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第4話
5月の終わりの金曜日、仕事が早く終わり、7時過ぎの電車に乗り、デッキから妻の携帯に電話をかけていた。
いつものように駅までの迎えを頼もうと思って電話したのだが、何度かけても電源が切れている。
駅に着き、電車を降りてまたかけなおしても切れたままなので家の電話にかけてみた。
充電が切れているのか。
電話もずっと同じものを使い続けているからな。
消費も早いんだろう。
そんなことを考えながらコール音を聞いていたら、娘が出た。
「お母さんは?」
「友達とお茶しにいくって言ってまだ帰ってきてないよ」
そうか、いつもより早いからな。タクシーで帰るしかないか。
そしてタクシーに乗って家へ向っていた。
そういえばこの間も学生時代の友人と飲みに行くと言って出かけてたな。
思えば妻は家事と仕事だけの生活だ。
息抜きを出来るようになってきたのはいいことだ。
家に帰り着くと真菜が夕食の支度をしていた。
さっき妻から電話があって夕食を真菜に任せたらしい。
なんでも会社の新しく入ったパートの人と仲がよくなりカラオケに行くとのこと。
まあ、今日くらいはいいか。寂しさは感じるが妻が楽しんでることを肯定的に捉えてていた。
その日の夜はいつもとは違う感覚だった。
北九州からここに帰ってくるといつも妻が夕飯を出してくれて、それを食べて風呂に入ってリビングでくつろぐ。
しかし今はまだ妻が帰っていない。
リビングがなんだか閑散とした感じがした。
といってもまだ9時過ぎだ。
カラオケからお酒飲みにいくことも考えられる。
でも連絡くらいよこせよ。
そう思っていたら玄関の鍵を開ける音がした。
妻が帰ってきた。
「ごめんね、出かけてた。」
電話くらいしろよ、心配するだろ。と思ったが妻の前でそんなに素直になれる自分ではない。
「どこ行ってたの?」
典子は答える。
「お茶してカラオケいってくるだけのつもりだったんだけどご飯もたべてきちゃった。会社に新しくパートで来た人と仲良くなって話がはずんでさ。」
典子はそう言って2階の部屋へ着替えに行った。
妻の典子が一人で出かけるなんて今まであまりなかった。
妻に対する今の自分の感情は、一人ぽつんと置いていかれた感じがした子供のような、拗ねた感情かとも思ったがそうではなかった。
いつもと違う夜に慣れていないだけだろう。
結婚してすぐ子供が産まれて、ずっと子育てに追われてきた部分もある。
お茶してたくさんお話をしたい年頃なんだろう。
確かに近所の主婦連中はいつも集まって何時間もくだらない話をしているらしい。
芸能人がどうだとかあの人がどうだとか、男にとってはさほど興味のない事柄をずっとしゃべり続けるのだろう。
妻もそうなってしまうのか。それは嫌だ。
そんな典型的なおばさんにはなってほしくない。
しかしどうしても言っておきたいことがある。
タクシーで帰る羽目になったことだ。
典子が部屋着に着替えて降りてきた。
「なんで出かけてるんだよ!出かけるなら連絡しとけよ。今日はタクシーで帰ってきたぞ。」
とりあえず不満をぶちまけておく。
なぜか帰ってきて平然としている妻を見るとイライラしてきた。
出かけていることに対しては特になんとも思わないが、わるびれた様子で帰ってくると思っていただけにそう思ったのだ。
「ごめん、携帯の電源切れちゃってたみたい。」
反省の色を感じられずに少しムッときたが、何もなかったかのようにそのままテレビを見続けた。
いつもこんな感じだ。
素直になれない頑固な自分。
結婚してずっと一緒に生活して完全に家族の関係じゃどこもこんなものなのではないか。
妻はもともと性格が素直な方だった。
その分夫の俺にも素直に接してくれる。
別にこれで喧嘩とかお互いいがみ合ったりはしない。
いつもこんな感じで俺がいうことを典子はいつも敢えて言い返さずにいる。
ある意味それに救われているのかもしれない。
次の日からはケロッと今までの2人の関係に戻っていた。
普段の仲のいい夫婦。
子供たちに買い物に行こうと誘っても、もうついてくることもあまりない。
自分達の生活スタイルを作り上げている。そういう年頃だ。
子供たちが2人とも最高学年ということもあり、進路についての話が主な最近だった。
学費を今のうちから貯めておかなくてはならない。
共働きだが子供たちには思うような進路に進ませてあげたい。
それが今の2人の考えることだった。
2人で買い物をして冗談を言い合い、普通の夫婦の普通の生活。
新しい刺激などは何もないが、何も感じない今の生活を幸せというのだろう。
週の半分を家にいない生活になって、家族のありがたみや大切さを再確認した面もあった。
何もない部屋に弁当を買って帰り、ただいまを言う相手もいない。
テレビを見てネットをするくらいしか暇つぶしもない。
仕事が忙しい日々が続いたこともありそこまで退屈はしなかったが。
いつものように駅までの迎えを頼もうと思って電話したのだが、何度かけても電源が切れている。
駅に着き、電車を降りてまたかけなおしても切れたままなので家の電話にかけてみた。
充電が切れているのか。
電話もずっと同じものを使い続けているからな。
消費も早いんだろう。
そんなことを考えながらコール音を聞いていたら、娘が出た。
「お母さんは?」
「友達とお茶しにいくって言ってまだ帰ってきてないよ」
そうか、いつもより早いからな。タクシーで帰るしかないか。
そしてタクシーに乗って家へ向っていた。
そういえばこの間も学生時代の友人と飲みに行くと言って出かけてたな。
思えば妻は家事と仕事だけの生活だ。
息抜きを出来るようになってきたのはいいことだ。
家に帰り着くと真菜が夕食の支度をしていた。
さっき妻から電話があって夕食を真菜に任せたらしい。
なんでも会社の新しく入ったパートの人と仲がよくなりカラオケに行くとのこと。
まあ、今日くらいはいいか。寂しさは感じるが妻が楽しんでることを肯定的に捉えてていた。
その日の夜はいつもとは違う感覚だった。
北九州からここに帰ってくるといつも妻が夕飯を出してくれて、それを食べて風呂に入ってリビングでくつろぐ。
しかし今はまだ妻が帰っていない。
リビングがなんだか閑散とした感じがした。
といってもまだ9時過ぎだ。
カラオケからお酒飲みにいくことも考えられる。
でも連絡くらいよこせよ。
そう思っていたら玄関の鍵を開ける音がした。
妻が帰ってきた。
「ごめんね、出かけてた。」
電話くらいしろよ、心配するだろ。と思ったが妻の前でそんなに素直になれる自分ではない。
「どこ行ってたの?」
典子は答える。
「お茶してカラオケいってくるだけのつもりだったんだけどご飯もたべてきちゃった。会社に新しくパートで来た人と仲良くなって話がはずんでさ。」
典子はそう言って2階の部屋へ着替えに行った。
妻の典子が一人で出かけるなんて今まであまりなかった。
妻に対する今の自分の感情は、一人ぽつんと置いていかれた感じがした子供のような、拗ねた感情かとも思ったがそうではなかった。
いつもと違う夜に慣れていないだけだろう。
結婚してすぐ子供が産まれて、ずっと子育てに追われてきた部分もある。
お茶してたくさんお話をしたい年頃なんだろう。
確かに近所の主婦連中はいつも集まって何時間もくだらない話をしているらしい。
芸能人がどうだとかあの人がどうだとか、男にとってはさほど興味のない事柄をずっとしゃべり続けるのだろう。
妻もそうなってしまうのか。それは嫌だ。
そんな典型的なおばさんにはなってほしくない。
しかしどうしても言っておきたいことがある。
タクシーで帰る羽目になったことだ。
典子が部屋着に着替えて降りてきた。
「なんで出かけてるんだよ!出かけるなら連絡しとけよ。今日はタクシーで帰ってきたぞ。」
とりあえず不満をぶちまけておく。
なぜか帰ってきて平然としている妻を見るとイライラしてきた。
出かけていることに対しては特になんとも思わないが、わるびれた様子で帰ってくると思っていただけにそう思ったのだ。
「ごめん、携帯の電源切れちゃってたみたい。」
反省の色を感じられずに少しムッときたが、何もなかったかのようにそのままテレビを見続けた。
いつもこんな感じだ。
素直になれない頑固な自分。
結婚してずっと一緒に生活して完全に家族の関係じゃどこもこんなものなのではないか。
妻はもともと性格が素直な方だった。
その分夫の俺にも素直に接してくれる。
別にこれで喧嘩とかお互いいがみ合ったりはしない。
いつもこんな感じで俺がいうことを典子はいつも敢えて言い返さずにいる。
ある意味それに救われているのかもしれない。
次の日からはケロッと今までの2人の関係に戻っていた。
普段の仲のいい夫婦。
子供たちに買い物に行こうと誘っても、もうついてくることもあまりない。
自分達の生活スタイルを作り上げている。そういう年頃だ。
子供たちが2人とも最高学年ということもあり、進路についての話が主な最近だった。
学費を今のうちから貯めておかなくてはならない。
共働きだが子供たちには思うような進路に進ませてあげたい。
それが今の2人の考えることだった。
2人で買い物をして冗談を言い合い、普通の夫婦の普通の生活。
新しい刺激などは何もないが、何も感じない今の生活を幸せというのだろう。
週の半分を家にいない生活になって、家族のありがたみや大切さを再確認した面もあった。
何もない部屋に弁当を買って帰り、ただいまを言う相手もいない。
テレビを見てネットをするくらいしか暇つぶしもない。
仕事が忙しい日々が続いたこともありそこまで退屈はしなかったが。