはムッチリした腿を縄で縛られ、見事に開陳された女がいる。
「おおっ、締め付けがキツクなってきたよ。オバサン、コレ見て感じてるでしょ」
「あぁッ、いやッ、言わないで」
画面は適度な早さで変わっていく。快楽の波に揺られながらも、早苗は薄く開いた目から、卑猥な画像を認めていた。
年頃になっても息子から幼い日のイメージが消える事はない。しかし、その息子の成長を“こんな“閲覧の記録で知る事になるとは。早苗は傍若の意識の中、そんな事を想うのも一瞬で、直ぐに現実的な快楽に身を震わせてしまう。
「そう言えばオバサン、1度神田先生の前で縛られた事あったよね」
「あぁんっ」
「おっ、また締まったわ」
そう笑う情人の声を肩越しに聞いて、早苗は眉を寄せる。はるか昔に夫からも求められた性癖。虚ろな意識の中で、渦巻く記憶は結局は現実の悦楽に向かって後押しした。
「も、もう逝かせて…い、逝かせてくださいっ」
若き支配者に媚びうる声を掛けて、早苗は自ら最後に誘いを求めた。そして、全てを忘れたいと願った。
「ふ~ん、逝きたいんだ。じゃあ又、宣言して貰おうかな」
あくまでも冷たく返す声に、痙攣する身体は小刻み震えて肯定の意思を示した。
「ほら、しっかり声にだして言いなよ」
「あぁッ言います。言いますッ。アタシ、アタシは上野さんの物になりますッ」
その声と同時に、支配者の両手が臀部の横に滑り降りた。そして、グイッとそれまで以上の突き上げが加わった。
「なりますって、もう俺の物じゃん。ほら、もっと気の利いた言い方してみてよ、おらおらおら!」
「あぁ――いゃあんッ」
「ほら!」
「んあっ、ア、アタシは上野さんのオモチャです。何でもします!」
「それっもう一丁」
「うおおっ、あー!オマンコ、オマンコ使って下さい!いつでも使って下さい!」
「それ!」
「いい――!ソコいい――!もっと、もっと下さい。奴隷です。奴隷になりますから!んあぁッ―」
最後の叫びを上げて、身体はつんのめるように倒れ込んだ。同時に膣の中からズボッと上野の物が跳ね上がって、生臭い飛沫が飛び散った。
それから…長い時間眠っていた…気がした。が、意識が目の前で服を着ている若者を認識した時、頭の中の霧が少しずつ薄れていった。
「あら~寝たと思ってたのに」
その上野の声に早苗は、のそりと身体を起こした。机の端に手をかけて顔を上げれば、パソコンの時刻が目に付いた。
「あぁ…」溜め息とも取れる息を吐いて、記憶を探れば“アレ“から僅かな時間しか経っていない。
「俺もまだレポートやってなかったんよ。それに息子君も帰って来るだろうし、もう失敬するからさ」
「あぁ…はい」
従順な返事が自然と口について、早苗の目はまだトロ~ンとしたままで、上野を見つめている。
「じゃあそう言う事で。パソコン…おもしろいよ。ゆっくり見てみて」
子供っぽい笑みを顔に浮かべ、上野が出ていく。情事の後の恥じらいなど感じる余裕もなく、早苗は裸のまま”男”後ろの姿を見送った。
玄関の閉まる音を聞くと、裸の肢体は膝まずいた。それから少しの間、何も考えずぼおっとした。そして、軽く視線を上げて、もう一度パソコンの時間を見た。
優作が帰ってくるは…そう思い出して、のっそりと腰を上げた。節々で感じる筋肉のこの疲れは何なのか…。立ち上がって早苗は、己の身体を労(いたわ)るように包み込んだ。両手で身体を擦れば、乳房の膨らみを意識した…まさか一回り大きくなったのかと…。膨らみの先の突起は、まだ尖り立っている。
「はぁッ」と息を吐いて、掌を腰から臀部に回した。尻の割れ目を触ると、確かなヌメリが残っている。再び「あぁ…」と声を上げて、恥じらいを感じた。
シャワーを…そんな意識もあった筈だが、頭は伏し目がちに下を向く。はっきりと分かる陰毛の尖りを前から押さえると、キュンとそれだけで痺れが甦った。そのまま、パソコンを見つめた。マウスを動かすと一瞬にして、先程の画面が現れた。
ブルルっと身体は震えをおこし、早苗は裸のまま画面を覗き込んだ。
卑猥な画像、彼女達が見せるあられもない姿に魅いられ、早苗はマウスを動かし続けた。
夫との微かな遠い記憶を思い浮かべながら、この女達を息子――優作が覗いていたのだと思うと、身体の中に得体の知れない熱さが沸いてきた。
早苗は不意に椅子をひくと、裸の尻をそこに落とした。一瞬、ヒヤリとした物を尻で感じて、直ぐに立ち上がって見た。この“液体“の痕は…と考えて、それは直ぐに分かった。たしか昨日もこの部屋のどこかに、ソレは零れ落ちていたのかと…上野のアソコから…あるいは自分のアソコから…。早苗はそんな昨日と先程のその場面を思い返し、指でその液をなぞるように掬(すく)ってみた。その付着した液体を暫く見つめ、徐にお腹辺りに置くと擦り付けた。掌はそのまま下に向かい、恥毛を掻き分けた。
いつしか、パソコンの画面では動画が始まっている。
動画の中ではやはり、自分と同じような肉厚の熟年女性が臀を上げている。
うつ伏せの態勢から突き出たデカ尻の割れ目は、パックリ開いている。早苗はググッと顔を寄せ、抉るように凝視した。
アヌス…アナル…アヌス…アナル…。昔の夫婦の寝室が甦る。夫の縄に自由を奪われ、服従の格好を強いられた。その時の不浄の穴をガン見された記憶。それが熱さとなって、腹の中から沸き上がってきた。
臀がモゾモゾ何かを求めるように、蠢き出してくる。早苗は立っているのが辛く感じ、もう一度椅子深く、尻を落として行った。そこで、恥じ入る自分の姿など気に止めるでもなく、左右の両股を膝裏から持ち上げるようにおっ広げた。
見事なMの字に開いた姿のままで、腿の震えを覚えながら、早苗は嘆きの呻きを発した。そして、下半身の疼きを感じて、股間の“その“部分に指を当てた。
開かれたその中心には、鋭敏になった尖りがある。年季の入った熟女の指は、迷う事なくソレを擦り上げた。
「ひいーーッ」紅い口唇から叫びが上がった。その後は、ただ夢中になった。溢れ出る潤滑の液が、指を1本から2本へと導いた。ズボズボ、クチュクチュ、目前の卑猥な動画に負けないように、早苗の指は遠慮のない濁音を響き出した。縛られ、自由を奪われ、肉が痛みを求めるように、早苗は己の柔肉を揉みしだいた。そしてまた、大切な穴を指で掻き回し続けた。
平日の夕刻。
家庭の主婦なら買い物に出掛けてもおかしくない時間。早苗は夢中になって自淫の構図を披露している…。
息子の部屋で…。
その夜――。
優作の部屋。
「ん….なんか、変な匂い?」
一人ごちて、優作はクンクンと犬を真似て鼻を鳴らしてみた。
この匂いは…。
何か動物的な勘が働いたのか、優作の目は机の横にあるゴミ箱を見つめた。
そこに見えるのは、ティッシュの山。何故か緊張を覚え、1番上から丸まった物を持ち上げた。そして、慎重に鼻を近づけた。そして又、思考を走らせた。
夕べの夜の行動…。
寝る前にした事は何だったか…。
暫くの間、優作はそのまま固まっていた…。