小説本文




 目の前に立っていたのは、早苗の元上司の神田幸春だった。


 「ああ….じゃあ、やっぱり…」
 「ああ、そうじゃ。私も昨日、アンケートに貴女の名前を見た時は、まさかと驚いたわ。しかし、昨日の事は夢でも何でもない。貴女は真知子君達が快楽を貪(むさぼ)る姿を、私と一緒に見おったよ」
 「!・・・・・」
 「ふふ、真知子君達には魔法のクスリを与えておってな。アレを飲むと誰でも天国に行ける。私は女性が気持ち良くなる姿を見るのが大好きでな」
 「・・・・・」
 「貴女はなぜ、私があんな集まりを開いているか信じられないだろうが、私にも色々と考えがあってな。…ところで早苗先生、貴女も彼女達と同じように快楽に溺れたくて来たんだろ」
 「いえ!、私は….真知子さんの事が心配で….それを先生が説明をすると仰って…」
 「ふふ、そうだったかな」
 そう言って神田は嬉しそうに笑った。
 「・・・・・・・・」
 「では、行こうか」
 神田は早苗の目を見てニヤリと笑うと、鍵を取り出してドアを開けた。
 「入りなさい」
 早苗の足は強ばりながらも踏み出した。昨日と同じように奥の扉が開かれ、内廊下を進み、入った部屋はカーテンが引かれたままだった。照明はそのままで、薄明かるい空間は怪しい香りが充満している。


 神田に促されて腰を下ろせば、テーブルにグラスが運ばれて来た。
 「あいにくこんなん粗茶しかない。おっと、これには“何も”入っておらん。安心して飲むがよい」
 真顔で告げる神田の顔を見ながら、早苗はソッと息を吐いた。そして、無意識にグラスを持ち上げた。
 一口飲んで、それをそっと置いて。
 「昨日の二人いた“初めて”の女性…彼女達の飲み物にはやはり薬が入れてあったわけですね」
 「ああ、そうじゃよ。それが彼女達の奥底の願望を解放したわけだ」
 「・・・・・・」
 「ふふふ…」
 神田がニヤリと笑うと、胸の奥がキュンと鳴った。
 神田は早苗の表情を確かめるように、覗き込んでくる。
 「私の彼女が趣味の延長でフラワーアレンジメントの教室を始めおってな。暫くすると仲の良くなった生徒…と言っても殆どが暇を持て余してる主婦連中なんだが、そんな彼女達から相談を受けるようになって」
 話を聞きながら早苗は、神田の話し方が昔と変わらないと思った。
 「そのうち、夫婦生活の不満まで口にするようになりおって。そんな話を私に聞かせるものだから、自分の趣味と実益を兼ねて欲求不満の女性の為に一肌ぬごうと思ったわけだよ」
 「で、では真知子さんは…」
 「ふふ、真知子君…君の元同僚の大塚君の奥さんじゃよな。あそこも夫婦ともども、夜の方は満足出来てなかったようだな」神田が意味深に笑って続ける。
 「それでな、ある“花”の栽培を始めてな。それに色々とブレンドを施して、上手い具合に脳に刺激を与える良い作品が出来上がったわけじゃ」
 淡々と繰り出される言葉を聞きながら、早苗は身体の中が熱くなって来るのがわかった。
 「さて、もうそろそろ良い頃かな」そう呟いて神田は時計を見た。そしてそのままスマホを開き操作し出した。早苗は神田の仕草に何かを言おうとしたが、それを抑えるように身体の中からムクムクした高鳴りが沸き出していた。


 「もうそろそろ、よいぞ」神田が繋がった相手に一言告げて、電話を切るとまたニヤリと笑った。
 神田の笑いに、なぜだか股間の辺りまでもがムズムズし始めた。


 カチャリと音が鳴って、振り返ると、その瞬間、鼻の奥にツンとする匂いが広がった。そして、瞬きに合わせるように光が線になって流れていった。
 「綺麗…」思わず呟いた早苗の視線の先から2人の若い男達--息子と同じような--が現れた。
 「早苗先生、昨日の若者だ」
 「・・・・・・・」
 「この子達はまだ大学生だ。授業がない時にたまに来ておる」
 入って来た若者達の顔を見たとき、早苗の中にこの若者と真知子達の戯れる姿が甦ってきた。あれはやっぱり現実の出来事だったのだ…….。


 神田が隣に立つ一人の若者に目をやって。
 「この子は若いが、縄の扱いがなかなかだ。今日は縄の味も試してみるかな」
 そう言って向き直った神田の口元が歪んでいる。早苗の股間の奥からは、尿意のようなものが沸き上がってきた。
 「では、始めよう」


 早苗は自分がひどく自由な気分になった気がしてきた。股間の奥から広がったモヤモヤは鎮まる気配が全くない。
 若者の一人が近づき、早苗の胸のボタンに手をやった。朱い口からは「ああっ」と、切ない声が上がった。


 「それにしても、あっさりとお茶を飲みましたね」
 もう一人の若者が、囁くように言いながら隣の神田の様子を窺った。
 「いや、この女は薄々感づいていただろう…昨日と同じ飲み物だと。だが、それが分かっていても、奥底に眠る願望が、それを拒めんかったのだよ。なあ早苗先生」
 神田が嬉しそうに見下ろしている。


 「神田先生“神華の雫”(シンカノシズク)にはこんなに強い催淫剤が含まれてるんですか」
 「うむ、催淫剤もそうだが幻覚剤も入っておるし、それに本来、人間が持ってる動物性を覚醒させる成分も入っておるのだよ」
 神田と若い男の口から出てくる言葉は暗示のように、そして早苗に“薬”という言い訳を与えて優しく染み渡っていった。


 若者の舌が早苗の口奥を襲っていた。手は胸の谷間に吸い込まれている。しかし早苗には、抗(あらが)いの気配は現れなかった。羞恥心と入れ替わるように蕩味(トロミ)を漂う気持ち良さがやってきたのだ。
 「ああんっ」
 思わず上がった声は、鼻に掛かった甘味の交じったものだった。若者の指は細かったが、早苗の乳房は強烈な快感に膨れ上がった。
 視線が重なり見つめ合う。声を立てない若者に、早苗は弱々しい視線を返す。細い手指は、的確に早苗の急所を捉えていた。


 神田の細い目は一層狭まり、嬉しそうに二つの肢体を見つ続けている。
 「早苗先生、分かってるのかな、貴女は飢えておったのだよ」
 神田は早苗からの返事を期待するでもなく、淡々と話し掛けて来る。
 「貴女はもう若くない。ただのおばさんなのだ。毎日、掃除、洗濯、買物、それに子供の世話。大した趣味も無く、暇を持て余している事がストレスになっておる。そうだろう」
 「アアアッ……」
 「フフ、遠慮はいらんのだよ。そう、その若いエネルギーを受け止めるがよいわ」


 (何で…何で…こんな事って……)


 (ああ…もうダメ…)


 若者が早苗の胸から手を離した。その瞬間、身体が浮かび上がるような高鳴りが増してきた。意識はそこから勢いをつけて飛び上がる…と感じるほど高揚した。早苗は何かに急かされるように自ら服を脱ぎ始めた。素っ裸になっても、恥ずかしいという感覚がない。それどころか、草原の中を産まれたままの姿で駆け回るような清々しさを感じていた。
 若者が近づくと、「ああっ」と、切ない声を上げながら、目の前の口唇にむしゃぶりついた。


 若い男は意地悪く早苗の唇を一瞬のうちに振り払うと、押さえつけるように手足を床に付けさせた。そして、頭をドアの方に向かせて、女体を四つ足に導いた。若者は巨尻の後ろにしゃがみ、そして神田達を振り返った。両手はしっかり尻肉を掴み、ニヤリと歪んだ口元は若さなど微塵もなく、観覧者へのサービスのつもりなのか、勿体ぶるように一呼吸置いてから、ヌバッと割れ目を押し開いた。
 「んはッ!」上がった早苗の吐息は生臭かった。それでも確かに甘酸っぱい香りを含んでいる。


 「どうだ?濡れておるかな」
 あえて羞恥を与えようとした神田の言葉も、特に期待を意識したものではなかった。若者は間違いなく濡れているであろう密壺に、口唇を押し当てた。口唇は間髪入れず、硬くなった突起と膣穴を唾液まみれにする。
 「アッ、イイッ!」
 背筋を反らせ、早苗は顎を突き上げなから呻いた。
 「さぁ、尻の穴も舐めてもらえ、たっぷりと」
 羞恥を煽る神田の指示に、若者の口元からはビチャビチャと濁音が聞こえ始めた。早苗の額は床を擦りながら、臀部は若者に食い付かせるようにせり上がった。


 「ああ、いやっ….イイ」
 「・・・・・・・」
 「もう、我慢が……」
 小さな呟きは徐々に大きくなっていった。そして。
 「ああっ、もっと!」
 吐き出た懇願にも、相手をしている若者は冷たく唇を歪めただけで、キュッと後ろを振り返り、神田の意向を確かめた。


 「早苗先生、ぺニスはまだお預けだ」
 あくまでも落ち着いた声で、それでも冷たく神田は言い放った。隣に立つもう一人の若い男の手には、いつの間にか荒縄が握られている。


 「おばさん、俺の太いのはまだ後でだってよ」
 若者が早苗にだけ聞こえる声で囁いた。
 スッと離れた若者と入れ替わるように、縄を持った男が早苗に近づいた。
 見上げる早苗は、酔ったような表情(かお)をしている。


 「んふふ、いい絵だ。既に縄酔い寸前の顔だな」
 縄を握る若者の股間から、神田の嬉しそうな顔が覗いている。
 若者はしゃがむと、素早く早苗の腕を絞り上げた。
 もう片方の腕を背中に回し、両手首にも縄を巻き付ければ、その強度に豊満な胸がキュッと弾けた。
 縄は手首から上腕部に周り、また手首へと幾重にも回ってきて。
 「つッ!」と、局部で刺激が起こるのだが、それは次への序章にすぎなかった。自由を奪われた早苗は、尻這いで立て膝の姿勢へと導かれていく。
 若者はもう一本の縄を握り、その縄は早苗の太ももの膝寄りを2回ほど周され“後ろ手縛り”で固定された腕と胸に引っかけるように回された。引っかけられた縄は足に戻され、戻された縄は腿を縛り上げた。
 最後の一本、それが二重になって首を回してから胸からへそを通り、股ぐらから尻を通され、背中の上で括られた。股関に当たる縄は、性器を愛撫しやすいようにおっぴろげられた状態で固定されている。


 神田と若者は、縄が淡々と縛りあげていく様子を黙って見つめていた。その手際の良さは一種の芸術であった。
 「うむ、ますます上達しておるな」
 神田の嬉しそうな声に、若者が嬉しそうに頷いた。


 早苗の白い身体は朱(あか)く染まり、次の展開を心待ちしている、と誰もが推測した。と、男がしゃがみ、早苗の蜜壺に指をやった。
 「んはぁッ」っと鳴きが上がると、指の出し入れが始まり、早苗が尻をモジらせながら懇願の声を上げ始めた。


 「あぁッ、いやッ、もっと!」
 「ククク、さぁもっと喚きなさい、早苗先生」
 「んあぁぁ…」
 「もっと大きく!」
 「欲しい!本物下さいッ」
 早苗の声に神田がソファーから立ち上がり、そして、隣に顎をしゃくって。
 「さぁ、もう一度君の番だ」


 いつの間にか、若者の股間はハチ切れそうな硬度をやどしていた。そして、再び早苗に近づいた………。